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奇妙な魔法少女たち  作者: みずゆめ
14/22

十一話ー遭遇

 放課後になり、俺達はピクニックのためのお菓子を買いに行き、ついでに暗黒結晶の捜索をしようとした。

 いや、違う逆だ。メインは暗黒結晶の捜索だった。


 だったのだが、目的の優先順位を間違えてお菓子選びに本気を出しすぎたせいで辺りはすっかり暗くなってしまっていた。

 隣を歩くレイがぼやく。


「あ~あ、もう夜じゃない。ハジメが予算ピッタリになるように買うとか言い出して無駄に時間かけるから~」

「予算ピッタリなだけじゃないぞ、質と量のバランスも考えた上で計算したんだ」


 甘い物、しょっぱい物、胃袋に合わせて一口サイズの物を入れたりして量を調節し、飲み物も含めて予算ピッタリに選び抜くのが楽しいのだ。


「いや、なんか誇らしげに言ってますけど、結局計算ミスで予算オーバーしてましたわよね?」


 そう言ったマリネは俺とレイの少し後ろを歩きながら、先程買ったたい焼きを頬張っている。

 昼間と違いしっかりとした足取りで歩いているのは、今が夜だからだろうか。……ゾンビ的に。


「うるさいぞ、お前が遠くにあるたいやき屋のものじゃないとイヤだとか言い出して、そこまで買いに行ったのも遅くなった原因の一つだと思うぞ」


 お菓子の購入後、小腹が空いたからたい焼きが食べたいと面倒なことを言い出したマリネは、さらに面倒なことに商店街の外れにある店のたい焼きでないと満足できないらしく、わざわざ買いに行ったのだ。

 行って帰ってくるまでの時間は30分程。大して時間がかかっていないように思えるが、放課後から日が暮れるまでの短い間では痛いロスである。

 そういう小腹が空いた時の対策としてお菓子を買ったのだが、目的地に着くまで我慢できない&身体がたい焼きを求めているとか訳の分からな……くもないな。無性に特定の物を食べたくなる時あるし。

 とにかくそんな事をマリネが言ったので仕方なく時間をかけて買いに行ったということだ。


「うっ、確かにわたくしも我儘を言いましたが、レイさんだって駄菓子屋でアイスの当たりが出るまで帰れま10とかくだらないことを一人で始めて、挙げ句にはアイスの食べ過ぎでお腹を壊して無駄に時間を消費していたではありませんの」

「い、いや、まさかあんなに当たりが出ないとは思わなくてね? でも、お腹を壊してもハジメの魔法で治せると思ったのよ。だからいけると思ったんだけど……」


 不満げな顔を俺に向けてくるレイ。何ちょっと俺のせいにしようとしてんだ。お前の自業自得だ。


 ちなみにレイの言うように、非常に不本意ながら腹を壊したレイに回復魔法をかけてやったが、効果はなかった。

 俺の回復魔法は傷は治せても病気は治せないのだろう。ゲーム風に言うと状態異常は治療不可。我ながら使い勝手悪いな……。


 そんなこんなで放課後の時間を盛大に潰して日が暮れてから暗黒結晶の捜索を開始しようとしたのだが、捜索対象が3人とも入ったこともない小山というのが問題だった。

 小山の付近の道はあまり整備されておらず、街灯もあまりない、そんな暗い所を山に慣れていない人間が行ったらあっという間に方角を見失い遭難するだろう。

 いくら俺達が魔法少女だからといっても遭難してタダでは済まないだろうから危険な橋は渡りたくない。というか多分俺達は落ちこぼれに部類されると思われるので、例え安全な橋でも命綱をして渡りたい。


 なので、とりあえず今日は軽く街のパトロールをしつつ小山のふもと付近の下見だけをして、本格的なピクニック……もとい、暗黒結晶の捜索は学校の授業が休みである明日にしようと決めた。


 ……なのだが。


「……変、だよな?」


 現在位置は捜索対象の小山のふもと。

 自分の身体に流れる魔力に不自然な感覚がある。


 異常を感じたのは小山に着くよりもっと前だったが、最初は気のせいかと思っていた。

 しかし、その異常は小山に近づくほど大きくなっていき、異常への疑問は確信へと変わった。


「……なあ、暗黒結晶が近くにある場合って、魔力がそっちに引っ張られるって言ってたよな?」

「そうね……。でも、暗黒結晶が見つかった報告例なんてほとんどないし、一番新しい例でも10年くらい前のだから、眉唾もの……だったんだけどね」


 珍しく真剣な顔で”WHS”を操作しながら俺の質問に答えるレイ。おそらく暗黒結晶について調べているのだろう。


「……魔力、引っ張られるよな?」

「ですわね……。まるで呼ばれているようですわ」

「うん……。こんな感覚、初めてだわ」


 この場にいる三人共、小山の奥、上の方へと魔力が引っ張られている。

 レイとマリネから聞いた暗黒結晶の噂通りだ。おそらく、奥に暗黒結晶がある。

 魔力は想像以上に強く引っ張られ、気を張っていないと根こそぎ持っていかれそうだ。


 どうしたものかと思索していると、”WHS”を懐にしまったレイが調べ物の成果を話す。


「ダメね。話した以上のことは分からなかったわ。あと、やっぱり魔力検知には引っかかってないみたい。私達の分の魔力反応しかなかったわ」


 苦い顔をして首を横に振るレイ。

 あのレイがこんな表情をするとは、状況は中々深刻なようだ。

 それもその筈、未知の存在に対してロクに情報がないまま対処しなければならないからである。未熟者3人でだ。

 そんな不安からか、二人、いや俺を含めて三人共暗い顔をして一言も発さない。


 このままだと不安で思考が停止しそうだったため、とにかく発言をすることにした。


「どうする? 俺達じゃ封印も破壊も出来ないんだろ? とりあえず場所の特定をもう少し詳しくしておくか?」


 最終的には暗黒結晶への対処ができるであろう使い魔のクロに任せるにしても、このまま引き返すのではなく少しでも情報収集をしておいたほうが良いだろう。

 二人共同じことを思っていたようで、俺の提案に首肯する。

 しかし、レイが晴れない顔で


「でもそれだと帰るのが遅くなっちゃう……。テレビ番組の録画ちゃんとしてたか不安だわ。どうしよう……」

「そんな理由かよ!」


 え、さっきから押し黙ってたのはそんなどうでもいい事の……。

 ……あれ? そう言われると俺もあの番組ちゃんと予約したっけか……?


「分かった。確かに暗くて危ないしな。大人しく撤退しよう」

「ですが流石に何もしないというのは魔法少女としてどうかと……」


 マリネがいち早く帰りたいけれどプライド的にそういうわけも行かないというような様子だ。どうすりゃいいんだよ。


「ああもうめんどくせえな! じゃあほんの少し山を登るぞ! そうすりゃ予定通り捜索はしたことにはなるからな! そんですぐ帰る! ほら行くぞ!」


 強引に二人を引き連れて山に入る。

 道は予想通り暗く、加えて慣れない山道でとても歩きにくい。スマホの明かりを頼りに進みつつ、方角を見失わないように頻繁に周りを見て帰り道を確認する。ちなみにGPSは電波の状況が悪いため当てにならなかった。

 周りを見ている時に気がついたが、レイとマリネの周囲がやけに明るい。俺のスマホは比較的最近の物なので、性能的にそう差はないはずと思い、二人の光源を見ると


「……”WHS”の明かりか? へえ、随分明るいんだな」

「そうよ。夜でも戦えるようにってこういう機能がついてるの。ハジメも点けたら?」


 そう言われても渡されてないしな。俺が持っている魔法アイテムは変身用の”マジカルジュエル”だけだ。

 レイは俺が”WHS”を持っていないことを察した後、不思議そうな顔をしてマリネに話しかけた。


「あれ? マリネ、クロから新人が来た時用の魔法少女グッズ渡されてたわよね? ていうか私がそこから勧誘作戦用に”マジカルジュエル”だけ持ってきたんだし。残りのアイテムハジメにあげてないの?」

「………………」


 おいマリネ、そこでだんまりは何かやましいことがありますって言っているようなもんだぞ。


 ……変身。回復魔法準備完了。

 虚空を見つめて地蔵になっているマリネに杖を突きつける。


「マリネェ、覚えてるよなぁ? 俺の回復魔法はお前にとっちゃあ浄化魔法だぁ……。正直に言え。俺に渡すはずの魔法アイテムはどうした? 場合によっちゃあお前の断末魔が山彦となるだろうよぉ……」

「………………」


 俺の脅しに屈せずだんまりを続けるマリネ。

 いい度胸だ。


「よし、どこから浄化されたい? 目か? 舌か? 耳か? 乳首か? へそか? 尻か? 穴か? ……そうそう実はな、この魔法一気に回復させるだけじゃなくて、時間をかけて徐々に回復させることも可能なんだ。……だから生爪を剥がすようにじわじわとお前を……」

「ひいいいいいい!! ごめんなさいすみません申し訳ございません!! 話す話します話しますわあああああ!!」


 泣きながら高速で土下座をするマリネ。どうにか浄化せずに済みそうだ。視界の端に映ったレイがドン引きしている。いや流石に本気じゃないよ?

 実際問題、暗黒結晶を探している中で戦力低下を引き起こすようなマネはしたくない。ん? でもマリネの魔法って夜だとゾンビ化が激しくて使い物にならないんだよな? じゃあ浄化してもいいのか。

 だがマリネが白状するようなので浄化はやめておこう。


「で? どんな変態的行為を俺のアイテムにしたんだ? アイテムの中に盗聴器をしかけようとしてぶっ壊したとかか?」

「ああ、その手がありましたわね! さすがハジメさ……いえいえいえいえ! 違います違いますわ! 壊したのは”WHS”だけですし、理由も普通ですの! ……その、夜食にラーメンを食べようと思ったのですけども、その際に誤ってお湯をぶちまけてしまい、壊してしまいましたの」


 目標、マリネの鼻の穴! 回復魔法発射!


「あああああああ!! 痛い痛い痛いですわ! ハ、ハハハハジメさん、こ、これ結構エグいですわああああ!? は、鼻の穴の中を電動歯ブラシでかき混ぜられているようなああああああ!! しかも毛先は硬めのおほおおおお!!!」

「お前なんつうしょーもない理由で魔法のアイテム壊してんだあ! ていうか魔法のアイテムもそんな事で壊れんなよ! 魔法を使ってない電化製品ですら防水加工してんだぞ!?」


 鼻リフレッシュ魔法にもんどり打ちながら”WHS”が壊れた理由を解説するマリネ。


「”WHS”起動時に防水などの本体を防護する魔法が発動するのですけど、起動してない時は魔法も発動してないので、本体が脆いのですわあああ! その脆さは電化製品どころかティッシュ! だからラーメンのお湯でも簡単にいひいいい!?」


 だったらより丁寧に扱え。なんでお湯こぼしたらかかっちまうようなとこに置いてあるんだ。


 理由も聞いたし、そろそろマリネの処刑を止めようと魔法の出力を弱め始めた時に、レイが俺の肩をつついてささやいた。


「ハジメハジメ、何味のラーメンだったかその拷問魔法で聞き出しといて。今日の夜食の参考にしようと思うの」

「どうでもいいわ! そんなもん普通に聞け! わざわざ拷問させんな! 鬼かお前は!」

「あんたに言われたくないんだけど!?」


 いや俺のはお仕置きだから。……端から見れば一緒か?


 一応、ラーメンはとんこつ味だった事を聞き出し、マリネへの魔法を解除した。

 処刑から解放されたマリネは、ほっと安堵の息を漏らす……のではなく、もう終わりですの? と物足りなそうにしていやがった。クセになっちゃったのかよ。


 色々あって疲れたよ……。大半はくだらない事だった気がするが。


「はあ、もう帰るか。やっぱこう暗いと効率悪そうだ。明日の朝早くにまた集合しようぜ」

「そうねえ、お腹も空いてきちゃったし、帰りにファミレス寄っていきましょ」

「ふう……。しかし、一晩の間、暗黒結晶が魔物を呼ばずに大人しくしてくれているか少々不安ですわね……って、あら? 何か……気配が近くなっておりませんこと?」


 何?

 マリネにそう言われて意識を魔力に集中する。

 ……相変わらず身体の魔力が引っ張られている感覚がある。

 しかし、その引っ張られている方向が、先程よりも下になっている。つまり近くなっているということだ。

 俺達は少しだけだが山を登ってきたため、気配が近づくのは当然だろう。だが、俺達は先程のアホなやり取りの間、山を登っていない。

 にも関わらず、気配が近くなっている。ということは、

 

 近づいてきている。


「「「………………」」」


 俺達は寄り添いつつ気配に向かって迎撃体勢をとった。

 俺は既に変身済みのため、いつでも魔法を撃てるように魔力を充填する。

 二人は変身するためにマジカルジュエルを構える。


 咄嗟に迎撃体勢を取ってしまったが、ここではマズいと思い直し、二人に小声で指示をする。


「二人共、この気配が動くと分かったら合図を出すからすぐに来た道を戻ろう。正体の分からない奴相手にこんな暗くて狭くて足場も不安定な場所で戦うのは良くない」

「分かったわ」

「了解ですわ。しかし、自分で言っておいて疑問なのですが、本当に近くなっていますの? 勘違いという事も……」


 確かに暗黒結晶が動くという話は聞かなかったが、そもそもがよく分かっていない物体だ。何が起きても不思議ではないとマリネに注意を促そうとした時――


 気配が、こちらへ向かって動いたのを感じ取った。


「――っ走れ! ってもう走ってた!? 待ってくれええ置いてかないでくれええ!」


 俺が合図を送る前に二人は全力疾走で来た道を駆け抜けていた。

 先頭は意外にも俊足なマリネで、次いでレイ、大きく離れて俺だ。やばい、俺だけ犠牲になるパターンじゃね?


 2番手を走るレイがこちらへ振り返って叫ぶ。


「くっ、マリネったら早いわね! 負けられないわ! ねえハジメ、妨害はアリのルール!?」

「ねえよアホンダラ! ていうか競争じゃねえ! さっさと前向いて走れ! 転ぶぞ! あと俺を置いてかないでくれ!」


 脇目もふらずに、持ってきていたお菓子の入った袋も投げ捨てて走っているというのにレイ達に全然追いつけない。

 これが学校が終わったら即部屋に引きこもってゲームをし続けてロクに運動してこなかった代償か……! あとお菓子は後で回収しに来ないと! ポイ捨てダメ絶対!


 走り続けて数分、何とか気配に追いつかれずに小山のふもとへとたどり着けた。


「あっ、来た! ハジメ! ここなら戦闘大丈夫よね!? もう結界は貼ってあるんだけど!」


 どうやら先に着いたレイ達が戦闘準備を完了しておいてくれたらしい。

 俺は息切れでまともに言葉を発せないため、ジェスチャーでここなら大丈夫と答えながら、とある違和感について考える。


 ――どうにも、都合が良い。


 というのも、この一連の流れは俺達の都合が良い様に事が進んでいる気がするのだ。

 いや、今日だけじゃない、初日からそれは続いている。

 俺が魔法少女への勧誘を受け、そのすぐ近くに黒い巨人が出現し

 俺達が昼食を摂っている屋上に黒いウネウネが降りてきて

 暗黒結晶がありそうな場所に着いて間も無く暗黒結晶と思われるものを感知し――


「っ魔物警報! ハジメ、気をつけて! 出現場所は――」


 そして、戦いやすい場所に出るのを見計らったように魔物が出現する。


 魔物の出現場所は、当然――   

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