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奇妙な魔法少女たち  作者: みずゆめ
13/22

十話 暗黒結晶

 ゾンビ達を倒した次の日の昼休み、俺達魔法少女3人は昨日と同じく屋上で昼食をとっていた。

 例のごとく無断侵入だが、魔法でどうにか出来るからもうどうでもいい。


 俺が魔法少女になって3日目で、魔物と戦闘をしたのは4……いや3回目だ。よく考えたらゾンビは魔物じゃない。

 どの戦闘でも俺は指示出し係だった。俺が回復魔法使いだし、他二人が適当に動いてアテにならなかったのもあるが。

 そして感じたことは、情報の不足だ。

 何も知らないから後手に回り、状況が悪くなる。

 まあ、先手を取ったとしても魔法を使えないのが一人、魔法を使わない方がいいのが一人、魔法を使えるが敵を倒せないのが一人のパーティでどうしろって話だが。

 しかし、それでも知っているのと知らないのでは違いが出るだろう。


 だから、俺はきっとおそらく多分それなりに少しは知識があるであろう魔法少女の先輩方に教えを請うことにした。


「なあ二人共、魔物って他にどんな奴がいるんだ? 今後の参考にしたいから教えてくれ」

「知らなくてもいいんじゃないの? 行き当たりばったりのほうが緊張感出ていいでしょ」

「教えてほしければ下着姿での自撮り写真を献上なさい……もちろん変身後の姿ですわよ」


 なんなんだよこの先輩達。

 あとマリネ、お前にはお望み通り、変身後のもっこり下着画像を送りつけてやろう。


 が、ここでカッとなって怒鳴ってしまっては余計にこじれるだろう。付き合いは短いがそう断言できる。

 だから、下手に出て二人をおだてる方向で聞こう。


「歴戦の魔法少女である二人の武勇伝を聞いてみたいなって思ったんだ。さぞかし格好いいだろうなって」

「しょーがないわねえ! 108ある激闘のうちのどれを話してあげようかしら!」

「うふふ。ハジメさんはなんだかんだ言いつつも、しっかりわたくし達のことを尊敬してらしたんですのねえ。このツンデレさん」


 なんなんだよこの先輩達。

 まあいい。とりあえずどんな魔物と戦ってきたのかを聞いてみた。


「うーん、ちっこいのが多いわね。花みたいなやつとか、石みたいなやつとか」

「虫ほどの大きさの子がいて、知らないうちに踏み潰していたこともありましたわね」


 ほうほう。


「そいつらはどんな攻撃をしてきたんだ?」

「わかんない。先手必勝、トゥインクル・アイアンクローで一撃だったから」

「わたくしは自分の人形たちの相手で手一杯なことが多かったですわ」


 うーん……。

 とりあえずマリネはもういいかな。

 レイに聞こう。


「レイ、こいつは手強かった、みたいな奴はいなかったか? 俺の知らないやつで」

「んー……。夜のマリネのゾンビ達が一番ヤバかったわね。私が初めてダウンを取られた相手だったわ」

「最終的に明け方まで逃げ回って、朝日でトドメをさしましたわね。あ、ゾンビじゃなくて人形ですわよ」


 そっか……。確かに夜のゾンビは知らないけどそうじゃないんだよ。それ元をたどれば味方のだからな。敵を知りたいんだ。

 まあ知っておいて良かった情報だ。夜ではマリネの魔法発動を禁止しよう。


「黒い巨人みたいなのは今までいなかったのか?」

「うん、いないわ。あんなに強いのは初めてだったわね」

「あの黒いウネウネもかなり強い方でしたわねえ。急でしたので驚きましたわ」


 眉間にしわを寄せてうなる二人。

 その様子からして本当に強かったのだろう。

 実際、自分も戦闘したからその強さは知っている。ウネウネの方はほとんどゾンビが倒していたけども……。


 今までの話を少し整理し、あることに気がついた。


「……お前らって今まで一撃で倒せるような小さい雑魚としか戦ってきてなかったってことか?」

「「……」」


 目逸らして黙っちゃったよ……。

 ……魔物について、あまり参考になりそうにないな。


 やがて、レイがぼそっと呟くように反論してきた。


「……魔法少女の仕事は、魔物を倒すことだけじゃないし」

「あ、そうですわ! わたくし達は暗黒結晶が出現したらそれを発見し、破壊ないしは封印するのも務めなんですの!」


 レイの話にマリネも乗っかってきた。

 

 ――暗黒結晶。


 ……おかしいな、何かすげえ重要なものっぽいんだけど聞いてないぞ?

 話してないこと多すぎるだろ。いや、違うか。そもそも忘れていた説が濃厚だ。あ、とか言ってたし。


 二人への信頼度がどんどん落ちていく。

 なんなんだよこの先輩達。


「その暗黒結晶ってのは何だ? ちゃんと後輩に手ほどきしろポンコツ共」

「し、失礼な後輩ね! ちょっと忘れちゃってただけよ! 暗黒結晶ってのはね……マリネ! 解説役を譲るわ!」

「え、ええ!? ええと、暗黒結晶とは、魔物を呼び寄せる性質を持つ石のことですの。どこからともなく現れては周囲に魔物を呼んでしまうので、これを見つけ次第無力化するのが望ましいですわ」


 マリネの説明にそうそうそんな感じ、と頷くレイ。


 そんな厄介なもん忘れんなよ……。この町にもあるんじゃないだろうな。

 不安がる俺を安心させるようにレイが補足した。


「でもね、暗黒結晶って滅多に出ないものらしいわ。それに、そもそも結晶がなくても魔物は出現するしね。あると出現しやすくなるくらい?」


 そうなのか。暗黒結晶は魔物の出現の原因というわけでなく、あくまで出現率を上げるものなのか。

 厄介であることには変わりはないが、滅多に出ないというならあまり気にしなくてもいいのかもしれない。


 俺が少し安心していると、マリネが聞き捨てならないことを口にした。


「そういえば、周囲の魔物が強くなったという報告もあるって聞いたことがありますわね。まあ、こんな辺鄙な所には関係ないでしょうけど」

「ふーん……ん!? いやそれ関係あるだろ!」


 俺が突然大声を上げたためか、驚いた顔でこちらを見る二人。

 しかし、見るだけだ。何騒いでんだこいつ、とでも言いたげに眉根を寄せている。

 未だに分かっていない様子の二人に説明する。


「黒い巨人とウネウネってかなり強かったんだろ? そんなもんが普通、急に2日連続で出てくるもんなのか? その暗黒結晶とやらが影響してるんじゃないのか?」

「「……!」」


 レイとマリネはハッとして顔を見合わせる。

 驚いていたのも一瞬、二人はすぐに折りたたみ式の携帯電話のようなもの……”WHS”を取り出して何らかの操作をしている。


「んー……マリネ、この近くにそんな報告あったっけ?」

「いいえ、なかったですわね。そもそも、暗黒結晶は魔物と違って”WHS”の魔力検知に引っかからないらしいですわよ」

「なにそれずるいわね。んー、クロを待ってから動いたほうがいいかしら」

「一応、近くにあれば分かるらしいですわ。身体の魔力が引き寄せられるような感覚がするとかなんとか」


 クロっていうのは二人の使い魔の名前だったっけ。……過労で倒れたという。


 いつになく真剣な表情で話し合う二人。

 いつもこんな感じならもう少し尊敬できるんだけどな……。

 新人で分からないことが多い俺は黙って二人の会話に耳を傾ける。蚊帳の外でちょっと寂しい。


「とりあえず放課後に町内一周パトロールね。近くにあれば魔法少女的第六感で見つけられるでしょうし」

「ええ。わたくしの冴え渡るセンサーで見つけてみせましょう。まずは近くの小学校からうへへ」


 それってつまり、しらみつぶしで行き当たりばったり作戦だよな。

 あとマリネ、お前は別のものを見つけに行くつもりだろ。


 このままだと捜索範囲が広そうだから、もう少し範囲を絞りたい。それとマリネを抑えておきたい。


「なあ、近くにあるなら分かるってんなら、俺達が普段通るような所にはないんじゃないのか。小学校もすぐ近くにあるけど感知できないから後回しでいいだろ」

「な!? な、何を言ってるんですの……? 確かに暗黒結晶がある気配はなさそうですが、校内の奥とか更衣室とか女児のスカートの中にあるかもしれませんわよ。だから行くべきですわ」


 お前は捕まれ。


「あと、暗黒結晶は魔物を引き寄せたりするんだろ? だったら魔物が出現した位置の周辺にあるんじゃないか。どれも俺達の高校辺りだよな」

「やっぱり小学校……おふっ!?」


 しつこいマリネの脇腹にレイの肘が突き刺さった。

 レイに怒られるって……。


「で、俺達が感知できないとなると、高校から少し外れた……あっちの小山とか」


 この町は田舎というほどでもないが、都会というわけでもないため、自然も普通にある。

 駅前や通学路は舗装されているが、外れのほうは自然が多い。 

 そんな外れにある小山のほうには通学時に行くことはないので、暗黒結晶に気が付かなかったのかもしれない。


 まあ、小山にあるとは限らないし、そもそも俺達がちゃんと暗黒結晶を見つけられるかも問題だ。

 騒いでいて気が付かないとかあり得そう。


 しかし、小学校に行くよりかはいいだろう。マリネがアレだからな。

 レイは俺の提案にうんうんと頷き


「よし、それでいきましょ。私レジャーシート持ってくるから、おやつ持ってきてね!」


 ……ん?

 ああ、長期戦になるかもしれないから補給が必要って事か。

 一瞬遊びに行くのかと思った。


「ピクニックなんて久しぶりね! 楽しみになってきたわ!」

「待てえい! どういう事だよ!?」


 遊びに行くようだ。

 レイは目をぱちくりして俺を見る。

 ちょっとかわいらしいのがすげー腹立つ。

 

 レイは一瞬間を置いたあと、得心がいったというような様子で頷き、人差し指を立てて先生のような口調で話す。


「おっほん、ピクニックというのはだね、ハジメ君。あのー、森とか川とか、えーと何か自然の中でお弁当とかおやつを食べたり、あー、皆で遊んだり……」

「ピクニックは知ってるわい! あと先生っぽくしたいならもっとしっかり話せよ! そうじゃなくて、暗黒結晶を探して壊しに行くんだろ? そんな遊び気分でいいのかよ」


 暗黒結晶を発見次第、無力化するのが魔法少女の務めのうちと言っていた。

 なのでこれから遊びに行くわけではない。断じて。多分。


 しかし、レイはキョトンとした顔で


「いや、暗黒結晶を探しはするけど、壊さないわよ?」

「え? 何でだ?」

「どうしてですの?」


 レイの意外な言葉にマリネまでもが困惑している。


「だってほっとけば強い魔物がわんさか出るんでしょ? 腕がなるわね!」

「そんな理由かよ! 却下だ却下ぁ!」


 強敵と戦いたいだけかい!

 続いてマリネも畳み掛ける。


「それに腕がなるって、あなたそんなに強くないじゃありませんの!」

「なによおー!? 追い詰められればきっと何かすごい力が覚醒するわよ!」


 こいつもダメな部類だ……。いや、分かっていたことだったか。

 不安だ……。このメンバーで得体の知れない暗黒結晶をどうにかしなければいけないのか。


 俺が途方に暮れていた時、レイが衝撃的なことを話した。


「でもぶっちゃけ、暗黒結晶壊せないじゃない? 封印の仕方も知らないし。だからとりあえず見つけて、そういう事に詳しいクロが来るまで見張るしかないでしょ」

「……え? そうなのか? 封印はともかくとして、壊せないのか?」


 本当のことかと、マリネに問いただす。

 マリネは冷や汗を流しながら言った。


「……超強力な攻撃魔法なら壊せるらしいですわ」


 ……そうか。魔法で壊すのか。

 なるほど。俺達には無理だ。


 なぜならまともに攻撃魔法を使える奴がいないからだ。


 俺は回復魔法と強化魔法。マリネは人形生成魔法。レイは問題外。

 全員、結局は物理攻撃だ。

 もしかしたら俺の強化魔法とマリネの人形は魔力を帯びているとかで攻撃魔法に含まれてくれるかもしれないが……。


 ”超強力”な攻撃魔法ではない。


「「「…………」」」


 全員黙りこくってしまい、場に重い沈黙が流れた。

 使い魔がいなければ務め一つまともにこなせないとは……。

 ……虚しい。学校の屋上に吹く風の音が虚しさをより引き立たせる。


 よし。


「……ピクニックにするか。おやつはリッチに500円までにしよう。でもあんまり買うなよ、晩御飯入らなくなるからな。」

「わああ! ダメよハジメ! 現実逃避しちゃ! 戻ってきて!」

「そうですわよ! 泣きたいのはこちらも同じですわ!」


 お前らが言うなお前らが。

 お前らがポンコツなせいで……いや、俺も攻撃魔法を使えないから同じか。


 かなり今更だが不安だ……不安すぎるぞこのメンバー。

 なんなんだよこの魔法少女達……。 

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