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灰の巣窟

更新しました。

ファキオのギルド前。死体袋から引きずり出されたガルバの醜い命乞いと、ロイドの不気味な沈黙。その対照的な二人の裏切り者は、駆けつけたギルドの衛兵たちによって、弁明の余地なくそのまま地下牢の奥深くへと引きずられていった。

 受付嬢への引き渡しと最低限の報告。それだけを極短時間で済ませると、ガレンは休む間もなくエイドたちをギルドの裏手へと呼び戻した。

「おい、ポーションを飲んで魔力を少しでも戻しておけ。すぐにあのアジトに戻るぞ」

「えっ……すぐ、ですか?」

 夜通しの強行軍で疲弊しているエイドが目を丸くする。ガレンは凶悪な笑みを浮かべ、盾を叩いた。

「あぁ、あの廃教会もそろそろ火が収まっただろう。だが死体の処理をしてない。そこに魔が溜まり魔物が生まれてくる。それの始末が必要だ。

それに、お宝も眠っているはずだ。昨日の襲撃を見てるとはじめてじゃなさそうだからな」

 ガレンのただならぬ確信、そしてエイド自身が持つ『ミゼリコルファ』を通じて、その提案を肯定していた。

「トト、セリアお前らはどうする。無理に付き合う必要はねぇぞ。ここからは体力的にもしんどいしなぁ。

小僧には拒否権はねぇぞ」

ガレンは二人に豪快に笑いながら話した。

「わかってますよ、お二人はどうされますか」

「私達のパーティーの元メンバーが犯した罪だから最後まで。面倒見るわ。トトもいいわよね」

「俺も、拒否権なしですか。もちろん頑張りますよ。」

「よし、とりあえずラギまで急ぎそこで休憩をしてから向かうぞ。無理に突っ込むと俺たちまでやられるからな」

ガレンは皆に手短に話すと、査定が終わるまで目を閉じていた。


 査定がすぐに4人は身体のギルドに馬を手配させ。朝焼けの街道を再びラギの町はずれへと向かって、猛スピードで馬を走らせた。

ギルドは馬の他に疲労回復と魔力回復のポーションを1人ずつにくれた。


 数時間後。ラギの町に着き飯屋に向かった。

食事をとりながら最後の作戦会議となった。

ガレンがゆっくりと話し始めた。


「おそらく魔物がいたら普通の魔物とは違いやがるはずた。物理でブチ壊すのは俺たちがやるが、根本の怨念を消さねえと無限に湧き出てくる。そこで必要なのが『浄化』だ。俺は聖水を持っているが他のメンバーはどうだ?」

「俺はもってないよー。」とトトは明るく答え

「私も持ってないわよ。エイドは持っているんじゃないかしら」

「はい。効果は分かりませんが一本は持ってます」

「効果がわからねぇとは、どういうことだ。」

「これです。みてください。(自作したとは神官様との約束もあるし言えないな)」

「ほぅ、上物じゃねぇか。これでいけるな。この聖水を全体に噴霧する。小僧は瓶を投げろ、セリアは風魔法だ。思ったより簡単に片付くだろうよ。」

「わかったわ。タイミングだけは間違えないように気をつけましょう。エイド」

「はい。」

食事を終え、ポーションを飲んだ4人は廃教会に向かった。


再び戻ってきた廃教会の跡地は、まだ黒い煙を燻らせて焦げ付いていた。

 しかし、先ほどとは明らかに空気が違う。陽光が照らしているはずの空間が、肌を刺すように異様に冷たく、そして澱んでいる。

「……気持ち悪い気配だね。ボクの肌が拒絶反応を起こしてる」

 トトが短剣を構え、不快そうに目を細める。

 ここは、生前に何人もの人間を殺し、奪ってきた悪党たちが長年巣窟として使っていた場所だ。土地に染み付いた長年の悪意。そこに加えて、先ほどエイドたちの奇襲によって、絶望と怒りのまま一瞬で爆死した手下たちの強烈な「未練」と「怨念」が、現場の魔素を最悪の形で歪ませていた。

 ――ガタ、ゴト……。

 焼け落ちた木組みの隙間、そして消し炭となった死体の山から、不気味な骨の軋む音が響き出す。

 未練と怨嗟に突き動かされた盗賊たちの遺骸が、自らのドス黒い怨念を核にして、肉体を『魔物』として再構成し、『グール』が蠢き始めていた。その濁った眼窩がんかが、侵入者であるエイドたちを呪わしげに捉える。

「チッ、死んでまで往生際が悪い連中だ! 小僧しくじるなよ。」

 ガレンが盾を構えて前衛に飛び出し、トトが影のようにその隙間を縫ってアンデッドの四肢をバラバラに解体していく。だが、斬り伏せられた骨は、歪んだ魔力に引かれてすぐに結合しようと蠢く。


「エイドくん、いくわよ。 合わせて!」

 セリアが鋭く叫び、エイドの周囲の魔素を安定させるべく風の魔法を展開する。

 エイドは一歩後ろへ下がり、剣を鞘に収めると、懐から残りのサナファン(高純度聖水)のボトルを取り出した空中に投げた。

(悪党とはいえ、死してなお醜く彷徨うのなら――適切に処理をするのが、殺した僕の役割だ。聖水だけだと心許ない。ここで魔法を唱える!)

 怨念の結び目を正確に断ち切るためのイメージ。

 エイドは、無詠唱でセリアの魔法に沿わせるように『サナファン』を唱えた。

「――還れ」

 セリアの風魔術に乗って、霧状になった聖水が廃墟全体へと瞬く間に拡散していく。

 エイドの放った淡く、しかし絶対的な浄化の光が、煙立つ廃墟を完全に包み込んだ。

「ギャアアアアアアアッ!?」

 悲鳴とも呪詛ともつかない、盗賊たちの怨念の叫びが空間に響き渡る。聖なる光に焼かれたアンデッドたちは、結合する力を完全に失い、ボロボロと崩れ落ちて今度こそただの灰へと還っていった。

 同時に、現場を支配していた不気味な冷気と澱んだ魔素が、霧散するように消え去っていく。


 しんと静まり返ったアジトの残骸。

 エイドが荒い息を整える中、ガレンは焼け落ちた堂内の奥へと迷いなく歩を進めていた。そして、不自然に焼け残っている、頑丈な石造りの床の一角に目を留める。

「おいトト、ここの瓦礫をどかせ」

「はいはい、お安い御用で」

 トトが手際よく焦げた木材を跳ね除け、ガレンがその下の巨大な岩を怪力で強引に引き剥がす。

 剥き出しになった床板のさらに下に、頑丈な鉄の落とし戸――金属製の**『隠し金庫』**が姿を現した。

「ハッ、やっぱりな……」

 ガレンは口元を凶悪に釣り上げ、金庫の重厚な鍵穴を睨みつけた。

 ガレンの太い指が鉄扉の隙間にかけられ、ギリ……と不穏な音を立て始める。

 裏切り者たちが命がけで秘匿しようとした、盗賊一味のすべての『戦利品』。その隠し扉が、いま死の淵から生還した者たちの手によって、無慈悲にこじ開けられようとしていた。

誤字脱字と因果関係に違和感あれば教えてください。

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