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安倍陽太の妖怪事件簿  作者: 未羊


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第14話 安倍陽太、危機一髪(中編)

「……なるほどな。最近、奇怪な現象に悩まされ続けているというわけですか」


「はい」


 女性からの依頼内容を聞いた陽太は、本気で心配しているようだ。

 巨乳で美人のお姉さんからの依頼となると、陽太もかなり気合いが入るということらしい。まったく、なんとも下心ありありといった感じである。

 とはいえだ、目の前の人物が困っているとあっては、助けなければならない。陽太は早速現場に向かう気満々だ。

 実際、話を聞いている最中に身震いさせている様子が見えたので、事態は深刻だと受け取ったからだ。


「おい、わっちは置いていくのか?」


 陽太が管子に黙って出て行こうとするので、気が付いた管子が声をかけている。


「悪いな。こういうのに女子高生は出てくる余裕はねえんだよ」


「都合のいい時だけ女子高生扱いするな、このうつけ!」


 台所から顔を出しながら怒る管子だったが、陽太がそのつもりなら一人でやってみるといいと、顔をのぞかせたまま出かけていく姿を見送っていた。


 陽太は依頼人の女性を助手席に乗せて、車で出発する。

 女性から聞き出した住所に向けて、軽快な音楽をかけながら車を運転している。


「そういえば、うちまでは徒歩ですか?」


「はい。公共交通機関を使ってやってきました」


「そりゃまぁ、ご苦労なことですね。かなり遠かったでしょうに」


「はい、それはもう……」


 いろいろと話してくる陽太の言葉に、女性は困ったように笑いながら答えている。


「しかしまぁ、うめき声が聞こえてくるというのは、なかなかいただけませんな。これはなにかしらの霊障がある可能性が高いですよ」


「霊障、ですか?」


「ええ、何かしらの原因で幽霊などが溜まって、その声が聞こえるようになるんですよ。ポルターガイストなんか……」


「や、やめて下さい。こ、怖いじゃないですか……」


 霊障について説明を始める陽太だったが、助手席の女性が本格的に怖がり始めたので、やむなく説明を止めることにした。怖がらせてしまっては仕事に支障が出る可能性があるからだ。

 詳しい説明ができないんじゃ、仕事は厳しい気もするが、女性のためならばと陽太はぐっとこらえていた。


 そうして、目的地である女性の住むマンションへとやってきた。

 ただ、このマンションに到着する直前から、陽太はバチバチと何かの気配を感じ取っていた。


(しくったなぁ。やっぱりカッコつけるよりも、管子を連れてくるべきだったか……)


 陽太は渋い顔をしている。

 何かしら妖と思しき気配を感じ取っているものの、それが何なのか具体的に分からない。こういう時に管子の知識に頼ってきたツケというものが巡ってきているのだ。

 とはいえだ、引き受けた上で自分一人だけで出てきてしまった以上、自分一人で対応せざるを得ない。

 それに、依頼人の女性をあまり待たせるわけにもいかないので、陽太は覚悟を決めて女性の部屋へと向かうことにした。


 マンションはオートロックであるため、女性がロックを解除して、陽太が同行する形で中へと入っていく。その際に、ロック解除の暗証番号を見ないようにするあたり、陽太は紳士なのである。

 マンションの中へと入っていくにしたがって、段々と妖の気配が強くなっていく。なんというか、今までに感じたことのないくらいに身の毛もよだつような寒気を感じる。

 女性の部屋まではエレベーターで上がっていく。どうやら上階に住んでいるらしい。

 目的地が近付くにつれて、妖気が強くなっていく。この強さは、先日の妖狐を軽くしのぐレベルだ。


 ポーン。


 エレベーターが止まり、女性が先にエレベーターから降りる。陽太もその後について降りるものの、ただならぬ妖気が辺り一帯に漂っており、さすがの陽太も冷や汗が止まらない。

 だが、引き受けてしまった以上は、何でも屋としてはやり遂げなければならない。意地とプライドだけで女性の部屋へと向かっていく。


「ここです」


 女性が立ち止まった部屋は、外見上はまったく普通の部屋である。

 陽太は問題の部屋を見せてもらうために、女性に部屋のカギを開けてもらう。

 後について入っていった部屋の中は、長雨が降り続けている状態を考慮したとしても、とんでもなく真っ暗だった。


「ううう……」


「うあぁ……」


 部屋の中には、不気味な声が響き渡っている。これが、女性のいううめき声なのだろう。それにしては、なんとしても生々しすぎる。


「悪いですが、状況を確認したいので明かりを……」


 バターンッ!


「なっ?!」


 突然、玄関の扉が閉まり、陽太は真っ暗な部屋の中に閉じ込められてしまった。一体何が起きたというのだろうか、陽太はまったく把握できないでいる。


「うふっ、うふふふ……」


 その中で、女性の不気味に笑う声が響き渡ってくる。


「どうされたんですか?」


「あはは、こんなに簡単に引っかかってくれるだなんてね。男ってどうしてこうも女に弱いのかしらねぇ」


「てめえ。そうか、この気配の正体は、依頼人であるあんた自身だったってわけか」


「今さら気が付いても遅いのよ。さぁ、おとなしくあなたも私のコレクションに加わるのよ! あはははははっ!」


 真っ暗で何も見えない中、陽太の体に何かが巻き付いていく感触が伝わる。


(これは、糸か!)


 何か細長いものがキラキラと光るのを見て、陽太はそれが何か分かったようである。


「お前、絡新婦(じょろうぐも)か」


「その通り。だけど、その状態で何ができるというのかしらね」


 口は利ける状態ではあるものの、体は糸で縛りつけられてしまい、動けなくなってしまっている。

 陽太はこんな初歩的な手に引っかかってしまったことを悔やんでいる。

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