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18 マデリーンの家族事情

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 今日はリンダ様が来てくださる。私は張り切って用意をした。母に弟子入りして一月、昔は見るのも嫌だった薬の調合にも慣れてきた。


 桃色きのこに附子を少々、黄金を入れてサイのツノと鷹の心臓、鍋に入れてグツグツ煮込み冷やして我が家に伝わるシードルで割れば悪魔の魔法を破る特製ドリンク。


 ああ、これでリンダ様の目を覚ますことができる。母にベルゼ様の事を話した時、それは悪魔だと教えてもらった。私をアルス様から救ってくれたリンダ様。平民出身の私に初めから優しくして下さったリンダ様。私を親友と呼んでくださったリンダ様。私に人を愛する気持ちを教えてくださったリンダ様。


 そのリンダ様は今、悪魔の手の中。そのうち正式に妻にされてしまう。特に問題なのが、ご本人が洗脳されてしまったこと。悪魔に愛されているからと言って幸せになれるなんて思えない。妻ともなれば、一体どんな事をさせられるのか。


 酷い目にあって泣いているリンダ様が目に浮かぶ。しかも、悪魔は何が悪いのか分からず、夫を喜ばせる妻の役割を果たせていないと暴力を振るうかもしれない。肉が裂け、目玉が飛び、死を一心に望むほどの苦痛の後、愛しているからと元に戻されてしまう。そんな事がきっと一生、もしかしたら寿命をいじられて半永久的に続くかもしれない。


「私が守って差し上げなくては!!」


 お助けするには、まずはリンダ様を正気に戻すこと。それから事故を装って行方不明になる。逃げたと思われるとリンダ様のご家族にも累が及ぶ。あくまで、事故で行方不明。悪魔たちにも事故で魂まで消えてしまったと思わせる必要がある。あの後リンダ様から聞いた話では、お可哀想に、何生にも渡ってあの悪魔に付き纏われている。ならば、魂のロストまで行かないと解放されない。


 まずはその第一歩。この薬でリンダ様を正気に!!


「マデリーン、薬を見せてちょうだい。」


「母様。」


 後ろから声をかけられて振り向くと、妙におしゃれをした母がいた。サイドを残して結い上げられた髪には赤い宝石のついた髪飾り。平民が着る衣装の中ではドレスと呼ばれるような黒いワンピース。金のイヤリング。


「うんうん。よく出来てるわ。では、見習い魔女のマデリーンさん、この薬の効能は?」


「はい。キノコは滋養、附子は心臓への刺激、サイのツノで胃腸を保護して、鷹の心臓で悪魔の術へのアプローチ、特製のシードルで知恵を刺激し、魔術を打ち破ります。」


「はーい。よく出来ました。附子は毒だから気をつけるのよ。黄金は何のために入れるのかしら。」


「黄金に効能はありません。見た目のためです。キラキラした金粉で飲む人の心を虜にします。」


「うんうん。私の娘は優秀だわ。しかも、悪魔に立ち向かうなんて魔女らしからぬ素敵な動機。それに比べて息子は……貴方には兄がいるのだけど、何というか……な子でね。」


 さらっと爆弾発言。私、一人娘じゃなかったのですか?


「あ、あの、私に兄が??」


「そうなのよ。とーっても素敵な方の子供なんだけど、ちょっと強引に行きすぎたせいか、かなり、あれな子になっちゃって。でも、もちろん可愛い息子。貴方が立派な魔女になったら紹介するわ。あの子を見て卒倒されても困るから。」


 父が違うのね。


 貴族の娘なのに平民として育てられたと聞けば、貴族に遊ばれた女の娘と思われることが多いけれど、うちは少し違う。


 父は母にぞっこんで母との結婚を願ったけれど、母はそこまででもなく、当時の伯爵家の当主であるお爺さまとしても、平民の魔女を正室にするのは好ましくないとして側室を打診した。母は正室でも乗り気でないのに側室なんて論外と断り、諦めきれない父が恋人のままで通い婚をしている。父が家を継いだ時も正式に妻にと申し込んだけれど、今更と断っていた。父が強引だったのは一度だけ、私が白魔法を発現した時。是が非でも伯爵家に引き取りたいと言ってきた。私も魔女にはなりたくなかったから従った。母は反対も賛成もしなかった。


「母様、あの、お父様との結婚を断っているのはその兄の父君のためだったのですか?」


 母は髪をサラリとかき上げ、首をかしげた。


「そうねえ。そうかもしれないわ。とってもとっても素敵な方なの。その方の正室になるのは難しいけれど、でも、独り身でいたらいつかは……なんて、ああ、いくつになっても私は恋する乙女なのよ。」


 母の知らなかった一面を見てしまったわ。


 そして、新たな事実も。私には兄がいて、母には想い人がいる。兄は会ったら卒倒するような人らしい。


「ふふ。好きな人の話は楽しいわね。ああ、もうすぐ、公爵令嬢がいらっしゃる時間ね。」


「ええ。母様、協力してくれて本当にありがとう。母様の協力があれば、きっとリンダ様を解放できるわ。母様にもお父様にも迷惑をかけないように作戦を立てるわ。」


 母様は嬉しそうににっこりと笑った。

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