セロフィート
「 全く──、マオは懲りないなぁ。
ボクに内緒でジャムをパン屋へ持って行くなんて…。
売ってる事をバレてないと思ってるんだから、マオって可愛いよねぇ。
これには相応の『 いいこと 』をしてあげないとね? 」
「 山菜採りに行って来る! 」と言い、背中に大きな籠を背負い1人で山へ出掛けたマオを笑顔で送り出したセロフィートは、マオが惚れ込んでいるセロフィートの演技を止めると本来の自分へと戻る。
椅子に腰を下ろしたセロフィートは愉快そうに笑いながら、「 どんな『 いいこと 』をしようか── 」と紅茶を飲みながら考える。
セロフィート
「 そう言えば──、マオは茸が好きだったね。
今回は “ キノコパーティー ” にしようかな。
──先ずは茸の胞子を飛ばす生き物が必要だね。
二足歩行で歩いて移動する茸の生物を作ろうか。
簡単に倒されても困るし、どうせなら強い怪物が良いよね。
うんと強い怪物と言えば、怪物の頂点に君臨するドラゴンにしよう。
全身に胞子を飛ばす茸を生えさせたキノコドラゴンなんて面白いかもね。
飛ばした胞子を吸い込んだ生き物がキノコ怪物に姿を変えても面白いな。
≪ ラチルミダ王国 ≫内に結界を張って、胞子が他国へ流れるのは防ぐとしようか。
キノコパーティーは、ボクのジャムを勝手に持ち出して、人間へ売ってるマオへの見せしめだからね。
──キノコドラゴンを国内の各地に配置させたら、夜間に大量の胞子を飛ばさせよう。
胞子の付着した飲食物を体内へ摂取すれば、時間は掛かるけど確実にキノコ怪物へ姿を変えるだろね。
夜間に胞子が活性化するようにしようか。
睡眠中にキノコ怪物に変わるようにすれば、暫くは原因不明で通せるかもね。
良い感じにキノコ怪物が国中に増えたら、夜間内に大量投入させよう。
キノコ怪物に支配される王国があっても良いよねぇ?
あちこちの山や森にもキノコドラゴンを出没させて胞子を飛ばさせよう。
──どうせならキノコドラゴンも増えるようにしようかな?
胞子を飛ばし終えた茸を地面に落ちるようにして──、地面に根を張らせたら茸を生えるようにして、その茸を食べた人間や動物がキノコドラゴンになるようにしようか。
キノコ怪物だけじゃなくて、キノコドラゴンにも襲われるようにしないとね。
キノコ怪物も増えるし、キノコドラゴンも増えるし、キノコパーティーにしては上出来かな?
──キノコ怪物の名前も決めないとね。
何が良いかな? 」
セロフィートは実に楽しそうにマオの為に開く “ キノコパーティー ” の計画を立てる。
計画と言うよりも即興の思い付きと言った方がしっくり来そうな計画を立てたセロフィートは早速行動に取り掛かるが、これと言ってセロフィートのする事は無かった。
何故ならば大概の事は全て〈 テフの源みなもと 〉を原げん動どう力りょくとして動うごく〈 器うつわキ人にんニン形ぎょうカ 〉にさせるからである。
セロフィートは暢のん気きに紅こう茶ちゃを飲のみながら、好すきなだけ読どく書しょに勤いそしんでいるだけで大たい抵ていの事ことは進すすむのである。
セロフィート
「 ──どうやら準じゅん備びは整ととのったようだね。
開かい幕まくしようか、愉ゆ快かいで楽たのしいキノコパーティーをね 」
セロフィートが合あい図ずを出だすと、〈 器うつわキ人にんニン形ぎょうカ 〉に依よって国こく内ないに配はい置ちされたキノコドラゴン達たちが一いっ斉せいに大たい量りょうの茸キノコの胞ほう子しを飛とばし始はじめる。
生せい物ぶつをキノコ怪かい物ぶつモンスター化かさせる恐おそろしい茸キノコの胞ほう子しは風かぜに乗のり≪ ラチルミダ王おう国こく ≫全ぜん土どへ拡かく散さんされて行いった。
セロフィート
「 茸キノコの胞ほう子しを飛とばすのはマオがジャム売うりを止やめる迄までにしようかな。
全すべてはマオ次し第だいってね! 」
マオ
「 ただいま~~、セロ! 」
セロフィート
「 お帰かえりなさい、マオ。
山さん菜さいは採とれました? 」
マオ
「 まぁな!
見みろよ、大たい量りょうだろ!
オレ、頑がん張ばったんだ! 」
セロフィート
「 ふふふ…。
泥どろだらけですね。
温おん泉せんで汚よごれを落おとしてください。
山さん菜さいの仕し分わけは済すませときます 」
マオ
「 有あり難がとな、セロ。
山さん菜さいも似にたのがあるから区く別べつが付つかなくて摘つみ採とる時ときに悩なやむんだよな… 」
セロフィート
「 食たべられる山さん菜さいが多おおいと良よいですね。
次つぎはワタシと行いきましょう。
動どう物ぶつ達たちの安あん否ぴ確かく認にんもしたいですし 」
マオ
「 そ……そうだな…。
遊あそびで動どう物ぶつを狩かる奴ヤツ等らには御お灸きゅうを据すえてやらないとだもんな? 」
セロフィート
「 マオ、籠カゴを預あずかります 」
マオ
「 うん。
じゃあ、仕し分わけは頼たのむよ 」
セロフィート
「 任まかされました♪ 」
マオは山さん菜さいの入はいった籠カゴをセロフィートへ手て渡わたすと温おん泉せんへ入はいれる浴よく室しつへ向むかって走はしった。
セロフィート
「 ──マオらしいね。
殆ほとんど食たべられない山さん菜さい擬もどきを採とって来きてくれるんだから…。
特とく技ぎかな? 」
セロフィートは可お笑かしそうに笑わらいながら、マオが摘つみ採とって来きた山さん菜さいの入はいった籠カゴを厨ちゅう房ぼうへ持もって行いくと、丁てい寧ねいに仕し分わけを始はじめるのだった。