第28話:ポチの家具組み立てお手伝いと飼い犬に噛まれる元カレ
【ダンジョン:ミサキのログハウス】
「ちわーっす! 木島便利配送です!」
「……で、どうなの? 少しは日本語しゃべれるようになった?」※バーサーカーは語学留学で木島のアパートにホームステイ中だった。(詳細は第16話をみてね!)
「■■■……! ■■、■■■ッ!!」
「全然ダメか……、それよか、これ自分で組み立てるやつじゃん。ねえ木島くん、追加料金払うから手伝ってよ」
「あー、すんません! これからバーさんが、森にプロテインの元を取りに行くとかで、付き合ってやる約束なんすよ。 な、バーさん、■■■……!」
「いや、あんたがバーさんの言葉覚えてどうすんのよ!」
「■■ッ!!」
「え? なに? 急がないとプロテインの元無くなっちゃう? すいません、そういう訳で失礼しますー」
「あ、ちょっと——」あっという間に去っていく男二人。
「……使えないわね。しゃあない、ポチとやるか」
「——配信開始。はい、今日はソファの組み立てやりまーす」
◼️【初見歓迎】独身女子がIKEA的ソファの組み立て頑張るよ!ホントは誰かに手伝って欲しいーー
【コメント欄】
:公序良俗に反します
:通報しました
:税金払え
:公序良俗に反します
:通報しました
:脱税犯
:税金払え
:公序良俗に反します
:通報しました
:税金払え
:公序良俗に反します
:ぬこは逃げてー
:通報しました
:税金払え
:公序良俗に反します
:通報しました
:脱税犯
:税金払え
:公序良俗に反します
:通報しました
:税金払え
「うわ、また荒らし? どんだけ執念深いのよ。……はい、コメント非表示っと」
《コメント表示をオフにしました》
「そういうわけで、今日はコメント拾えないけど、ごめんね。ただ家具を組み立てるだけ、タレ流し放送だよ、でもゆっくりしてってね〜」
「よいしょ……っと。うわ、背もたれ重っ。これ、一人じゃ無理じゃん、ちょっとポチ! そっちの板、足で押さえてて! 動かないように!」
「ワンッ! ガウガウッ!」
「ええー、何? わかんないよ。ズレる、ズレるって! あーもう、ちょっと待って」
ミサキは翻訳アプリ——『Google Translate Pro(魔導プラグイン導入版)』を起動した。
『翻訳中……』
スマホ音声(渋いバリトンボイス):『——痴れ者が。この神を喰らう誇り高きフェンリルを、安家具の文鎮代わりに使うなど言語道断! そのような下働き、我がプライドが許さぬわ!』
「あんた、さっき木島くんが来た時、差し入れ置いてってくれたの、気づかなかったの?」
(ミ ´•ㅅ•`ミ)……ピクッ。ポチの耳が、ありえない角度でピンと立った。
「唐揚げくん、私一人で全部食べ——」
スマホ音声:『主よ、可能な限り、協力しようではないか』
だがしかし、所詮はでかい犬。唐揚げへの執念とは裏腹に、家具の組み立てにおいてポチは全く役に立たなかった。(カチャッ……ガリッ……ポロッ)
グルルルゥ…… (ᐡ⸝⸝o̴̶̷᷄ ·̫ o̴̶̷̥᷅⸝⸝ᐡ)
スマホ音声:『……すまぬ、主よ。我が爪は神の肉を裂くためのもの。そして我が牙は、世界を噛み砕くためにある。……決して、この『六角レンチ』なる華奢な鉄の棒を器用に回すようにはできておらんのだ……』
「いいのよポチ、気にしないで。その気持ちだけで十分だから。……よし、あとは私がやるから座ってて」
「あれ? ネジが一本足りない……。最悪、不良品じゃん。クレーム入れなきゃ……」
「クンクン……ワン!」ポチがソファの裏側に頭を突っ込み、鼻先で器用に銀色のパーツを転がしてきた。o(U・ω・)⊃ワンッ「え? あ、転がってただけか! ポチ、えらい! 天才!」
「ハッハッハッ(尻尾ブンブン)」
◇
【有明・そなエリア東京 執務室】
「フハハハハ! 見ろ猿渡! このBot最高だな! 完全に画面を埋め尽くしてやったぞ! これが国家権力の力だ!」京極はモニターを指差し、歓喜の声を上げていた。
「どうした? お前も笑えよ! あの女、言葉を失ってるぞ!」
「……京極さん。あれは垂れ流し放送——。配信者は作業に夢中なだけですよ。因みにコメント表示、オフにされてますよ」
「……は?」
「配信者の画面には、何一つ表示されてませんよ。全スルーです」
「なっ……表示オフだと!? そんな逃げ道が……!」
「……ところで京極さん。前から言おうと思ってたんですが」猿渡の目が、スッと冷たく細められた。「今のあなたの役職、本部から左遷されて、私と同じ『ヒラの事務官』ですよね?」
「……!」
「なんでタメ口なんですか? ちなみに私、あなたより一回り以上は年上ですよ」
「お、お前……何を……」
「そういう態度が、雉岡を壊したとは思いませんか?」
「…………ッ」京極は言葉を失い、喉をヒクつかせた。反論の言葉は、何も出てこなかった。
「……少し、外の空気を吸ってきます」猿渡はゆっくりと立ち上がり、自席のPCをシャットダウンした。
◇
【東京湾アクアライン連絡道】
吹き抜ける冷たい潮風。視界を覆う、巨大な青白い光のドーム・ウラヌス——その入り口の前に、一人の男が立っていた。男は咥えていた煙草を携帯灰皿でもみ消すと、眩しそうに光の膜を見上げた。
(第28話 完/第29話へ続く)




