【97】電磁場をもって、電磁波を制す
「あの頭に付いているアンテナから、パルサーからの電磁波に同期する位相の電波を出して、体を守っているようです」
サクラが説明した。
「電磁波のバリアで、電磁波を防いでいるのか」
通信のタレク少尉が言った。
「誰かがここで壊れないように開発してるんだよな?」
副長が言った。
「そうですね。HDを総合的に管理している所があるはずです」
サクラが言った。
キィーーーーーン!
カン!カン!カン!
「ったく、ハエみたいにうるせーな」
「クラスター発射!」
シュバーーーーーンッ!
ババババババ、ドーン!ドドーン!ドドドーーーン!!
「こちらCIC、迎撃終了です」
「ご苦労。被害状況の確認を」
「アイアイサー」
「また1日待って、夜になってから調査だな」
俺は、言った。
「サクラ、この星の自転は何時間だろう?」
「85時間です」
サクラは答えた。
「よし。まだ第一の目的が達成されていないからな」
俺が言うと、
「人間の痕跡ですね」
サクラが俺の言いたい事を引き継いだ。
まあ、夜側の調査を進めていけば、85時間後にはまたこの基地に巡ってくる。その間に人間の痕跡がありそうな所があればいいのだが。
* * *
「こちら[ドク・ワン]、[もがみ]応答せよ」
「こちら[もがみ]、どうぞ」
「やっと通信が回復したようだな。状況はどうなっているんだ?」
ドック船の船長は情報収集ができず、何も分からないことにイラついているようだ。
「我々も応援したのですが、先遣海兵隊は全滅したようです。またHDで構成した調査部隊1個大隊も全滅です」
俺は、正直に言った。
「なんだと?!そんなことがあり得るのか?司令部に連絡はしたのか?私はどうすればいいんだ?」
人間、混乱すると、何をどうすれば良いのか自分で判断できなくなるようだ。
火星の山のふもとの狭いハンガーから馬鹿デカいドック船を自力操艦して出せるほどの技術はあるのに、パニックに陥ると何も判断できなくなる好例である。
「と、と、とにかく、次の連絡船が来るまで待ってみよう」
船長は、自分から連絡船を出すことさえ考えられないらしい。
「どうだ?怪しそうな所はあるか?」
俺は、レーダー担当のナラル中尉に聞いた。
「今は、ほぼ海上です」
中尉は答えた。
「何か気になる通信は捉えたか?」
今度は通信担当のタレク少尉に聞いた。
「色々な電波が飛び交っています。通信だけを抽出しても多言語ありますが、電気的というか暗号化されてるというか」
少尉は言った。
「暗号化?」
「人間の肉声のようなものは聞こえないのか?」
俺は、少尉に聞いた。
「ほぼHD同士の通信でしょう」
「で、何故、暗号化する必要がある?」
「さあ?何故でしょう?」
少尉は、肩をすくめた。
「管理者が人間だったとしても、音声ではなく、端末入力だったら、人間の痕跡は消せるな?」
俺は、少尉に確認してみた。
「あ、はい。人間が音声やり取りしなければ」
少尉は答えた。
「内容を精査して、命令や指示を、出す方と受ける方とに分類できるか?」
「もちろんできます」
「よし。それで分類し、可能なら場所まで特定してくれ」
俺は、少尉に命じた。
「他の艦は、惑星の公転に同期させてずーっと陰に潜んで航行してるか?」
今度は、サクラに聞いた。
「はい」
サクラは、それしか答えなかった。
「なあ、サクラ。大丈夫かい?」
「何がですか?」
「元気が無いからさ」
「私は、不具合箇所はありませんが」
元気って、そういう意味じゃないんだけど。
「そっか。じゃー、不具合が出たら、言ってくれ」
俺は、そうとしか言えなかった。
「航海長!そう言えば、特務護衛艦[たちばな]はどうした?」
「何度か連絡を取っているのですが、全然通じません」
ノラン航海長が答えた。
「場所は分かっているのか?」
「今、真っ昼間の所です」
「そうか。一応、呼び出しを続けてくれ」
たぶん、生存者は無理だろう。
「副長、[ドク・ワン]には、まだ艦艇が残っているはずだよな?」
「そうですね。特務護衛艦1艦と、魚雷艇4艇を使ったはずです」
「魚雷艇を拝借するか」
「え?」
副長は、怪訝な顔をした。
「航海長、10人くらい集めてくれ」
俺は、ノラン航海長に言った。
「どうするんです?」
「[ドク・ワン]から魚雷艇を借りてくる」
「はいー?」
「惑星調査に、ミサイル駆逐艦じゃデカすぎる」
「あー、なるほど。分かりました」
航海長は、ブリッジを出て行った。
艦底の発着所に集まったのは、24、5名だった。
「とりあえず、魚雷艇を2隻と、たぶん攻撃機があるはずだから、それもな。船長には話を通しておく予定だが、あくまでも予定だ。話し合いが決裂したら、
仕方ない、
かっぱらってくるだけだ」
[もがみ]の艦底の発着口から、盗賊を乗せた舟艇が発進し、[ドク・ワン]へ向かった。




