13 夢の中から響く声
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「リンダ様、おやつれになったような……」
遊びに来てくれたマデリーンが心配してくれる。
「大丈夫よ。夢見が悪くて寝不足なだけだから。」
最近寝るのがストレスなのよね。なんだか悪夢がバラエティに富んできた気がする。ただ、やっぱり内容を覚えていないの。
「まあ、夢ですの。でも、おやつれになるほどなら対策をされた方が良いですわ。」
「ええ、香りの良い枕とか、眠りに良い音楽とか、それなりにやってみたのだけれど、あまり効果がなくて……でも、本当は夢の内容を覚えていないのが1番のストレスなのよ。どんな夢を見ているのかだけでも分かればと思うんだけれど。」
「……しばらくお時間を下さいませ。夢見の魔法を勉強してきますわ。夢の内容と嫌な夢を見なくなる方法の本を図書館で見たことがあります。きっとお役に立てますわ。」
そう言ってマデリーンは早々に帰ってしまった。お茶をするつもりだったのに、残念。しょうがないので、最近サボっていたリラの練習をすることにした。リラっていうのは撫でるように弾く小型の竪琴よ。調律しようかとちょっと音を出してみる。ポロンという懐かしいような素朴な音が出る。ポロンポロン……私は間抜けなことに自分の出した音でトランス状態になっていた。自分の出した拙い音に導かれ、見ていた夢の一部が甦る。それも二つの夢がシンクロしたような不思議なものだ。
「マデリーン。僕のマデリーン。君は僕を愛しているね?その証を見せて欲しい。何か僕の喜ぶことをして。そう、夢ではなく現実で。例えば、そうだなぁ。君の前の僕の婚約者を奪った男を殺してくれないか?」
散々、ベッドで泣かされた後、私の愛するアルス様が言ったこと。
現実で、私がベルゼとの肉体関係がないと知ったとき、それだと身篭らせる訳にはいかない。僕ともしばらくは夢の中だねと言っていた。その後に見るようになった夢。
夢の中では愛する人と愛し合って幸せなんだけど、起きるとなんとも言えない違和感になる。おまけに幼馴染を殺せと言われているんだから間違いなく悪夢だ。
この夢に重なるように見るもう一つの悪夢。
「リンダ、桜、--ああ、俺の……」
それはジオル。幼馴染の元婚約者。前世私を助けようとして殺されてしまった幼馴染の彼方。
苦しんでいる。ジオルはマデリーンと幸せになれば良いのに、何故かとても苦しそう。
「ああ、リンダ、解放してくれ。俺をここから。」
もう城からは連れ出したわ。うちの別邸がそんなに嫌なのかしら?それとも、やっぱり、皇太子から平民になってしまった事が耐えられないの??
「ああ、--許してくれ。お前を守れなかった。奴らに操られて酷いこともした。」
気にしないで。私だって無理だわ。あんなの相手が悪すぎるのよ。夢の中だからか声が出ない。ジオルには伝わっているだろうか?
「このままでは何もできない。ここから出たい。」
ジオルは私に切々と訴える。
「俺を」
「あの男を」
「「殺せ」」
「別邸へ行くわ。」
私はそう言って護身用の短剣を握った。




