71 敵も味方も 親子の愛情
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『神は言われた。殺害せよ」
私達は立ち尽くした。次の立て札はべたなものを想定していた。だって、キスがきたのよ!普通、エロ展開でしょ?なぜバイオレンスになるの!
「殺害……」
やばい。殺される?あ、そうだ。この辺に蜘蛛とか居ないかしら?
ゴツゴツした岩肌は相変わらず、ボンヤリと光っている。目を凝らせば何か見つけられるはず。
「リンダ、探さなくて良いよ。」
ロード君、構えた上に怖いこと言わないで!仲間!仲間でしょ!
「ウォーターカッター!」
わー!やっぱり攻撃してくるのね。こうなったら、僕を殺してとかじゃないのね!愛されてると思って調子に乗ってたわ。逃げなきゃ!!
ブシユ!音がした。振り返ると私の後ろに小さい蛇がいた。あ、あれを狙ってたのね。良かった。
「あれ、開かないな。とどめをさせていないのかな?」
扉を開けようとして失敗したロード君は、蛇に向かって槍を構えた……
ズオン!!巨大な何かがロード君を吹き飛ばす。
「ロード!!」
振り返ればどこからきたのか洞窟の天井まで届くほど鎌首を持ち上げた大蛇がギラギラと目を光らせている。あ、あの蛇の親御さんですか??
で、できれば私達じゃなく、こんなことさせてる悪魔さんの方に文句言ってくれないかしら?あ、ダメ?うん、そうよね。子供を殺されそうになってるんだものね。ロード君は動かない。壁に頭をぶつけたから失神してるんだろう。むむむ。
「う、ウォーターブレス!」
私の手から霧が立ち上る。勝てそうにないから、とりあえず、目眩しよ。この世界の蛇がどのくらい目を使うのかは知らないけど、私が蛇だった時は目をガンガン使っていたわ。
私はロード君のところに駆け寄る。と言っても、のろんいんだけど。着いた。担ぎ上げる。あ、どうしよう。蛇、こっちガン見してる!!
「ウォーターカッター!!」
放ってみるも、鱗に弾かれる。
「う、ウォーターハンマー!!」
ヤケクソで新技を試してみる。水が固まって蛇に襲いかかる。うん、派手な水飛沫だけで、弾かれた。
蛇は私を尻尾で弾き飛ばした。痛い!!ぐわんぐわんと痛む頭と体。痛すぎて涙が出る。
あれ?
私を弾き飛ばして、ロード君を殺そうと口を開けた大蛇に同じくらい大きな生き物が立ち塞がっている。カッと開いた口には牙!魚顔の二足歩行、半魚人?いや、悪魔さんが一回なってたアレ??
半魚人と蛇は睨み合い、威嚇しあった。しばらくの膠着状態の後、半魚人が動いた!蛇にごっつい牙で噛み付いたのだ。蛇も負けじと半魚人に巻きつき締め付ける。
「グググッ」
半魚人が苦しそうな声をあげて牙を抜いた。勝利を確信した蛇が噛みつこうと口を開けた瞬間、半魚人が何かを蛇の口に投げ入れた。蛇は何が起こったのか分からず困惑している。半魚人は意外と美しい声で詠唱を始めた。
「回れ回れ、滅びの時は来た。北に東に南に西に。クリスタルリグレット!」
これ爆発魔法!授業で習ったけど、できる人少なかったなあ。じゃあ、投げ入れたのは術を助ける呪具のクリスタルね。って!爆発する!!
私はあんまり大きくない盾に頑張って身を隠す。ほとんど出てるけど、気にしちゃ負けよ。蛇は頭を吹き飛ばされた。砕けたクリスタルが蛇の肉片と混じってとっても、スプラッタ。ああ、バイオレンスだわ。
半魚人も返り血でドロドロだ。その血を払いつつ、ロード君を抱き起こした。
「ああ、ロード、私の可愛いロード。」
半魚人さん?ロード君と知り合い?可愛いって、まるで親が子供に言うような……あと、今更だけど喋れるのね。
「ああ、貴方はこの子のお仲間ですね。」
「は、はい。あの、もしかしてロード君のお母様ですか?」
半魚人さんは涙を流した。
「この子には言わないで下さい。母親がこんなだと知ったらどんなに傷つくか。この子の父親と一緒にいた頃は私も貴方のように美しい人魚でした。でも、今はこの姿。私はもともと半魚人で、人魚の姿が過渡期だったのです。だんだん増える鱗で、あの人、この子の父親に嫌われたくなくて、逃げ出して。でも、この子は、ほぼ人間でした。だから人間の世界に返したのです。その頃私は、もう美しくはなかったので、あの人はひどく狼狽していました。それでも、ロードを引き取ってくれて感謝しています。」
リザイアさんが絨毯にロード君を乗せてくれたので引っ張って進むことにした。
「ああ、目覚める前に行かなくては、さよならロード。愛してるわ。」
リザイアさんが急にそう言って背を向けた。
「待ってください。リザイア様、ロード君は貴方のことを探しているんです。今でなくても、会ってあげることはできませんか?」
余計なお世話かしらね?でも、ロード君は会いたがっている。
「もしも、ロードがこの姿になったら会いに行きましょう。その時には私と同じ神を崇め、私と同じ感覚を持つでしょうから。」
あー、やっぱり。神って多分クトゥルフね。リザイアさん、深き者ね。
私はリザイアさんに扉の中にロード君ごと押し込まれた。すぐに扉が閉まってしまう。
仕方がない。進みましょう。ロード君もそのうち目を覚ますでしょうし。殺害の後の立て札が怖いけど、次は何させられるの?ああ、立て札だわ。
「神は言われた。食べよ」
怖!!
いや、さっきの事もあるし、手持ちの食糧で。
あ、立て札の下に瓶がある。
ラベルには「私を食べて。」アリス!!これ食べたら大きくなったり小さくなったりするの?
「ロード!ロード君!起きて!!」
相談しようと揺さぶってみるも、ロード君は気持ち良さそうに寝ている。多分リザイア様が回復魔法をかけたのね。回復までしばらく起きないタイプの魔法。
仕方ないわ。これまで蜘蛛も食べたし、やってやろうじゃない。
私は瓶の中身を煽った。うん、ゼリー。なんだかザラザラ感があって、甘味ももう少し欲しいけど、別に不味くはない。うん??
体がぐねぐねする。わ、変わるの!!
ぐーんと体が伸びる。体の様子を見ると、派手な光沢。多分蛇、大蛇だ。
でも、大蛇が何をできるのか確認する暇もなく、また体が蠢いた。そして、体が透けてブヨブヨに。あ、スライムかしら?
たたたーんたたたーんたたたーん
突然、しょぼい効果音が鳴った。
「おめでとうございます。貴方は5つのグルメを堪能し、力を得ました。これからは好きな姿にチェンジできます。やり方は簡単。なになににチェンジ!と叫ぶだけ。」
天から声がする。好きな姿!それは嬉しいわ。さっきの瓶はスライムと蛇の粉が入っていたのね。じゃあ早速。
「水の精にチェンジ!!」
私はすんなり、水の精になった。やったわ!じゃあ次はもちろん。
「人間にチェンジ!」
叫んでみる。変わらない。
「残念〜人間になるには最後の試練があるよ。その試練は次の扉。さあ最奥の扉を開いて。」
天の声、割と親切ね。
ロード君はまだ、起きないなあ。
私は扉を開いた。うん?
今までの石壁ではなく、ちゃんとした部屋だ。ベッドやテーブルが見える。
そして立て札。部屋にマッチしたオシャレなやつだ。心底どうでも良いけど。
「神は言われた。愛し合え」
ここで来るんだ。やっぱり、あるんだ。これ。
「リンダ……」
あ、悪魔さん!どうして此処に!!




