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安倍陽太の妖怪事件簿  作者: 未羊


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第18話 ライバル出現(後編)

 依頼を受けた陽太たちは、次に行われるというアイドルのイベントに参加することになった。

 陽太は警備員、管子は受付、結女はアイドルたちのお手伝いという形で潜入している。

 こんなことになったのは、問題が起きるのが、必ず事務所のアイドルのイベントの日という条件が分かっていたからだ。それ以外の条件はまったく不明なので、近くで張りついているしかないというわけである。

 まあ、陽太だけはアイドルのイベントを無料で、かつ依頼料をもらって楽しめると鼻の下を伸ばしていた。


 アイドルたちがステージに上がってライブを行っているのだが、この間は特に怪しいことはない。管子の妖センサーにもまったく引っかからない。

 そのままライブが終わってしまったのだが、この後、アイドルたちとの交流イベントが行われる。

 ステージから場所を移して、アイドルとの握手会が行われるとのこと。

 予定通りにロビー部分にアイドルたちが現れ、一人一人スペースを区切って握手会が行われる。

 その時だった。


(これは……っ!)


 出口となる場所に座っていた管子が何かを感じ取った。

 さっきまでは何もなかったというのに、急激に妖の気配が強まっている。管子の髪の毛がふわふわと広がり、相当強い妖の力が立ち込めているようだ。

 管子はやむなく席を外し、事務所側から貸し出してもらったトランシーバーで陽太と結女に連絡を入れる。


「妖が出おった。アイドルたちに接近しておる」


「了解。私が対処するわ」


 管子の忠告に、アイドルのお手伝いということで一番近くにいた結女が反応する。

 結女も妖ということで、その気配には敏感な方だ。管子の連絡を受ける少し前から、同じように気配を感じ取っていた。

 その時、明らかに様子のおかしくなった男性を発見する。


「大好きだーっ! 抱かせてくれーっ!」


「キャーッ!!」


 その男は何を思ったか、アイドルに飛び掛かっている。


「そうはいかないわよ!」


 結女はクモの糸を出現させて、男を投げ縄の要領で捕縛する。

 ところが、男はその程度で止まることはなかった。


「ああ、うざいわね。そんなんじゃ嫌われて当然よ!」


 結女はさらに男をぐるぐる巻きにしてしまう。


「大丈夫か!?」


「ああ、所長。とりあえず捕獲しましたけれど、おとなしくなる気配がないですよ」


「ちっ、困ったもんだな」


 結女からの報告を受けた陽太は、停止の形代を男の額に張りつけたおとなしくさせる。

 これで一件落着と思いきや、さらに悲鳴が聞こえてくる。


「げっ、まだいんのかよ」


「陽太、こやつの正体が分かった。うわばみじゃよ」


「はあ?!」


 悲鳴に驚く陽太だったが、同じく駆けつけてきた管子の言葉でさらに驚かされていた。


「うわばみって、酒飲みの蛇だよな?」


「うむ。まあ、正確には酒を飲まされて退治された蛇のことじゃがな。その時の経緯の関係で、酒が好物となってしまった蛇の妖じゃよ」


「なんでそんな奴が?」


「知らぬ。じゃが、大本を断たねばこの事態はいつまでも終わらん。今この事態を引き起こしておるのは、そやつの分体じゃからな」


「なんだって?!」


 管子の説明を聞いてさらに驚かされる陽太である。

 どうやら管子は大本を突き止めたようで、陽太につれてどこかに走り去ろうとしている。


「ちょっと、二人でどこに行くのよ!」


 暴漢の相手を一人で任されている結女が、二人を見つけて文句を言っている。


「すまんが、そこは結女に任せるぞ。わっちらは原因を倒してくる」


「もうっ! 所長と二人っきりなんて許せない。こいつら全員縛りあげて、私もすぐ行くんだから!」


 陽太と一緒に走っていく管子が伝えると、結女は思いっきりやきもちを焼いて酔っ払いたちに八つ当たりをしていた。


 そうして陽太と管子がやってきたのは、アイドルたちが使っている楽屋だった。


「ここにうわばみの本体がいるのか?」


「うむ。アイドルたちに無差別に起きているところを見ると、おそらくは全員が共通で使ったものに取り憑いておる」


「そんなものあんのかよ」


「それがあるんじゃよなぁ。ほれ、そこにあるポーチから妖気がビンビンと伝わってくるわい」


 管子が部屋に置いてあるポーチを指差し、妖気で少し刺激してやる。


『シャーッ!』


 妖気に反応して、ポーチから小さな蛇が姿を見せた。この蛇こそが、妖『うわばみ』である。

 このポーチの中に入っているのは化粧品。その化粧品にはアルコールが使われているものもあり、そこにうわばみが取り憑いていたのである。

 化粧品を通じ、アイドル、ファンと順番に移っていったうわばみの妖気が原因で、波長の合った人物が酔っ払いと化し、アイドルに襲い掛かっていたというわけだった。


「さぁ、とっとと封じてしまうぞ」


「分かった」


 管子に言われた陽太は、万一逃げられないように九字を切って結界を張り、形代を投げつけてうわばみを封印する。それと同時に、外で暴れていたファンたちは正気を取り戻し、一件落着となった。

 だが、化粧品にうわばみが取り憑いた経緯についてはまったく分からず、無事に解決したのにどことなくすっきりしない陽太たちだった。


 無事に事態を鎮静化した陽太たちは、芸能事務所の人たちから感謝されていた。

 そして、帰途に就く陽太たちだったが、その会場の屋上から陽太たちを見下ろす影があった。


「ふっ、我のしかけた妖を退治しおったか。これは面白いものを見させてもらったぞ」


 その言葉を発した影は、次の瞬間には姿を消していた。

 無事に仕事を終わらせて引き揚げる陽太たち。そんな彼らに迫る影とは一体何者なのだろうか。

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