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第31話:おじさんたちのピクニックと泥の追跡者

【ウラヌス内部・拒絶の森】



「ハァ……ハァ……京極様、やっぱりこの木、さっきも通り過ぎましたよ……!」



「うるさい乙野! 結界など気合いで抜けろ! 真っ直ぐ歩けば着くはずだ!」



「無理ですって! 私の革靴、もう泥まみれで……甲田さんも何か言ってやってくださいよ!」



「いやー、この空間歪曲のアルゴリズム、非常に興味深いですね。GPSもジャイロも狂わせるとは、見事なハニーポットだ」



「役に立たない解説ばかりしやがって! なんなら先を歩けよ」スーツ姿のおじさん3人が、鬱蒼とした森の中をぐるぐると彷徨っていた。完全に迷子である。



——ズブッ。



「……あ?」枯れ葉の下の何か柔らかいものを踏みつけた感触……



「フギュッ!?」



奇妙な鳴き声。京極が足をどけると、——ミサキの土人形(泥ちゃん)が、潰された尻尾を押さえて涙目で震えていた。



「なんだこの泥の塊は!」京極が蹴り飛ばそうと足を上げた、——その時だった。



「ピギィィィヤアアアアアッッ!!!」



「ひぃっ!? も、モンスターだぁぁ!」



「退避! 散開しろ!」パニックに陥った3人は、悲鳴を上げながらバラバラの方向へ駆け出した。





【ダンジョン深部・ログハウスの近く】



「おや、どうやら私一人で抜けちゃったみたいですねぇ。お、あそこに建っているのが件の拠点……」どさくさに紛れて森の奥へと進んだ甲田は、タブレットを片手にニヤニヤと笑っていた。



——グルルルルルゥッ!



その背後に、銀色の巨狼フェンリルが音もなく立ちはだかる。「おっと。こりゃあ番犬付きですか。……勝ち目はないっすね」甲田はあっさりと両手を挙げた。





【東京湾アクアライン連絡道】



「ハァ……ッ、ハァ……ッ!」ポンッ、と空間が弾けるような音と共に、京極と乙野はアスファルトの上に転がり出た。目の前には、見慣れた料金所のゲートと、乗り捨ててきた黒塗りの公用車。



「脱出できた…京極様、助かりましたね」



「ぜぇ、ぜぇ……っ! 乙野、早く車を出せ! 戻るぞ!」二人が車に転がり込み、エンジンをかける。



——と、その時だった!



ズズズズズ……ッ!



背後のウラヌスの光が異様に膨れ上がる。



「な、なんだあれ!?」そこには、ビルほどの高さの『巨人ゴーレム』の姿があった。



「い、怒りで我々忘れとる、出せ! 早く車を出せェェェ!!」



猛スピードで逃げる京極の車、その直後を、泥巨人が地響きを立てながら猛追し始めた。



ドスッ……! ドスッ……!





【木島のアパート】



ボコボコ……ドロドロ……。



カセットコンロの上に置かれた寸胴鍋の中で、紫色の怪しい液体が煮詰まっていた。エプロン姿のバーサーカー(通称:バーさん)が、真剣な顔でお玉をかき混ぜている。



「■■、■■■」



「え、それってこの前、ダンジョンの森から持って帰ってきた『プロテインの素』なの?」(詳しくは第28話を読んでね!)



「■■!」



その背後で、つけっぱなしのテレビから緊迫した声が流れてきた。



『——ニュース速報です! 木更津市のアクアライン連絡道付近に、巨大な泥の未確認生物が出現しました! 現在、上空のヘリから中継が繋がっています!』



「■■?」バーさんはお玉を持ったまま、テレビ画面に振り返った。



「え、なに? どうしたのバーさん。……うわっ、なんだこれ! ヤバいことになってんじゃん!」



『ご覧ください! 体長10メートルを超える泥の怪物が、黒塗りの乗用車を執拗に追いかけています! 車は逃げ惑っていますが、怪物のスピードが——』



「■■■ 、■■ッ!!?」



「え、なに? ()()()()()()? 言われなくても見りゃわかるけど」



画面の中で大暴れする怪獣映画さながらの光景に、二人は完全に釘付けになっていた。



ピロリン♪



「お、ガミさん。もう実況配信始めてるよ。ブレねえなー」



【コメント欄】

:特定班仕事しろ

:あの黒塗り、品川ナンバーの緑字だ

:内閣府の登録車両じゃん

:なんで内閣府の公用車が追われてんの?

:税金で怪獣から逃げるな

:草

:ぬこは逃げてー

王蟲(オーム)、森へお帰り。

:この先はお前の世界じゃないのよ。

:ねえ、いい子だからー



『みてる!? みんな! テレビの中継みてみて! 木更津の人は逃げてー なんなのあの泥のバケモノ、完全にあの黒塗りセダンだけを親の仇みたいに狙ってんじゃん え、内閣府の公用車? なんでそんなお偉いさんがバケモノに追われてんの……?』



【コメント欄】

:怒りで我々忘れとる……

:もう光玉も虫笛も効かない

:自衛隊の出番です

:ガミ、いけ

:ガミ、現場から実況しろ

:過疎から抜けられチャンス キタコレ

:ガミ、男になるの巻



『現場から実況しろだと? はぁ? 無茶言うなよ』



——と、その時だった!



ドッッッッッカーーーン!!!限界まで煮詰まったダンジョン・プロテインが大爆発を起こしたのだった。



=i=  =i=  =i=  =i=  =i=  =i=  =i=




「■■ブ!!?」 


「大丈夫。生きてる」




(第31話 完/第32話へ続く)

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