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52 本当でも突きつけないで!

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 「リンダ!見てごらん、この国中の高級な宝石商を集めてティアラを持って来させたよ。もちろん、首飾りも指輪も髪飾りも君の好きな物を揃えよう。」

 

 広間、かなり広い広間だったんだけど、更に壁がなくなって、とにかくだだっ広くなってる。そして山のような宝石の数々。


「あ、あの、はい、ありがとうございます。」


「どれが良い?なんなら全部買おうか?」


 国庫傾けるのやめて下さい。そんなに買っても頭は一つしかないのよ。


 とりあえずせっかく来てくれたのだから、全員の前は通りましょう。謁見形式じゃなくて、市場みたいに商品を並べた中に道があるので、私は悪魔さんと一緒にふらふらと全部の店をまわった。高級宝石商はそれほど多くないが、商品はどこも膨大で、移動するだけでも結構な運動量だ。


「これは良いね。君に似合う。」


 私が選ぶよりさきに、悪魔さんはどんどん決めている。ルビーなんかの赤系と真珠が好きらしい。他にもカラーバリエーションといって、色石の物を選んでいる。ダイヤが欲しいんだけどな。でも、こんなにあるのにもう要らないか。


「ああ、私ばかり選んでいるね。可愛い皇太子妃よ、好きな物を選んで。」

 

「え、いえ、もう、こんなに選んでいただきましたし……え、えーっと、じゃあ、これを。もうこれで十分ですわ。」


 私はダイヤのネックレスを選んだ。


「そうかい?あ、じゃあ隣のオパールのセットも。ブラックオパールもよく似合うよ。あ、でも、ウォーターオパールも君のみずみずしさが映えて……」


「あ、あの、このくらいで充分ですから。」


 悪魔さんは、結局オパールセットの後、エメラルドやら、アレキサンドライトやらを購入した。ああ、私、金遣いの荒い王子妃認定されるに違いないわ。


 その後も、オーダージュエリーの打ち合わせを提案されたが、疲れた上にお腹が空いたと主張し、じゃあ、今度ねと折れてもらった。いくら使ったのか怖すぎる。


 というわけで、私は悪魔さんと二人で、ローストビーフをの昼食を食べて、部屋に戻ってきた。レア様との会食はうやむやのまま無くなってしまって、なんとも気まずい。ごめんなさい。ゲームイベント潰しちゃったかも。


「リンダ、本当にごめんね。君にティアラがないなんて言わせてしまって。」


 悪魔さんは寝室に私を連れ込むと、ベッドに並んで腰掛け、私の頭を抱き込む。


「いえ、あの、私こそ、申し訳ございませんでした。ゴタゴタしていたし、ティアラも結婚式で使った分がありましたのに。」


「優しい人だ。」


 悪魔さんの手が、私の腰を撫でている。ゾクゾクする感覚を苦労して受け流す。ああ、悪役令嬢の修行が足りないわ。


「あ、あの、まだ陽は高いですが……」


「君の美しさには敵わない。」


 会話が噛み合わない。私は肩を押されて、仰向けにされてしまう。


 ドロ


 はい。悪魔さん、溶けてますよ!!


 悪魔さんは進めるうちに文字通り溶け始めた。確か、初夜が終われば人型を保てるとか言ってなかったですか?!


 美形が溶けて、スライムまでいかないけど、かなり溶けている。


「ごめん、崩れているね。なんとか人型を保つから。」


「無理なさらないで!!」


「リンダ……どんな私でも良いというのか。ああ、なんて幸せなんだ。」


 そんなことは言ってない!!半溶けで頑張られても怖いだけなのよ!!いっそ、スライムの方が可愛いわ!


「ああ、どうして、この体はこんなに扱いにくいんだ。止めたせいかうまくスライムにもなれない。でも、君が許してくれるなら……」


 何を許した事になったの!?


 悪魔さんはデロデロ人間から少しずつ固まり始めた。そして、最近ネットで見た生物になった。その名はディープワン。ヒレがゆらゆらクトゥルフ神話の深き者!!


「あ、あの、ちょっと魚介系は……」


 知らない人のために言っとくと、深き者はインスマンスって言う街に居るらしい半魚人よ。ネットでちょっと調べただけだから違ってたらごめんね。


「ぎょ、魚介になってる??ごめん。人型に戻ったつもりだったんだけど。」


「あ、あの、無理なさらないで。お辛そうですし、今日は休まれたらどうでしょう?」


 お願いします。制御できるようになってからにして下さい。


「ああ、心配ないよ。君が私の特効薬だからね。」


 笑って言ってるけど、冗談じゃなく、エナジー吸われそう。私、明日は生きてるかしら。


「でも、魚介が苦手ならもう少し頑張るよ。う、うううう」


 悪魔さんは魚顔に青筋を立てて何かを頑張っている。なんて言うか、この人、大悪魔なのよね?自分の姿を保てないなんてかなり恥ずかしい事なんじゃ。なんて思考を飛ばしていたら、ばほっと音がして、悪魔さんから煙が立ち上った。そして、出てきたのは……


「あの、え。」


「魚介では無くなったよ。どうも、獣の方が安定して。今日はこれで妥協して。」


「わ、わわわわ!!」


 私は馬鹿でかいオオカミに飛び掛かられた。


 お母様、お父様、お城って怖いところですね。嫁いで数日で、ライオンに襲われ、スライムに犯され、次はオオカミです。銀色でなかなか可愛いのが救いです。


「リンダ、愛しているよ。」


 耳元で、息の荒いオオカミに愛を囁かれても、怖いだけよ!涎垂れてくる!!

 顔や、耳、目まで舐められて、涎が服にも落ちてきて、ベタベタになっていく。


「ああ、やり難い。服をはがしてからにすれば良かった。」


「え、あ、あの、ぬ、脱ぎます。自分で脱ぎますから!」


 お気に入りのドレスを着てるのよ!というか、今日はお風呂に入って的な流れがなかったわね。だから、リラックスドレスじゃなくて、ほんとにドレスだわ。これを一人で脱ぐの難しい。


「リンダ、はやく!はやく!」


 ああ、待て状態の犬になってしまった。ええっと、この手のドレスどうやって脱げば良かった?というか、既に寝転がってる状態で脱ぐの不可能!


「あ、あの、脱ぐので少し退いていただけれ、い、いやー!!」

 

 待てない!!とばかりに服が食いちぎられる。ああ、お気に入りのドレスが布切れに。胸の辺りが見るも無惨だ。


「ベルゼ様!このドレスお気に入りだったのに!」


「だって、この状態で退けだなんて、我慢できるわけないだろう?さあ、黙っておいで。骨まで愛してあげる。」


 カッと開かれた目と口。大きな牙が威嚇する。これ、逆らったらまずいやつだ。悪魔さんは、ドレスの残骸に噛みつき、更に穴を広げた。


「さあ、その布から出してあげよう。私のクビに捕まって。」


 私は逆らわず、もふもふのクビにしがみついた。まだ口調は優しいが、目がいっている。牙が覗く口からは大量の唾液。これが小娘の首に噛み付けば、瞬く間にあの世行きだろう。新婚の妻に対する性欲の他に食欲があるように見えるのは気のせいだろうか?


「そう。良い子だ。私に従い、私の事を考え、私を愛するのだよ。で、なければ……また、やり直すことになる。」


 舌なめずり。やり直すためとか言って、本当は死体を食べたいだけでは??耳をベロッと舐められる。耳の中に容赦なく唾液が流れ込む。中耳炎になりそう。


「大丈夫。良い子にしていれば何も怖くないよ。さあ、体を開いて。」


「ん!」


 私は震えながら、できるかぎり力を抜いた。オオカミは私の全身を時間をかけて舐め上げた後、もふもふの体をくっつけてきた。


「あ、ああ……」


「ああ、可愛いリンダ。とても、気持ち良さそうだよ。肌が桃色になって、可愛い声で、君はこれも好きだね?」


 お願い。そんな事言わないで。

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