53 力の戻し方
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視界がゆらゆらする。どうも、銀色のオオカミとの行為は刺激が強すぎたみたい。なんと言っても何もかもがでかいのよ。終わった後、毛皮にくるまって寝るのは気持ちよさそうだけど、体格差がありすぎる相手は体の負担が半端ない。
私は、快楽からも、恐怖からも解放されて、無意識の領域にふらふらと降りていく。
ああ、また、あの球が見える。せっかくだし、何か思い出そう。そう思って手を伸ばしたら、幾つも浮いていた球がカッと光を放ち、かなりの速度で動き始めた。軌跡に長い光を残しながら、あっちこっちを飛び回る。それはやがて、一つにまとまった。そして、輝く人の形をとる。
「あの、何が??」
目の前の人は眩く輝いていたが、少しずつ光は収まり、まだ、微かに光っているものの、姿が見えるようになった。
「ふん。」
その人は自分の腕や足を確認するかのように、動かした後、私を見た。
綺麗な人だ。中性的で男性なのか女性なのか分からない。長い黒髪は腰あたりまである。くっきりとした目鼻立ちと真珠のように輝く白い肌。瞳はいっけん黒だが、よく見ると虹彩は黒いのに中の瞳は紅い。黒い服に黄金の帯、ルビーのイヤリングとネックレスで白い肌を飾っている。
「あ、あの、貴方は??」
私が恐る恐る声をかけると、その人は笑った。
「もう知っているだろう?私はアスタロトだ。つまり、お前だな。」
そうよね。私が記憶を思い出す時、何度か見た人。
「あの、えっと、」
「ああ、なぜ私が現れたのかだな?お前のおかげだ。お前が、あの不届きな男を相手に頑張ってくれたからな。ある程度力が戻った。まあ、まだ、この無意識の領域に出現できる程度ではあるが。」
「私がスライムやオオカミの相手をしたから力が戻ったの?」
「そうだ。良くやった。私では、あの男の相手は精神的に持たない。お前は記憶を消されて、私ほどあの男を嫌悪していないからできたことだろう。これからもよろしく頼む。」
「え、ええ、まあ、逃げられないと思うので、頑張りますが、あの、私は貴方のサブの人格という事なの?」
「いや、お前は今、主人格だ。なんと言っても転生しているからな。私は元の体の人格だろうな。」
「あ、そうなの?」
難しいわね。今は私が主人格だけど、元の体は保管されてて、いずれは戻るらしいから、そうなったらこの人が主人格になるのかな?私は今生が終わったら消えるのかしら??
「私はお前、お前は私。そして、私達はもともと地母神であった大魔王だ。人間に人格が複数あれば精神病だが、私達には当てはまらない。お前が望むなら、今生が終わっても、人格の一つとして残るが良い。もしくは、分かれて別の神格にも成れよう。もともと、私もアナトから別れた神格だ。」
「アナト?」
「大いなる地母神。我が姉とも言えるし、私自身とも言える。」
アスタロトさんは機嫌良く笑う。
「つまり、お前と私は一人であるが、望むなら二人にもなれる。主導権争いをする必要はない。」
ふーん。分かったような、分からないような。とりあえず、敵対はしないってことよね。
「つまり、私達は味方同士ということね。貴方のことはなんと呼べば良いの?」
「好きなように呼べ。私はリンダと呼ぼう。そうだ、姉でどうだ?私達は姉妹のようなものだろう?」
「了解。姉様と呼ぶことにするわ。あああああ!!」
「起こされているな。仕方がない。また、後で話そう。相手は無理せず、スライムにしておけ。体の負担が軽い方が良いぞ。」
ご忠告感謝します。スライムねえ。
「リンダ!良かった。気がついたんだね。」
「あ、ベルゼ様。」
気がつくと、寝室のベッドで、そこにはもちろん悪魔さんがいた。顔は人間、体はまだオオカミ。ああ、化け物がいる。
「ごめんね。サイズが大きすぎた。なんとか今、戻ろうとしてるんだけど。」
ああ、そうか、サイズが合わずに結局、終われなかったのね。
私は意を決して、悪魔さんの首に縋りついた。
「え?リンダ……」
悪魔さんは真っ赤になる。意外と初心なの?
「ベルゼ様、無理をなさらず、スライムになってください。」
ああ、恥ずかしい上に、人間やめてる気がするわ。
でも、力を取り戻すために一番負担がないスライムで稼ぐのが一番よね。もう、恥も外聞も捨てて私スライムが好きですで押してみましょう。
「スライムに?分かった。でも、なかなか体がいうことを聞かないから、応援して欲しいんだ。」
応援?
「ええっと、がんばれーで良いですか?」
オーソドックスに応援したが、悪魔さんは違う!と言うように首を振る。
「いや、スライムになって隅々まで貴方で満たしてくださいませとか……そういう可愛らしいことを。」
ううっ。分かりました。恥も外聞も捨てようと思ったところよ!やってやろうじゃない!!
「ベルゼ様、スライムになって愛してくださいませ。」
「隅々まで。」
涙目?!そこ大事なの??
「あ、はい。スライムになって隅々まで愛してくださいませ。」
ドロ
巨大人面犬が溶けた!!ああ、オオカミのサイズに合わせたのか、スライムが前より大きいんですけど……色も前の綺麗な青じゃなくて、腐ったみたいな緑色……
テケ、リ、テケリリ
鳴いた!!ショ、ショゴス!!いや、確かにショゴスもスライムの一種だろうけど、前の方が可愛かったわ!!あの、ぱっちりおめめはどうしたの?と言いたくなるくらい、今度のは、ひたすらグロイ。
「リンダ。お待たせ。」
ショゴスは私の前でばっと大きく膨らみ、襲いかかる。
「!!」
私はショゴスに包まれた。嫌悪感の後、なんとも言えない感覚が襲う。
「どう??」
「あ、前よりねばねばして、ああ!!」
色やグロさに加えて、ネバネバ度が大分違う。前は、ヌルヌルトロトロと体を滑り落ちる感覚だったのに、今回はネトネトベタベタと体に糸を引いて纏わりつく。自分と相手の境が曖昧になるような感覚。
「前とどっちが好き?」
「や、やん。前の、可愛い、サラサラの方が、好き、あ、ああ!」
ネバネバがあっちこっちを刺激する。やめて、やめて、おかしくなっちゃう。
「本当に?でも、こんなに……いや、じゃあ、頑張るから、後からそっちもしようね。確かに、背中やお尻をトロトロと流れている時も気持ちよさそうだったね。」
「いじわるいわないで……」
口が回らない。子供みたいなたどたどしい声が出る。涙も滲んでくる。
「ご、ごめん。意地悪だった?優しくするから怒らないで。ねえ、私の中でうんと気持ち良くなっておくれ。」
そんな顔しても、絶対、力を取り戻して、やっつけてやるわ!!そう思った瞬間、電撃のような刺激が、足のつま先を襲い、波のように全身に広がる。ピクンピクンと痙攣が襲ってくる。ショゴスは歓喜で震えたような気がする。
うそ、うそです。嘘だから、大人しく貴方の妻をしているから、ああ、や、やだ、もう許して……!!




