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ユウコとの本当の別れはまだ先延ばしにしたい

ブロードウェイのオーディションは日本とは異なり、事務所や芸能会社が枠を持っているところに売れている役者や売りたい役者をはめてくるのではなく、

作品の表現者としてイメージに近い者ならたとえ無名であっても掛け値なく登用し、ファンの付いた有名俳優であっても力がなければ採用しない。


リョウくらいの、母国では有名若手俳優でも作品とのイメージや他の出演者との力量の差によっては余裕で落とされる、大切な作品のための人選だ。


アメリカで何度もオーディションを受けているうちに、リョウはいつも視界に入ってきている日本人らしき男の子の存在に気づくようになったのだが、今回その子はリョウのすぐとなりに黙ってスタンバっていた。


これは多分ユウコがそうしているのだろうと思うリョウは、もしその男の子が話しかけてきたら無下に扱うことなく関わってみようと思っていた。


オーディションではその場で次回の打ち合わせへの参加に招待されるとパスで、リョウはLAでなくブロードウェイのシアターにいつ来られるか聞かれたので、早速スドウと日程調整が必要となった。


建物を出ずにパティオ風のスペースでスドウと話していると、後ろに日本人らしき男の子がリョウのセルフォンが終わるのを待っていた。


やっぱり。


石のベンチに笑顔のユウコが腰かけているのを目で確認していると、NYC日程を調整することが決まりスドウから電話が切られた。


一緒にテレビドラマを見ているうちにふと見えなくなったユウコがここに来ているのは嬉しいが、

確実に、日ごと短い時間しか見えなくなってきている。


月夜の会話もたいしたことは話していなかったのにユウコは本当に消えてしまうのだろうか、と、考えたくないことを考えていると日本語で声をかけられた。


オーディション会場にいた男の子はやはり日本人、岐阜県出身の県会議員の息子でヒロといい、日本の有名私立高校を中退してアメリカの系列高校に転入したがブロードウェイに出たくて学校にはろくに行っていないので留年しているという。


ヒロはオーディションには落ちたがスタッフとして研修採用したいがどうかと言われたところ、自分の勉強のためにもファンであるリョウのためのスタッフになりたいという。


ユウコの思惑なので是非はともかく、スタッフにしてヒロを身近に置くのに、どんな条件を付けるのが良いか、リョウは頭の中で探っていた。


彼が将来大学に進みたいのであればこのまま日本に戻って高校卒業資格を取れば良いし、単位を積み重ねる通信制の高校でもよいのだが。


LAには政界にデビューするべき勉強の嫌いな2世や3世の子供達がたまにいるのだが、ヒロの親がそのつもりならば、こちらでの成績や卒業の有無の経歴も今は容易くばれてしまう時代なので、きちんとしておいてやりたい。


英語を文化から理解するにはアメリカにいた方が良いし、ハリウッドもブロードウェイも規模は世界だ。


しかし、

ユウコは自分のそばにヒロを置こうとしているようで、このことが何より重要だ。


リョウはひとまずウエストエンドの家にヒロを連れて帰ることをスドウに連絡して、安全なホテルのロビーに移動して2人で迎えの車を待った。


ヒロは19歳で、日本からホームステイ先を決められてこちらの提携高校に通っていたがなかなか身が入らず2年留年していて、日本風にで換算すると卒業まであと22単位足りないという。


こちらにきてからホストファミリーの元女優のマムがヒロをあちこち観劇に連れ回して、夢もやる気もなにも無かったヒロに役者への夢を植え付けてしまったようだった。


ユウコはこの子を僕が育てることを望んでいる、ということなんだね?


リョウはユウコの骨粉入りの指輪に触れながら、少し目を閉じて心の中で尋ねた。











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