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27 名乗る女

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 最近、眠るとかなりの確率で、記憶の球の空間に行ける。やっぱり、一度あの扉をこじ開けたのが良かったのね。マデリーンとマデリーンのお母様とジオルのお陰だわ。


 とにかく何でも思い出しましょう。私は手近な球をぎゅっと握る。


 そこは草原。風が強い。そこで私は綺麗な人と向き合っている。その人の長い金髪が大きくうねる。まるで大蛇のよう。


「あの、貴方はどなた?」


 濃い金の髪。赤紫の瞳。ハロウィンの仮装が似合いそうなゾクゾクする美人が私に情熱的な視線を注いでいる。


「私は貴方。貴方は私。私の名前はジュブ=ニグラス。」


 おお!


「えーっと、ジュブ=ニグラスさんね。あの?何を言っているの??」


 記憶の中の私には理解不能らしい。


「ねえ、貴方も女神になりましょう。私とまた一つになりましょう。女神ジュブ=ニグラスに。」


 あ、私も理解不能になった。ジュブ=ニグラスになる?一つになる?えーっと悪魔さんが良く一つになりたいって言ってるけど、違う意味よね?融合とかそっち系?もしかして食われる??


「貴方は私、私は貴方。大切な貴方。愛しい貴方。忘れないで。貴方を一番愛しているのは私よ。さあ、思い出して。貴方が夫と呼ぶ男の正体を!!」


「きゃ!!」


 目が覚めた。何?今の記憶?


「リンダ?どうしたの?かわいそうに。怖い夢でも見た?」


 心配そうな悪魔さんがドアップ!!近い!近い!


 あ、そうか、お城に泊まったんだっけ?せっかく怖い夢って言ってるし、夢で押してジュブ=ニグラスのこと聞いてみようかな?


「夢で綺麗な女の人にジュブ=ニグラスになろうと言われたんです。どこかリアルな夢で……ベルゼ様はジュブ=ニグラスという人をご存知ですか?」

 

「そんな夢を……少し緩んだか?」


 悪魔さんは答えず、無表情になって私の額に手を置いた。 強い魔力を感じる。この男はこの力で私を一瞬で殺す事ができる。そうだ、この手に何度も殺された。


「嫌!!」


 私は咄嗟に悪魔さんの手を払い、バルコニーへ逃げ出していた。


 外は月が輝き、とても綺麗。とは言え、ああ、私のバカ。バルコニーに行ってどうするのよ。


「リンダ……」


 すぐに追いかけてきた悪魔さんに抱き込まれる。やだ。怖い。この次に何が起こるの?


「どうしたの?こんなに震えて……私が守ってあげるよ。何が君を怖がらせたの?」


 貴方です!!


「今、私に強い魔法を……」


 凶悪な魔力が額に置かれていた。人間なんて一捻りにする力。


 悪魔さんは、ハッとしたように目を見開き、優しい笑顔を作った。月光に照らされた黒髪の悪魔はゾッとするような美しい笑みを私に向ける。


「そうか。魔力が怖かったんだね。ごめんね。何もしないから、機嫌を直して。」


「で、でも……」


「ああ、そうだジュブ=ニグラスだったね。こちら側の宇宙の豊穣の女神だよ。さあ、中に入ろう。冷えてしまうよ。」


 確かに夜風が少し肌寒い。暖めるようにぎゅっと抱き寄せられてから優しく口付けられる。


「あ……」


 そのまま抱き上げられた。輝く黒曜石のような瞳が私を真っ直ぐに見つめる。


「私の無作法を許して。額に強い魔力を感じれば怖くて当たり前だね。これからは気をつけるよ。」


 私はベッドに戻された。丁寧に布団をかけられ、髪を一房救いあげて唇を当てられる。


「どうか逃げないで。近くにいないと君を守れない。君がいないと生きていけない。」


 その髪から微弱な力が流れ込む。なんだか悪魔さん、流し込む力の調整が上手くなってるわ。ちっとも苦しくなくて、愛しくて心地よい。早く結婚したい。妻にして欲しいと思ってしまう。私はこのままこの人の手のひらで過ごすのかしら?ジオルはどうしよう。バレないでいられる?それとも、お願いすれば、お目こぼししてもらえるかしら?


 いいえ、いいえ、やっぱりジオルのことは忘れてこの方の貞淑な妻にならなければ……ああ、嫌だわ。恥ずかしい。妻という言葉を思い浮かべただけで、興奮して息が荒くなる。ああ、ベルゼ様、今、妻にして欲しい。ああ、完全に術中だわ……ん?あれ?眠くなってきた。力の他に眠くなる術もかけられてるのかしら?ああ、助かった。自分から貞操を手放すところだったわ。


 でも、興奮と眠気が均衡して本格的な眠りを妨げる。あの女の人の赤紫の瞳がチラチラ脳裏に浮かぶ。うつらうつらしていたら、しばらくして、眠ったと思ったのか悪魔さんが動いた。


「誰か。」


「御前に。」


 わ!あれ、悪魔さんの部下?今、呼んだから来たのよね?この辺にうじゃうじゃ隠れてるわけじゃないよね?


 目の前に現れたのはザ!悪魔的なヤギっぽいやつだった。黒くて毛が燃えてるように波打っている。それが悪魔さんの前で跪いている。


「ジュブ=ニグラスを名乗っている女はどうしている?」


「岩屋に閉じこもったままでございます。」


「そうか。あの女をリンダに近づけたくない。引き続き厳重に見張れ。」


 悪魔さんの部下は首を垂れて、現れた時のように静かに消えていった。


 ジュブ=ニグラスを名乗っている女?ジュブ=ニグラスじゃないの?またしても、ややこしいわね。あの夢の人なのかな??


 悪魔さんがこっちを見た。薄目開けてるの見つかりませんように。


「愛しい眠り姫。いっそ結婚式当日まで眠らせておこうかな?君はすぐ人を引き寄せてライバルを増やすんだから。」


 頬に手を当てられる。暖かくて気持ち良い。


「でも、そうしたらまた嫌われてしまうかな?君に嫌われるのが怖くてしょうがないんだ。愛しているよ。遠い遠い昔から。」


 私の意識は闇に溶けて行った。

わわわ!!ブックマーク増えてる!!ありがとうございます。がんばります。

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