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奇妙な魔法少女たち  作者: みずゆめ
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十八話ー流星群

「あぶねええええ! かすった! ほっぺかすったって!」

「ひぃっ!? た、たまにサイズの大きな星が降ってきますわ! というかなぜ、大きさがまばらなんですの!?」

「た、多分だけどもクロ、レイちゃんが魔法を使い慣れてないから、大きさも威力も安定しないんだと思おおおお!?」


 現在、我々魔法少女は仲間の魔法少女の放った魔法により危機に陥っている。

 レイの魔法は超強力な威力のある隕石を範囲内に降らせる破壊魔法。……まではよかったのだが、無差別に襲ってくる上に途中でキャンセルが出来ないときたもんだ。

 マリネと言いレイと言いどうして自滅する恐れのある魔法なんだよ! もっと気楽に使えるような魔法にしとけ!


 そう憤りながら結界の外へ全力疾走。

 この魔法は、保護結界のギリギリ内側に展開されているため、結界の外へは隕石は降っていないだろう。多分。

 なので、俺達は生き延びるためにこの嵐の中を駆け抜けている。

 しかし、結界の外までの距離は大したことはないのだが、星がそこかしこに落ちてくるため思うように走れず時間がかかっていた。


「なあクロ! 保護結界を修復して、この魔法を消すことって出来ないのか!?」


 ”たまごっティン”による保護結界は、発動前の周囲の状態を保存し、保護するらしいため、発動前の状態に戻せばレイの魔法も消えてなくなるかと思ったのだが


「無理クロよ! こんな濃密な魔力、修復時に干渉しちゃうからダメだよ! だから基本的に修復は魔力が薄い戦闘後にするんだよクロ!」


 とのことらしい。逃げるしかないようだ。


「うおおっ!? すげえでかいのが落ちるぞ! 気をつけろ!」


 遠くの方に大きな星が落ちていき、地面に着弾と同時にすさまじい衝撃がこちらに届く。

 爆風の強さから、スライムを倒したときのものと同等か。

 しかしマリネとクロが言ったように、大きさも威力も安定していない。小さいものは小石程度のものもあり、それは威力もないに等しい。まあ、被害を受けている俺達にとっては威力が低いほうが助かるが。

 それに狙いもかなり適当だ。今までまともに当たったのはスライムとレイのみで、他は至近弾がせいぜい。

 今後の実用を想定すると……正直かなり使いにくそうだ。多分ミーティア・ストライクのほうがマシ。


「また魔法を使わないほうがいい魔法少女が増えたわけか……ってあっぶねえ!?」


 愚痴をこぼしていたら、間近に隕石が飛来していた。

 俺は咄嗟にしゃがむことで衝撃に耐えることが出来たが、反応が遅れたマリネ達は揃って転倒してしまう。

 マリネが倒れると、マリネが操っていた人形も操作がおぼつかなくなり芋づる式で転倒。大惨事だ。

 特にマリネはまともに受け身を取れずに倒れたため、ダメージが大きいだろう。


 俺は隕石に注意しつつ駆け寄る。


「マ、マリネ! クロ! 大丈夫か!?」

「だ、大丈……ぐふっ!? ……申し訳ありませんわハジメさん……わたくしはここまでのようですわ」


 勢い良く起き上がりそうだったマリネは、突然顔を青白くして倒れ込んでしまった。


「ど、どうした!? どっか打ったのか!?」

「い、いえ……今、ハジメさんがかがんだ時に……その……スカートの中が……」


 ……俺は今、”ワンだふる・ZYK”というアイテムを装着している。尻穴に。

 それを付けている影響で、俺は今……ノーパンなのだ……。

 そして俺の身体は一部だけ女体化できていない。パンツで隠れる部分だけが。

 つまり、マリネが見たものは……。


「可愛らしいハジメさんにあんな邪悪なモノがくっついているなんて……知ってはいましたし、以前おパンツ越しに拝見もしましたが……ナマモノを見ると精神的ダメージが比べ物に……」

「邪悪なモノって言うなよ! つうかそんな事で倒れんな! ダメージの大きさで言えば俺のほうがデカイだろ! ケツに尻尾プラグインしてノーパンで股ブラブラさせながら走り回って、挙げ句には仲間の女子にイチモツ見られてんだぞ!? 言ってて死にたくなってきたぞチクショー! いいから起きろ!」


 なんとかマリネを復帰させようとし……た時に大きな隕石が後方に着弾。

 その衝撃波で俺のスカートが盛大に捲くられた。


「がっはあああ!? ゾウさん……が……うぐっ」

「マ、マリネええ!? 寝るな! 頑張れ! 気を確かに! ……え、マジで!? マジで気失ってんの!?」


 マリネは本当に気絶してしまっていた。

 倒れた彼女を見ると、額に小さなアザができている。もしかすると頭を打った影響で気を失ってしまったのかもしれない。

 きっとそうだ。そういうことにしよう。こんな危機的状況で仲間のゾウさん見て気絶とかされてたまるか。


 これはマズい。レイは既に気絶していて、クロは……マリネの下敷きになってしまったようで気を失っている。さらに今、マリネがお荷物に追加。

 残っているのは俺だけで、俺には全員を運ぶ力はない。

 そして俺はマリネに回復魔法を使えないため、マリネを復帰させることが出来ない。

 マリネがレイとクロを運んでいたからこそ、この脱出劇は成り立っていたのだ。


 ゴールまでの距離は……10mくらいか。

 なら、一人ずつ運んでいけば……!


 そう決意し、星に注意しつつ行動に移ろうとした時。


 ――あ。

 あれは、ダメだ。


 俺の視線の先には、特大の星。

 これでとどめを刺すと言わんばかりの大星は、周りにある星々を取り込んで更に巨大化している。

 直感的に、あれが落ちたらお終いだと分かった。


 数秒後、巨星は俺達を目掛けて無情にも降下を開始。


 終わった。俺達はあれに潰されて、死ぬだろう。


 ……。

 …………。

 思ったより速度がかなり遅い。

 これなら、着弾まで時間がある。


 けれど、誰かを背負いながら逃げられるほどの時間はなさそうだ。

 辞世の句でも考えておこうか。


 俺はすべてを諦め、座り込ん……尻尾邪魔くせえ……。

 最後まで締まらない自分にうんざりしつつも、座りやすいように尻尾を動かした時、何かが尻尾に当たった。

 小石とは違うような……いや、物理的な感触とは違うような、そう、魔力で触ったかのような感覚に奇妙さを覚え、尻尾で小突いたものを見ると……。


 ――。

 

 あいつらなら、最後まで諦めないだろうな。

 不意にそう思った。


 黒いスライムの時は退治を諦めたが、生きることは諦めなかった。

 魔法少女として、生きていた。 


 ……生き残る方法は、2つある。


 1つは、俺だけ結界の外へ逃げることだ。

 巨星はまだ猶予がある。俺だけなら全力疾走で間に合うだろう。


 クロが言っていたな、周りへの被害を最小限に止めるのも魔法少女の仕事のうち、と。

 まあ、これは魔物による被害ではないが、被害者にとって被害は被害だろう。

 だから、誰かが生き残って保護結界の中を修復しなければいけない。外にも影響が出ていたらなんとかしないといけない。

 魔法少女は人手不足とも聞いている。なら、俺だけでも生き延びて、貴重な人材を減らさないようにしなければならない。

 この街を、守らないといけない。



 だけど、そんなもん知ったことか。


 

 俺は、顔も知らねえようなやつよりも、こいつらのほうが大事なんだ。


 正直、出会わなければよかったと思ったことは何度もある、ていうか今も思ってる。

 魔法少女になれたことは、というよりもほぼ女体化出来たことは感謝しているが、代償があまりにも大きい。

 性格に難がある。

 魔法にも難がある。

 おかげで魔法少女の役目をこなすのに多大な苦労を要する。

 こいつらと会ってたった数日だが、今まで生きていた中で一番文句を言っていると断言できる。罵倒もしているな。俺は本来、言いたいことも言えない大人しめの性格なんだ。

 だというのにレイが何かやらかして怒鳴ったり、マリネが何かしでかして呆れたり、しまいにはクロの策略で尻尾も生やされて……ロクでもねえ日々だ。

 何でこんな奴らに会っちまったんだ、と思う。


 そんな、出会わなければよかった奴らだけど、――別れるには惜しい、楽しい奴らなんだ。

 こんな面白い奴らを見殺しにできるものか。


 だから、もう一つの方法で生き残ろうと思う。


「俺は、願う」


 先程座った時に見つけた、これに頼って。


 こちらの方法は、最悪、全滅する。

 なぜなら、何とか出来る確証はこれっぽっちもないからだ。


 それに、魔法少女的にはアウトな方法、邪法だろう。

 クロはこう言っていたな。


(魔法少女が使ったら処罰ものクロよ! それに副……)


 後半はレイ達にしばかれてセリフが中断されていたが、きっとこう言いたかったのだろう。


 副作用がある、と。


 そうなんだろ?


「暗黒結晶のよ――」


 だけど、知らん。全員で生き残ってやる。

 俺が掲げるのはレイにスライムごと砕かれて小石サイズになった暗黒結晶。

 完全体なら万能の力があるのだ、この小ささでも一つくらいの願いは叶えられるだろう。それに、副作用も少なくて済むかもしれない。


 俺は、またこいつらと、まだ、こいつらと魔法少女としてやっていきたいんだ。

 そのためには、邪法にだって手を染めてやる。

 ――だから、


「このバカ騒ぎを、なんとかしやがれええええ!」


 回復しつつあった魔力をすべて注ぎ込み、願った。


 暗黒結晶のかけらは、小さいながらも貪欲に一気に俺の魔力を貪り食う。

 魔力を食い切ったかけらは突然、砕け散った。

 砕けたかけらは更に小さな粒となり、空中に散らばったかと思うと、黒く、輝き出す。

 光はどんどん大きくなっていき、周囲を覆うほどの範囲となっていく。

 視界は黒い光でどんどん狭まっていき、やがて何も見えなくなる。

 最後に見えたのは、巨星に立ち向かうように――いや、喰い付くように群がる黒い光だった。


「――あ」


 次に自分の目が捉えたものは、すっかり元通りになった夜空。

 五芒星もない、荒く塗りつぶされてもいない、本物の夜空が見える。

 辺りを見ると、隕石によって出来たクレーターも元通りになっていた。どうやら、修復までしてくれたようだ。

 レイ達はまだ倒れたままだが、規則正しく呼吸をしている所をみると、無事らしい。気絶ついでに寝てしまったのかもしれない。


「はあ、今度こそ……終わったか」


 まさか封印、破壊対象に助けられるとはな。

 俺達の恩人はもう影も形もない。契約を果たしたのなら、立つ鳥跡を濁さずなのだろうか。かっこいい、惚れそう。


 ともかく、なんとか生き延びた。レイの魔法から。

 ……やっぱり改めて考えなくてもおかしいんだよなあ。味方の魔法なんだよな? なんでこんなにピンチになるんだよ。魔物よりヤバかったぞ。

 思い返すと、まともに戦ったのは最初の小さいのと黒い巨人くらいだ。ウネウネもまあ、今日に比べればちゃんと戦っていただろう。その後のゾンビの始末のほうが大変だったけど。

 ゾンビと言えば、先程味わったことだが夜のゾンビはかなり危険だった。先制攻撃で大半を仕留められたから良かったものの、まともに相手をしたら歯が立たないだろう。あと怖かった。

 レイの魔法はこれだし。


 ……味方のほうが厄介な件について。


 待て、そもそも事の発端って、クロが暗黒結晶を使って出世とかいうチンケなことをし始めたからなんだよな……。


 じゃあ、この数日の出来事ってほとんど……


「内輪モメみたいなもんじゃねえか……」


 疲れなのか呆れなのか脱力なのか分からない溜息をついて、気絶するように倒れ込んだ。

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