15 魔王様の気の長い野望
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瑣末な事、つまらない感情に支配されるべきではなかったと反省する。私の女神に惹かれるものがいるのは必定。前世に邪魔をしてきた小物をわざわざこの世界に取り込む事などなかったのだ。そのせいで愛する人を苦しめてしまった。
嘆く私の愛しい女神。どうしてこうなったのかは分からないが、急にリンダが自ら保護していたジオルを殺そうとした。
もちろん、ジオルが死ぬことなどどうでも良いことで、私にお願いしてくれれば、こんな事をしなくても、公開処刑にでも、車裂きにでも、生き埋めにでもしてあげるのだが……
魔界で仕事をしていたら、急にリンダの波動がおかしくなった。初めに捕まえた頃から監視されるのは嫌だと言っていたので、命の危険レベルの異変だけを感知するようにしている。
今回のことはリンダの命の危険があるほどの精神ショックだった事になる。すぐに飛び出したが、地球の近くにある魔界から外宇宙は遠い。瞬間移動を何度か繰り返して距離を詰めるのに時間がかかった。
自分で刺したジオルの死をひどく恐れている愛しい人のため、なんとか恋敵の死を止めなければならない。間に合わなければ過去に飛ぶという方法もあるが、過去をいじると面倒な事も多いので、出来るだけやりたくはなかった。今生で、せっかく手に入れたリンダとの関係にも齟齬が生じる可能性があるのだ。
リンダの嗚咽がおさまってきた。私はリンダを抱いたまま隠れ家の一つに移動した。落ち着いたのなら事情を聞きたい。
「ここは?」
泣きすぎて赤い目をしたリンダが可愛い。
「私の秘密基地だよ。誰もいないから安心して。」
「え、あ、はい。」
リンダが戸惑ったように辺りを見回す。何の心配もいらないのに。あんな事の後だから不安なのだろう。
「どういう状況だったの?ジオルがマデリーンを弄んで捨てたとか?」
リンダがジオルを刺す理由がそのくらいしか思いつかない。もしくはリンダを襲ったのか?それなら拷問で殺した後、魂を捕えて相応の報いを受けさせよう。
「夢で……夢見が悪くて……変な夢をたくさん見て、寝不足で、その中でジオルが殺して欲しいって……」
夢?
「少し見せて。」
リンダの額に手を置いた。夢は起きれば消えるもの。だが、ここまでの事をするなら、その夢は消えていないかもしれない。
……見えない。ただの夢か?私が見せていた愛の夢。もちろん私も一緒に見ていたのだが……そのかけらがいくつか見える。うーん。改めて見ると思ったより嫌がられている。夢で教えれば目覚めてくれると思ったのに、寝不足にさせていただけか……やはり、二人の性生活でSMは封印なのか。
残念だ。まあ、そういう相手は魔界の妖魔や奴隷にでもさせる事にしよう。愛していない相手なら遠慮する必要もない。それはそれで楽しいだろう。
ああ、そうだ。それを見せて、そのあとリンダを優しく愛するのも良いかもしれない。私と妖魔の関係に嫉妬して激しく求めてくれるかもしれない。
「ベルゼ様?」
ああ、すまない。君との未来を考えると妄想が広がってしまうんだ。
「もしかしたら、私との夢が刺激的過ぎて、他の夢も見るのかもしれないね。安心して、暫くこの夢は見ないようにしてあげる。」
「は、はい。ありがとうございます。あ、そうだわ。お助けくださってありがとうございます。私、人を殺してしまうところでした。」
「そんなこと気にしなくて良いよ。君は選ばれた人だ。気に入らない人間がいるなら、君を不快にさせた責任をたっぷり取らせよう。」
リンダが微笑んでくれた。
「本気ではなくて、慰めてくださったととっておきます。ありがとうございます。」
本気だが、リンダが喜んでくれるのが一番だから、そういう事で問題がない。リンダが私の腕の中で微笑んでいる。ゲームでいうところの好感度が上がったのを肌で感じる。幸せとはこういう事なのだろう。この後、私達はこの国の王と王妃として君臨する。
やっと私と彼女の物語が進展するのだ。あと、何生か転生を繰り返させて、私の妻として幸せであった事実を積み上げる。
そして、全ての記憶を戻し、元の肉体に魂を戻せば、彼女は魔王ベールセブブの妻として魔界で暮らす事になる。
ああ、待ち遠しい。今生は3人くらいで良いけれど、その時になれば、子供をたくさん産んでおくれ。私達の子で悪魔の軍団を作り、サタンに反旗を翻そう。その時、私こそが魔界の帝王、君が女王となるのだ!




