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奇妙な魔法少女たち  作者: みずゆめ
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エピローグ

 スライム退治から一週間。

 あれから大きな魔物が出現することもなく、命の危機に瀕するような事態に陥ることはない。

 ただ、小さな魔物は出現するためそれを退治して回っている。

 まあ、特筆するような所もない雑魚ばかりなので、スライムに比べれば楽勝だ。

 俺が魔法少女に成り立ての時に比べれば平穏に過ごしていると言える。


 なんてことはなく。


「おーい……そっちはどうだ? 見つかったか?」

「全然ないわ。これっぽっちも。ツチノコのほうが見つかりやすいんじゃないのコレ……」

「本当にこの辺にあるんですの……? 暗黒結晶のかけらは」


 俺達は現在、スライムと戦った小山で砕け散った暗黒結晶の大捜索を命じられている。クロよりもさらに偉い人に。


 実は、クロが暗黒結晶を使って企んでいた計画はクロの上司にはお見通しだったらしい。

 普通ならすぐにクロを捕獲し計画を止める所なのだが、暗黒結晶を使用したサンプルは極めて希少なため、そのデータを収集するために泳がせていたとのことだ。

 そしてある程度データを集めたら、回収班を派遣して終了……のはずだったが、俺達が予想外の働きをしてしまって事態が面倒なことになる。


 面倒なこととはもちろん、暗黒結晶のことだ。

 レイの魔法によって木っ端微塵にされた暗黒結晶は派手に散らばってしまい、しかもそのどれもが未だ活性中らしく、


「その暗黒結晶のかけらに呼び寄せられた小物がわんさか沸いて……」

「ここら一帯が魔物の集会所みたいになってるとか……」

「なんて面倒なことになったんですの……」


 スライムと戦った小山周辺が魔物の出現スポットとなってしまっていた。

 ついさっきも、すぐそこに沸いた魔物を捻り潰したところだったのだ。

 これでも最盛期より大人しくなっていて、一番ひどい時は昼夜問わず百鬼夜行のようになっていた。

 幸いにも出てくる魔物の強さは大したことがないため余裕で倒せるのだが、数が多い上にこちらの予定などお構いなしに来るため、振り回される俺達はかなり疲弊してしまっている。


 そして肝心の暗黒結晶のかけらの在り処は、よくわからない。

 暗黒結晶が完全だった時は、身体の魔力が引っ張られる感覚がしていたため、すぐに分かったのだが、かけらになってからはうっすらぼんやりとあやふやな感覚になっているため、場所が全然特定できないのだ。

 この小山近辺で砕けたわけだし、魔物もよく沸くし、ぼんやりとは魔力に違和感があるので、この辺にあるのは間違いがない。

 ただ、小山と言ってもかなり広い。闇雲に探しても効率が悪い。

 そう思い、暗黒結晶の魔物を呼び寄せる性質から、魔物が出現した付近にかけらがあるのではないかと考え、その付近を捜索しつつ魔物出現分布図を作ったのだが……小山をぐるっと囲むくらいの範囲に分布している。絶対3人と1匹で探せる範囲じゃない。

 それに、どれだけの数が散らばっているのかも全くわからない。ヤバイ。


 ただ、これだけの事態だ。救援があるだろう……と思っていたんだけどなあ。


「あんのクソ上司、絶対めんどくさいから全部ボク達に押し付けたに違いないクロ……」


 クロによると、なんかそれらしいことを並べ立てられて結局、暗黒結晶のかけらの回収を丸投げされたらしい。自業自得といえばそうなんだけどさ……。

 そもそもクロが元凶で、俺達魔法少女に責任はない。だから後はクロに任せようと一瞬だけ思ったが、すぐに考えを改めた。


「まあまあ、確かに探すのはめんどいけど俺達しか探してないんだ。ってことは、暗黒結晶のかけらを使ってもバレねえってことだ」

「そうね! 使っちゃえば消えるんでしょ? だったら証拠も残らないしね!」

「ただ、全部使ってしまうと疑われそうですので、いくつかは提出用にしといたほうが良さそうですわね。残ったものは……山分けで」


 そういうことだ。

 

 暗黒結晶の副作用が心配だが、かけらなら大丈夫だろう。

 なぜなら俺はレイの魔法を消すために使ったけれど、暗黒結晶の副作用は特にない。

 ということは遠慮なく使える。ひゃっほう!


「いや、ダメクロよ。ちゃんと報告しちゃうからね、クロ」


 お? なんか改心しやがった裏切り者がいるな。

 しでかしたことを考えると普通なら処罰ものだけど、上司にも思惑があったから特にお咎めがなくてラッキーとか言ってた不届き者が。


「そんな真面目ぶっても無駄だぞ。……さっき何か拾ってポーチに入れてたよな?」


 クロの動きが止まった。

 その様子を見て、レイとマリネがチンピラのようにクロを取り囲む。


「へえ、私達にはああ言ったのに、いい度胸してんじゃないの。……串焼きがいい? 網焼きがいい?」

「まあまあレイさん、落ち着いてくださいまし。クロさん、わたくし達は出すものさえ出していただければ何もいたしませんわよ? ちょっとジャンプしてみてくださいまし?」

「ま、まままま待って! 違うって! これはちゃんと上に届けるものだから! くすねるつもりなんて全く無いよ! クロ!」


 じゃあ何で拾ったのに黙ってたんだこの豚野郎。


「いやだって、言ったら山分けどころか取り合うでしょ? 君たち」


 ……。

 …………。


 あっ! ”WHS”の魔物探知音だ! 魔物が来るそ! 会話とかしてる場合じゃないな! うん!


 俺は自分の”WHS”で魔物の出現予測位置を確認する。やはり、この辺に来るようだ。

 懐から”たまごっティン”を取り出し、結界用の玉を地面に叩きつけて、戦闘準備を終えた。


 まあ、この辺に来るのは雑魚ばかりだ。すぐに終わらせられるだろうと高を括っていたのだが


「――――っ!」


 鋭い咆哮と共に現れたのは、人くらいの大きさのある脚だった。

 脚の付け根部分に、不揃いな牙が並んだ口が存在している。


 ――これは、強そうだな。


 そう直感的に思い、私服姿のレイに指示をする。……ん? 私服?


「レイ、ミーティア・ストライクだ……お前なんで変身してねえの!?」

「い、いやあ……なんていうか、”マジカル・ジュエル”失くしちゃったみたい」


 まーた馬鹿なことを言ってこいつは。はっはっは、シメるぞ。


「あっ、さっき向こうの池で水切りしてたから、その時に間違って……!」

「なんで間違えるんだよ!? ていうかお前、かけら探しサボってたな!? もういい! マリネ! 人形を魔物の上に落とせ!」


 戦力外となったレイは放っておいて、意外と強い人形を作り出せるマリネを頼る。

 そのマリネは珍しく自信に満ちた顔で意気揚々と前に出た。


「ふふふ。ハジメさん、今日の空をご覧なさい! 快晴ですわ! この天気なら、わたくしの真の力をお見せできますわよ! 落下ダメージで倒すなんて美しくない事はしませんわ! おいでなさい! ライチ、ニーナ、サニー、シエル!」


 マリネが優雅に踊りながら作り出したのは、マリネにうり二つな4体の人形だ。ライチ以外にも名前あったんだ。

 1体以上はゾンビになるのではと思ったが、作り出された4体はそんな素振りは見せていない。

 話によると、ゾンビ化するのは日光が少ない時らしい。ということは、日光があればゾンビ化はしないのか。

 今日は透き通るようなきれいな青空。マリネの言う、真の力とやらを拝めるようだ。


「さあ、行きますわよ!」


 マリネの号令と共に、4体の人形が統率の取れた動きで魔物に迫る。

 魔物は迫る人形を噛み砕こうとするも、人形はひらりと華麗に攻撃を躱し――


 一斉に倒れた。


 ……。

 何が起こったのか分からず、一瞬呆けてしまうも、すぐに気を取り直してマリネに問おうと振り返り……倒れたマリネを見つけた。


「マ、マリネ!? 何でお前まで倒れてんだ!?」

「う、うふふ……。人形を複数同時に操るのは……魔力の消費が尋常じゃないんですの……。わたくしは、ここまでのようですわ……」


 ああ……。そう言えばそんな事言っていたな。


「だったらもう少し数抑えて出せよな! あの人形達何もしないまま魔物に食われてるぞ!」

「ふふ……。一度くらい目立ってみたかったのですけど……無念」


 そりゃ無念だろうよ。ちゃんと使うよりも、ゾンビの時のほうが役に立っちゃうんだからな。

 あとお前は心配しなくても目立ちまくりだ。むしろ目立っていないと思ってたことに驚いているよ。これ以上やらかす気だったのかコイツは……。


「くそっ! しゃーねえ、レイ! お前に強化魔法をかけるから、素手でどうにかしてこい」

「ええええ!? またそれ!? イヤよ! あの人形みたいに食べられちゃうって! ていうか変身もしてないんだから無茶だって!」

「お前がアホみたいな理由で”マジカル・ジュエル”を無くすから悪いんだろうが! 水切りってお前……」

「最高3回まで跳ねたわ!」

「どうでもいいわ! つうかしょぼっ! そんな回数でよくドヤ顔できるな! いいから行って来い! 噛まれたら回復してやる! 突撃だ、不死身の魔法少女よ!」


 俺の剣幕に押され、泣きながら魔物に特攻していくレイ。

 魔物は人間の脚を模した姿で、関節の可動域も脚と同じようだ。

 膝の関節は横方向には曲がらないため、魔物も横方向の動きには弱い。

 レイはそこを上手く突いて何とか噛まれずに立ち回っている。


 レイが囮になっている間に、俺はクロに聞く。


「クロ、何かアイテムはないのか?」

「えーと、待ってねクロ。ああ、”ワンだふる・ZYK”はないからね」

「あってもいらんわっ……いや、魔力切れでダウンしたアホがいるからな……何で持ってきてねえんだ!」

「も、もし持ってたらマリネちゃんにする気だったのクロ? あんなだけど女の子だというのに……恐ろしい新入りクロ……。あ、これはどう?」


 ……ふむ。それならどうにかできるかもしれない。


「わあああああハジメえええ! こいつすね毛が濃いんだけど! ジョリモサァってしたああ!」

「ふふふ……ここからならハジメさんのスカートの中が見えますわね……。もっこりも慣れてしまえば中々……。守備範囲が広がりましたわ」


 よし、どうすれば勝てるか考えよう。


 相変わらずロクでもないけど――楽しい仲間達と。

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