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『異世界転生は終了しました』  作者: 秘灯麦夜
第二章 ── 脱走者
14/15

セシリア

ツェツィリーア=英語名でのセシリア

セシリア






 ◇





 河川敷公園の土手に棄てられていた、一匹の子猫。

 それが私だった。

 私を棄てた人たちのことは、よく覚えていない。

 無責任に「いいひとにひろわれてね」とだけ言って、去っていく姿を目に敷いたのが10日も前のこと。

 おいておかれたエサ皿やミルクはとうに尽きた。

 ガリガリに痩せていき、末はカラスの餌にでもなろうかという状態にあった。

 あのまま放置しておけば、この世の幸福も何も知らずに終わるはずだった命を、救ってくれた少年がいた。



「赤ん坊用の猫缶とミルク、近くのコンビニにあってよかったよ」



 おいしそうな臭いに、私は涙が出そうなほど大喜びだった。



「おいしい?」



 そう問いかけkる彼に『すごくおいしいよ!』と答えられることが出来たら、どんなによかったことだろう。

 翌日、彼は再びやってきて、わざわざ調べてきてくれた保護団体のもとに私を運び、里親募集にかけてくれた。

 おかげで私は、素敵なおじいちゃんおばあちゃんの家の子になれた。

 首輪には英語で「セシリア」と刻まれ、普段は「セシーちゃん」という名で呼ばれるようになった。

 黄金のようなキジトラの毛並みを梳いてくれて、おいしいごはんとお水を用意してくれて、世界にはこんなにも優しい人たちがいることを知った。



 おじいさんとおばあさんの家の子に慣れて、本当に幸せだった。



 そこまではよかった。



 セシリアは、ある日、おじいさんたちの家の周りをひとりで散歩していた時。



(あ、あのひとだ!)



 忘れもしない、自分を保護してくれた高校生の少年が、疲れた顔でコンビニから出てきた。

 彼に恩を返したい。

 彼に御礼が言いたい。

 彼に一目だけでも会いたい。

 その一心で、私は…………とんでもない失敗をしでかした。



「ッ? ──おい…………危ないぞ!」



 急に道路を渡ろうと駆け出した猫を見て、彼が血相を変えて飛び込んできた。

 振り返ると、大型トラックのブレーキ音が、甲高く夕焼けの空に響く。

 物語であれば、一人の犠牲者も出すことなく自体は落着したかもしれないが、私も、そして彼も、車に轢かれて命を落としてしまった。










次で完結

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