【93】海兵隊救出へ、[もがみ] 出航
「こちら[ドク・ワン]先遣海兵隊現地司令部。レッド・リーダー、マドル少佐、応答願います」
「…………」
「こちら[ドク・ワン]先遣海兵隊現地司令部より、レッド・リーダー、マドル少佐、応答願います」
「…………」
「ダメです。応答ありません」
[先遣海兵隊現地司令部]の通信担当士官が言った。
「[たちばな]はどうだ?」
「こちら[ドク・ワン]先遣海兵隊現地司令部より、特務護衛艦[たちばな]、応答願います」
「…………」
「こちら[ドク・ワン]先遣海兵隊現地司令部より、特務護衛艦[たちばな]、応答願います」
「…………」
「ダメです。全く反応がありません」
「一体、どうなってるんだ?」
「海兵隊の増員を要請しますか?」
「通信用潜宙艦は、今行ってしまったばかりだ」
[ドク・ワン]の船長は困ってしまった。
「第1遊撃機動艦隊に要請しては?」
士官が言った。
「いや、その決裁は下せない」
たかがドック船の船長に、そんな権限は無い。
* * *
「司令、惑星で爆発が起きているようです」
サクラが言った。
「爆発?海兵隊の戦闘か?」
「分かりません。夜側なのに、電波状態が非常に悪いです」
「何も連絡がとれないのか?」
俺は、聞いた。
「はい。まるで……、まるで、妨害電波のようで………」
「んー!一向にラチが明かんな!!」
何もできないというのは、イラつく。
「お気持ちは、よく分かります」
「行くしかないか」
俺は、意を決した。
「どうやって?」
サクラが聞いた。
「[もがみ]でさ!」
「あなたのような人を、昔の地球では[アウトロー]と呼んだらしいですよ」
「それは、俺の本名だよ」
「ブリッジより機関、エンジン、アイドル」
「え?艦長?」
「いけないのか?」
「あ、いえ! エンジンアイドル、アイ!」
マテラ機関長は驚いた。
フィーーーーーーーーン
エンジンが回転し始め、音と振動が伝わってきた。
スーーッ
ドアが開いて、副長と航海長がブリッジに来た。
「艦長!どうしたんですか?」
戦術長や測距長もやってきた。
みんなの顔を見て、俺は言った。
「先遣海兵隊と連絡がとれない。
安否の確認もできない。
[ドク・ワン]は動く気配が無い。
じゃあ、どうする?」
「やることは1つでしょう」
「この[もがみ]は、艦長の船です」
「私たち全員が乗った、艦長の船です」
みんな、俺がなんと言うか待っている。
「よし、みんなで行こう」
俺は、言った。
全員が担当の席に着いた。
ピィー、フィー!
サクラが号笛を吹いた。
「艦長より達する。
本艦はこれより、第20番惑星へ先遣海兵隊の救出に向かう。各部署点呼をおこない報告するように。なお、緊急出航のため不在者がいてもやむを得ないものとし、これを咎めない。以上」
フィー、ピィーー!
「ブリッジより機関へ、エンジン出力50%」
「エンジン出力50%、アイ!」
「方位350、距離121,000、第20番惑星」
「艦、周囲、異常なし」
キュィーーーーーーン!
エンジン音が高くなる。
「サクラ、艦隊各艦へ、秘密回線で伝えておけ」
「了解しました」
「エンジン出力80%、速力3,000」
ノラン航海長が報告した。
「標識灯、探照灯、艦外灯火、全消灯!」
「距離80,000、レーダーに敵影なし」
「よし。両舷加速前進!」
「両舷加速、速力5,000、アイ!」
ピィーーーーーーーー!
《接近警報!接近警報!》
「ミサイル接近!、数2、距離70,000、速力10,000」
レーダー担当ナラル中尉が報告した。
「レーザー迎撃準備」
「レーザー迎撃照準、アイ!」
「艦長!ミサイル発射地点を叩いては?」
副長が進言した。
「あくまでも救出活動であり、交戦したとしても自衛のためである」
「はっ!分かりました」
副長は、納得した。
「ミサイル、距離30,000、接近中!」
「第1砲搭3門、不集束レーザー発射準備」
「不集束レーザー、アイ!」
「距離、16,000、間もなく射程圏内です」
「よし。5、4、3、2、1、てーーーっ!」
バシューーーーーン!
バシューーーーーン!
バシューーーーーン!
3発のレーザーが発射された。
不集束レーザーは、遠くへ伸びるにつれ、少し広がる。小さくて数がある目標に有効である。
ビカッ!!ビカッ!!
前方で2つの爆発光が見えた。
「レーザー、ミサイルに命中!排除しました」
レーダー担当ナラル中尉が報告した。
「よし、そのまま前進!」
「前進!アイ!」
惑星の夜側に見える明かりが増えてきた。光はかたまっていたり、バラけていたり、光の強さもバラつきがあれば、色も多種多様だった。
直線的な光は交通網だろうか。近付くにつれ、都市の輪郭がハッキリしてきたように思われる。




