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安倍陽太の妖怪事件簿  作者: 未羊


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第7話 狐里管子の事件簿(前編)

 陽太の相方である狐里管子は妖狐である。元々は管狐という、細く小さな存在だったのだが、今では普通の狐ほどの大きさを持つ妖怪へと成長していた。

 ある時出会った陽太に、うっかりはまってしまった罠から助けてもらったことで、お礼をするべくパートナーとして付きまとっている。

 その能力というのは管狐の時と同じように、とりついた相手に富をもたらすという能力だが、妖狐となった管子はそれ以外にいろんな能力を持っている。

 そのひとつが狐火で、相手への攻撃や牽制だけではなく、明かり取りや料理にも使えると、管子からすればかなり重宝している能力である。


 そんな管子ではあるが、今は陽太のパートナーとして一緒に安倍相談事務所で働いている。

 普段の姿は紺のセーラー服に黒のストッキング、茶色のローファーという、まぁどこから見ても女子高生にしか見えない姿である。髪の毛もつやつやの黒髪のストレートロングで、背中の真ん中くらいまである。

 その姿はどこからどう見ても生粋の日本人のイメージに当てはまるのではないだろうか。ただ、狐ということが災いして、目はちょっとつり上がっているので、そこだけがマイナスポイントかもしれない。

 さて、今回はそんな管子の仕事っぷりを見てみよう。


 管子の一日は実に規則正しい。

 朝の五時を迎えると、ぱちりと目を覚ます。

 顔を洗って、妖術で服を着替えると、朝ご飯の仕込みを始める。

 元管狐の妖狐ということで、油揚げと味噌は欠かせない。両方が一度に味わえるみそ汁は、管子にとっては必須の料理である。

 ご飯に卵焼き、それに鮭の塩焼きと浅漬けというのが、この事務所における定番の朝ご飯である。


「我が子どもよ、陽太を起こしてきておくれ」


『はーい』


 朝食の支度が終わる頃までに陽太が起きてこなければ、管子は管狐を使って陽太を起こす。

 その間に、管子は管狐用の味噌の塊を用意しておく。これで朝食の準備は完璧である。

 陽太もそろっての朝食が終われば、あとはただただ依頼がやって来るのを待つばかりだ。とにかく依頼が来ないことには暇である。その間、陽太はソファーの上でごろりと転がりながら、競馬新聞に目を通している。

 以前、資金作りのために競馬の大当たりをさせてからというもの、すっかり陽太は競馬にのめり込んでしまっていた。当時のまじめな面影はどこにもない。くたびれたダメ親父そのものである。

 朝食の片づけをした管子は、窓を開けて、布団を干したり、掃除をしたりしている。すっかりやっていることは主婦である。


「暇じゃのう」


「便利屋なんてものは、利用されない方が平和なんだよ。まったく、平日はめぼしいレースがねえなぁ」


「まったく、すっかり競馬にのめり込みおって……。金儲けだけであるのなら、おとなしくわっちの忠告を受け入れればいいというに。この間もそれで一万をパーにしおって。まったく、管狐としての存在を否定されて気分じゃわい」


「悪いな。でもな、やっぱり、こういうのは自分で当ててこそだと思うんだよ」


「分からんでもないがなぁ……。じゃが、苦しい時はわっちを頼れよな」


 掃除をしながら、陽太と愚痴の言い合いである。

 そんな時だった。事務所の呼び鈴が鳴る。


「はーい、今行くぞ」


 管子が反応をするが、同時に陽太がソファーから飛び起きて、一目散に入口へと向かっていく。

 入口に立っていたのは、これまた若い女性。そのせいで、陽太はなぜかまたすごくカッコつけている。


「お嬢さん、ご依頼はなんでしょうか」


「あっと……。ごめんなさい、おじさんは、お呼びじゃないです」


「なんだと?!」


 依頼主の女性が引きながら答えると、陽太はずべっとこけている。せっかくカッコつけたのに、肩透かしを食らってしまったために、ショックを受けているのだ。


「ということは、わっちに用かえ」


「はい。あなたのような若い女性でなければ、この依頼をお頼みできないのです」


 なにやらただならぬ事情があるようだ。管子は陽太と顔を見合わせると、女性にとにかく事務所に上がってもらうことにした。


「では、依頼を聞こう。すまんが、こいつは所長なので同席させてもらうぞ。依頼書などの作成もせねばならんからな」


「わ、分かりました」


 陽太を同席させた状態で、管子は依頼主の女性から事情を聴かせてもらう。

 話によれば、女性が経営する店でいろいろと問題が起きているらしい。その調査をしてもらうために、アルバイトとして入ってもらって内情を探ることにしたようなのだ。

 で、そのアルバイトは女性限定ということで、管子に依頼が舞い込んだというわけだった。


「事情は分かった。まあ、わっちでよければ受けようではないか」


「いや、お前はそのしゃべり方をどうにかしなきゃいかんだろ。一人称はおかしいし、しゃべり方は年寄りだし」


「阿呆、わっちがその程度の対応ができぬと思うてか」


 さすがに陽太の失礼な物言いに、管子は怒っている。


「というわけじゃ、その依頼は引き受けよう。報酬は、バイト代と成功報酬ということでよろしいかな」


「はい、それで大丈夫です。では、よろしくお願いします」


 話はまとまり、当分の間、管子は女性の店で働くことになった。

 はてさて、どのような問題が起きているというのやら。

 この時、管子の髪の毛が微弱ながらも反応を見せているのだが、この時は誰も気が付いていなかった。

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