新しい出会いが増えてくる赤いハイビスカスだ
LAでの予備オーディションをパスしたことで大物プロデューサーに是非にと請われ、
リョウのブロードウェイ進出は3年後の新作公演もので主役級、アメリカ軍兵士と日本軍兵士が孤島に残され生き抜きながら敵味方の間柄からお互いの家族のことを話す友人になっていき、その過程で生と死と戦争の意味を問う作品、への出演を許諾することにした。
ただ、リョウの英語は日本兵にしては上手すぎるがそれはコントロールするとして、歌うための声量が少ないのでレッスンが必要ということで、専属のボイストレーナーが3年間アメリカから派遣されるという。
体重も変わらぬよう健康管理し、薬物使用や警察沙汰があれば契約不履行として違約金が発生する契約だが、出演料や同行スタッフの選考、使える経費は日本との契約と比べると破格だった。
さらに、リョウの少しだけ八重歯がある歯並びを矯正することも条件に入れられていた。
日本兵が低身長で出っ歯か八重歯と決まっていたのは昔の話であり、しかもこの日本兵は知性もあり生家では仕舞を稽古しているような品格のある裕福な家の息子という設定なので品の良いリョウが選ばれたのであり、
やはり観客がストーリー外で疑問をもたないよう、歯は美しく手入れされていなければならないとされた。
その話を説明すると、スドウとヒロがすぐにケントで世話になった歯科医のレイに連絡をした。
レイは千葉県の大学病院で口腔外科に勤務しているが、国際線CAからの転職ということで教授からUCLAの歯科美容外科チームに推薦転勤する話が出ているところだった。
レイは30歳を少し過ぎていることやCAをしていたことから人気俳優のリョウを前にしてもなんら緊張することもなく、リョウも接しやすい。
レイは会ってもいないのにウエストエンドの時を思い出してか、MTMという部分矯正で8ヶ月程ワイヤーで動かせばリョウの八重歯はキレイに並ぶだろうと言ってくれた。
リョウはレイが自分の目より歯を見ているなぁと思ったのを思い出しておかしかった。
リョウは、レイのことを思い出すと笑顔になる自分にはまだ気がついていなかった。
日本に帰ったらさいたまの家に京都の無濾過特別純米大吟醸を飲みに来ませんか、と誘ったところ、想定どおり、リョウが最後までいう前に大喜びで飲みたい、という嬉しそうな声がした。
ユウコは電話で話すリョウが嬉しそうな横顔を、安心するような微笑みで見つめていたが、
リョウはユウコが3日ぶりに現れていることには気が付かなかった。




