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57 マデリーンとその協力者

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 突然時空が歪み、時が遡った。私は小さな子供になっていて、訳がわからなかったけれど、母様は冷静で神が術を使ったのだと教えてくれた。そして、頭の中に入ってきた知識に混乱したが、それも母様が説明してくれた。


 私と母様は記憶を保つことができたけれど、他の人達は記憶を塗り替えられているらしい。私達は時間を戻され、常識の違う世界でやり直す。迷惑な事だけれど、リンダ様を神を名乗る悪魔の手から救い出すチャンスが与えられたとも言えるわ。そう、今度はリンダ様に悪魔の子を孕ませたりしないわ!


 魔女としての力と伯爵令嬢としての権力をしっかり確保して、そして、どうにかしてニャルラトホテプのような神の力が欲しい。私は日々勉強し、お父様に日々の手紙を書いたりと地固めをしよう。母様を説得し、早々に伯爵家に入った方が良いわ。


 と、今後のことを考えていたら、また、時空が歪んだ。

 

 私はベッドの上にいて、体が元の大きさまで成長していた。


 頭の中に知識が入ってくる。私は、ほぼそのままの人生を送っていて、伯爵令嬢となったようだ。仕方がない。これからやれることを考えましょう。


「マデリーンお嬢様、お父様が応接間にお呼びですわ。お客様が来られていて。」


「はい。すぐに参ります。」


 私は手早く身支度を整える。ドレスはパニエのないシンプルなものを選び、アクセサリーも無難なものを付け、客間に行くと見慣れた人がいた。


 私と同じニャルラトホテプの化身の一人、アルス王子だ。


「やあ、マデリーン。お久しぶりです。相変わらず美しいですね。」


「ありがとうございます。」


「おや、娘とお知り合いで?」


「ええ、以前親切にしていただいたのです。二人で話してもよろしいですか?」


「分かりました。マデリーン、こちらはアルス様、王家ゆかりの方だ。失礼のないようにするんだよ。」


 お父様が席を外したので、私はアルス様に質問した。


「アルス様、今はアルス王子は居られないはず、どういうお立場なのですか?」


「はっきりと記憶があるんですね。良かった。今はジオル兄上の双子の弟ですよ。でも、ベルゼ兄上を恐れて隠されている。まあ、ジオル兄上のスペア扱いですね。」


「まあ。」


 ニャルラトホテプを、なかなかの扱いだわ。


「ベルゼ兄上からは適当にしていろ。邪魔するな的な扱いです。酷いと思いませんか?私がお膳立てしてリンダ嬢と結婚できたのに邪魔者呼ばわりですよ。」


「そうですわね。」


「しかも、時空と時間の両方を揺り動かすなんて、何が起こるのかと思ったら……いや、話が長くなる。貴方と取引をしたいのです。」


「取引?」


「ええ。貴方はニャルラトホテプの力が欲しいでしょう?リンダ嬢を守るために。」


「ええ。欲しいですわ。」


「私は身の安全が欲しいんです。」


「身の安全ですか?」


「私は一時リンダ嬢にちょっかいを掛けていましたからね。いや、そんな目をしないで下さい。夢でちょっとだけですよ。でも、私がリンダ嬢に好かれるのは期待薄ですし、今回の時間と空間の揺らぎで我らが副王神ヨグ・ソトースが出てきた場合、嫌な予感がするんですよ。ヨグ・ソトースはリンダ嬢を妻と認識していると思います。浮気は許容範囲でしょうが、リンダ嬢が本意でなかったという話になるとちょっと身の危険を感じるんですよ。で、浮気にするにはどうしたら良いかと考えた場合、貴方と融合してしまえば良いのではないかと思いまして。」


「融合?」


「もともと私達は同じものですから、貴方は力を私はシェルターを手に入れます。まずそうな時は貴方の中に隠れます。必要無くなれば出ますし、貴方の人格が変わる事もありません。あ、力は今からでもある程度お渡しして使えるようにしますし、強い力が必要な時は呼んでもらえれば融合します。悪い話ではないでしょう?」


「そうですわね。」


 確かに魅力的な話に聞こえる。


「そして、近くにいても不自然でないように婚約していただきたいのです。私はこれから、王家の養子扱いで王子になることが決まりました。私と婚約すればリンダ嬢と同じ淑女学園にも通えます。これ、パンフレットです。」


 差し出されたパンフレット、怒りと羞恥といけない期待で、心臓が壊れそう。リンダ様をこんな学校に私無しで通わせるなんて出来ないわ!!


「分かりました。婚約は形だけ。知識などの提供する協力者としてならお受けしますわ。」


「はい、はい、構いません。協力者として誓い合いましょう。」


 アルス様は嬉しそうに笑った。


 これで、私も力が手に入る。そして、アルス様の知識も。淑女学園の入学までにやる事はたくさんあるわ。


 私も笑った。アルス様の笑顔と、きっとそっくりだろうと思った。


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