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66 スネイクショック

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「リンダ様が覚えておられるなんて思いもしませんでした。こんな嬉しいことがあるなんて。」


「私もよ。どちらかと言えばジオルの記憶があるのを期待してたんだけど、マデリーンが覚えていてくれたなんて。」


 私とマデリーンは再開?を喜び合った。


「世界は随分変わってしまいましたけど、私達の力関係にはあまり差はありませんわね。アルス様からの助力は期待できますけれど、ベルゼには敵わないとのことですし。」


「そうね。まあ、私はアスタロト姉様の復活に賭けるわ。姉様が復活すれば、ジュブ=ニグラスの力を吸収して互角とはいかなくてもここから逃げるくらいのことはできそうだし。」


「私は副王神が出てきた時がチャンスだと思いますわ。副王神ならベルゼなど、ものの数ではありませんのもの。」


「その時、世界は大丈夫なの?」


「副王神は知性のある神ですから大丈夫だと思いますわ。」


 本当??


 副王神、ヨグ=ソトース。ネットで前に見かけたけど、凄い神様よね。一であり全であるって何?


 私というか姉様はこの神の子供も産んでいるらしい。姉様もやっぱり凄い人よね。そして、ヨグ=ソトースにかかれば悪魔さんは……粉?


 ちょっと可哀想かも。私を好きでいてくれる人の破滅はあんまり望まないのよね。なんというか、私と姉様を閉じ込めたりしないでくれれば、それで良いというか……あ、でも、悪魔だし、いや、それを言うと姉様も悪魔だし、私も悪魔なのかしら?


「まあ、とりあえずは今まで通り過ごすって事よね。」


「残念ですけれど、そうですわね。」


 私たちは再会を祝して、お茶で乾杯した。巻き戻し前の世界を知っている仲間がいるのは思っていた以上に心強い。それに、アルスの助力を得られるなんてかなりの戦力アップ。敵が強すぎて敵わなくても大きいわ。


 私達は作戦会議の後も、キャッキャと女子会を続けた。その日はマッサージの授業があるはずだったんだけど、先生の都合で急遽取りやめになったので長い事盛り上がってから部屋に戻った。


 ベッドで眠っていると、ヒタヒタと足音が聞こえて目が覚めた。なんの音だろうと思っていると、その足音は途中で止まり、ズルズルと言う何か引きずる様な音に変わった。何か燃えている様な匂いがしてきた。火事?


 私がガバッと起き上がると、髪が赤々と燃える蛇女がいた。ルナ?レナかもしれないけど。


「五月蝿いのよ。お前、五月蝿いのよ!」


 寝てただけですが……。


「ル、ルナ姫ですか?」


 あ、言っちゃ不味かったかしら?でも、顔がルナだし。前にこれに近い姿を夢でみてるし。髪は燃えてなかったけど。


「ひひひ。ははは!お前、私が聖女ルナに見えるの?あはははは!!我が君にどこまで聞いてるの?魔界のことも知ってるの?何か約束を貰ってるの?なんで、なんで、小娘が我が君に、レアゼラやクリストファー様に気に入られてるのよ!」 


 蛇に顔だけ美女が怒ると怖い。色々怖い。


「え、えーっと……」


 なぜと言われても。何故なんでしょう?


 答えられないでいると、怒りに燃えた顔から、小馬鹿にしたような顔に変わった。


「はは。なーんだ。なーんにも知らないし、約束もないの?そうよね。それはそうだわ。人間の小娘なんて。ねえ小娘、その体置いていきなよ。みんなに気に入られてるその体。私、欲しい。欲しい!!欲しいの!!」


 体の横に有ったヒレが腕のように伸びて、私は体から引っこ抜かれた。ゆ、幽体離脱!!


「あははは!かーんたんに抜けた。やっぱり、ただの小娘じゃないか。私は優しいから体をあげる。綺麗ですべすべ。小さくて人気者よ。あはははは!!」


 姉様の助力はない。悪魔さんの助けも来ない。マデリーンもジオルも、自分の魔力じゃ敵わない。哀れな私はポーンと投げられた。


 ああ、やっぱり自分の身を守る力くらい欲しいわね。でも、敵が強すぎない?下級悪魔とはいえ悪魔よ?人間は普通、勝てないからね。


 簡単に抜けたのは私と姉様の二つの人格が割と独立してるから?一つなくなっても生存の上で困らないからかしら?あー前から薄々感じてはいたけど、私の存在意義って……


 たんたんたんたたたんたんたんたたたん。


 ちょっと間抜けなBGM。聞いたことがある。気がつくと、私は洞窟の前にいた。どこに投げられたら都からこんな洞窟に来るんだろう。魔力で転送されたのかしら?


 なんだろう。この場所、記憶にあるのよね。えーっと、これはそう、そうそう、ミニゲームだわ。ゲームで死ぬ予定の悪役が蛇とかトカゲに生まれ変わって生きていくサバイバルゲーム。その悪役が死ぬシナリオを、クリアするとできるようになるゲームで、敵を倒したり、落ちているエサや宝石を取りながら最奥を目指すの。リンダの時は最後まで辿り着けば人間の姿になって椅子に座ってたから多分この洞窟の主になったのよ!そういえば椅子に座って何か言ってたわね。思い出せないけど。


 何にしても、ここを抜ければ蛇から人間に戻れる可能性は高い。


 私は自分の体を確かめた。うん。へび。草が随分と背が高いところを見るにつけ、小さい蛇だわ。色は黒、緑、赤、青の派手な4色。宝石の様な光沢があって、なかなか綺麗ね。何か魔術的なものが使えないかも試してみるけど、特に使えないみたい。体は動くわ。スルスル動いて、洞窟以外の方向へ行くとすぐ壁にぶち当たった。三方とも壁に囲まれているのね。登ってみると意外に行けたものの、急にツルツルのところが現れて登りきれない。


 うん。どうせ洞窟には行くつもりだったけど、他に道がないことも確認できたわ。


 私は覚悟を決めて、洞窟に入って行った。日が遮られた洞窟はすぐに薄暗くなったけれど、光苔のようなものがあるのか、地面が発光してるのか視界は奥まである。ジメジメしているけれど、暖かく、蛇の体には割と快適だった。


 しばらく行くと道が枝分かれしている。こういう時は左よね。なんとなくだけど。


 不思議な感覚だわ。何となく空を飛んでる感覚にも似て地面を滑る。


 私は今まで普通の幸せな人生ばかり歩んできた。そして、大体17、8くらいで死んでいた。


 この人生は不思議。17歳になってから9歳に戻って、16歳になって。妊娠して、皇太子妃になって、また婚約者に戻って。ライオンやスライムや狼に襲われて、今は蛇になって。


 そこまで考えて、今更ながらパニクった。どうして皇太子妃から急に蛇なのよ!あの夢魔、蛇とどんな関係があるの!?


「ひゃ!」


 そんなことを考えていたら、唐突に現実が襲ってきた。黒い体。目と足がいっぱい。蜘蛛だ!明らかに私に向かって襲いかかってきてる。私の体よりかなり大きな蜘蛛、ということは餌認定??


 私は急いで壁に開いていた小さい穴に逃げ込んだ。蜘蛛は大きすぎて入れないはず。ああ!足は入るのね!小さな窪みに入り込んだ私を引き摺り出そうと蜘蛛が足を突っ込んで攻撃してくる。嫌よ!蛇になって、蜘蛛に食われるなんて、お断り!


 私は無我夢中で蜘蛛の足に噛み付いた。足はちぎれてそのままお腹の中へ……ぎやー食べてしまった!!


 すると私の体に変化が起こった。体が蠢き、足がたくさん生えてくる。窪みがでかくなった私の体で崩れる。私はどうやら蜘蛛になったようだ。足だけしか見えないけど、相変わらず黒赤緑青の派手な4色の脚が何本も見える。襲ってきた蜘蛛より、一回り大きい。私に足を喰われた蜘蛛は大きさにか、変身にかは分からないけれど、びびって逃げて行った。


 ふう。助かったわ。

 でも、蜘蛛を食べて蜘蛛になるという皇太子妃候補にあるまじき人生を歩んでしまった。気持ち悪いわ。これでも、まだ生きるの私?とシリアスになりかけるも、生存本能がイェースと叫んでいた。


 ……ま、いいか。


 私は気を取り直して奥に進む。私ってアスタロト姉様が悪魔さんに耐えるためにできた人格よね?で、それが放り出されたとしても、アスタロト姉様はそのまま体にいるわけで、悪魔さんの相手が辛ければまた、人格を作れば良いわけで……


 あ、思い出した。リンダがこのミニゲームのゴールで言っていたこと。「これからどうしようかしら。」だわ。


 わー、私、もしかしなくても居なくて誰も困らない?と言うことは悪魔さんも、マデリーンも、ジオルも助けに来ない。というか、探しもしない。と言うことは


「もしかして、自由?」


 私はストーカー悪魔さんから逃れた。姉様のことや子供のことは気がかりだが、私より姉様の方がよっぽど強い気がする。


「まあ、とりあえず人間に戻れたら考えればよいわ。このまま戻っても迷惑なだけよね。戻り方も分からないし。」


 ぐー


 お腹が鳴った。そう言えば随分歩いたし、気持ち悪い蜘蛛の足一本しか食べていない。体も大きくなってるし。とりあえず、足元に水が流れているので飲んでみる。うん。美味しいわ。ついでに、綺麗な花が咲いているのを見つけたので、もぐもぐしてみる。わ、美味しい。お菓子みたい。


 水と花がお腹に入るとまた、体がプルプルし始めた。ブニブニ動く体、かなり変化するようだ。


 おおお!!プルン。


 体が半透明になる。人間の手らしきものが出る。お腹や髪、胸が見える。足は……ない。


 おおい!今までいっぱいあったのに、なんで無くなるの!!人間の足プリーズ!!


 なんだろう?水の精霊的なもの?私の体は流れる川と一体化していて腰あたりまでは透けているけれど、人間ぽく、お尻の半分くらいから水と同化している。水の精霊なら何か術が使えるかしら?


「ええっと。ウォーター!!」


 適当に言ってみると、私の手からシャワーが出た。


「ウォーターカッター!!」


 水が勢いよく飛び岩を少し砕いた。


「おお!」


 あまり強くないけど、使えるわ。食べるとパワーアップするのかしらね?キョロキョロすると、トカゲが見えた。あとはまずそうな苔。却下!!私はそのまま進んだ。


 花か草が良いわ。さっきのすごく美味しかったし。食べられそうな草があったら食べてみましょう。苔はたくさんあるけど、美味しそうじゃないし、あまり草や花はない。キョロキョロと探していると、紫色の綺麗な草を見つけた。やったー!これにしようと口に入れる。


 ぐお!!強烈な味!辛い!苦い!喉が焼けそう!もしかして毒ですか??水水!


 苦しくてのたうちながら水を飲んでいると、小さな魚が口の中に入って飲んでしまった。この魚、毒消にはならないわよね。あ、ダメかも……


「人魚……」


 あれ、誰かいるの?たすけてー

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