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引き際

更新しました。最近毎日更新できずにすいません。

正面大扉から飛び出してきたガルバとロイドに、容赦のない現実が突きつけられた。

 爆発の衝撃と煙で視界も呼吸も奪われた満身創痍の二人に、ガレンの暴力、そして闇に潜んでいたトトの刃が襲いかかる。

「がはっ……!? お前、ら……生きて、なぜ……っ!」

 ガルバが大剣を振るう隙を、ガレンは見逃さなかった。自慢の盾を恐るべき速度で叩きつけ、ガルバの肉体ごと大剣を強引にへし折るようにして地面へと叩き伏せる。間髪入れず、トトが影のようにロイドの背後に滑り込んだ。手首を返す一瞬の動作で、ロイドの両膝の腱を正確に切り裂き、その場に崩れ落ちさせる。

「小僧、負荷石だ!」

 ガレンの怒号に応じ、エイドは自分のトレーニングのための『負荷石』を渡した。

(これは、ポイントの割り振りが無効化させるから拘束具としても役立つのか。)

 ガレンがガルバの首を大きな足で踏みつけ、トトがロイドの腕を冷徹に捻り上げる。動けない二人の四肢へ、ガレンが出した『負荷石』と渡した『負荷石』がつけられていく。さらにトトがロープで手足を解けないように縛りつける。

「ま、待て! 悪かった、俺が減額された報酬に目が眩んだんだ! 命だけは、ガレン、頼む……!」

 床に這いつくばり、醜く命乞いをするガルバ。

 一方で、同じように完全に無力化されたロイドは、苦痛に顔を歪めながらも、一言の弁明も、命乞いも口にしなかった。ただ、深く被った前髪の隙間から、凍りついたような無言の瞳でエイドたちを見つめている。その底知れない沈黙が、かえって周囲の空気を冷え込ませた。


 激しく燃え盛る教会の前で、トトが煤のついた顔をこちらに向けた。

「……駄目だね。荷台の物資は、さっきの爆発と油で完全に灰になっちゃった。これじゃギルドへの『納品』は不可能だよ」

 セリアが悔しそうに唇を噛む。しかし、エイドは炎を見つめながら、即座に冷徹な判断を下した。

「…ガレンさん、ここに長居するのは危険です。荷物が燃えたということは、私たちは今『空荷からに』です。ガルバたちが奇襲を偽装するために手配した追っ手がまだ近くにいるかもしれないし、夜間の魔物に囲まれたら厄介だ。――徹夜で一気に、ギルドのある街まで戻りましょう」

 戦果に溺れず、最悪の事態を想定して即座に引き際を見極めるエイドの提案。ガレンは凶悪に笑い、エイドの肩を叩いた。

「小僧のくせに、戦場の引き際って奴をよく分かってやがる。おいトト、奴らが乗ってきた馬を奪うぞ。こいつらは死体袋に入れて背に乗せていくぞ。」

セリアはエイドに声をかけた。

「大丈夫?」

「大丈夫じゃないですが、今は考えるのを辞めます。決めたのは自分なので」

エイドは燃えている教会を見つめていた。

「小僧まだ終わってないぞ。ファキオに戻り二人をギルドに渡したら再度ここに戻ってくるぞ」


 夜の帳が最も深くなる時間、4人はラギの町へは入らず、ファキオに向かうべくそのまま来た街道を逆方向に疾走し始めた。

 一睡もせず、夜の魔物の襲撃を警戒しながらの強行軍。

 ガルバたちの馬を強奪し、その後ろに死体袋に入れられた二人が無様に馬の背に乗せられいく。ガルバは負荷石の重圧と移動の苦痛に耐えかね、「殺せ! いっそ殺せ!」と夜の街道に惨めな悲鳴を響かせ続けた。

 だが、ロイドは、どれほど身体が傷つこうとも、やはり最後まで無言を貫いていた。その不気味なほどの執念と沈黙に、エイドは剣の柄を握る手に自然と力が入る。

(この人を、絶対にギルドの法から逃がしてはいけない――)

 初めて自らの手で人間を破滅へと追い詰めた実感を、エイドは冷たい夜風の中で静かに噛み締めていた。


 翌朝。朝靄あさもやが白く立ち込めるギルドの正面入り口。

 早朝の依頼を受けようと集まっていた冒険者たちや、眠気眼の門番たちが、街道の向こうから近づいてくる奇妙な一団に気づき、騒然となった。

 衣服を煤と血で汚し、しかし眼光だけは異常なほど鋭い4人の男女。

 その先頭を行く『不倒の盾』のガレンが、馬の背から死体袋を投げ捨てた。

ズサァ……と朝露の降りた地面に転がされ、トトが死体袋を短剣にて捌くと、全身をロープで縛られ、泥にまみれたガルバ隊長。そして、傷だらけになりながらも冷徹に無言を貫くロイドの姿だった。

「な、なんだあれは……!? ガルバ隊長と、ロイドさん!?」

「ガレン!? 生きていたのか!?迂回路でも崩落があったと聞いていたが」

 ガレンは二人の襟を掴み、ギルドの中にひきづっていく。

 ギルド内は慌てており受付職員たちが、驚愕のあまり声を失して硬直する。

 そのど真ん中に、ガレンはガルバの身体を蹴り転がし、受付カウンターを睨みつけて言い放った。

「よォ。裏切り者の納品だ。――即時査定を頼むわ。査定が終わるまで休ませてもらうぞ。まだ一仕事残しているんでな。小僧、査定が終わり次第すぐに戻るぞ。今のうちにしっかり休め。」


朝焼けの光が、死の淵から這い上がってきた4人の影を、ギルドの床に長く引き延ばしていた。

 

誤字脱字と因果関係に違和感あれば教えてください。

ブックマーク、感想いただけると嬉しいです。

頑張ってもう1話更新します。

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