【90】海兵隊先遣中隊、敵地上陸
「高度200メートル。海岸線は砂浜で、その奥に森があるようです」
パイロットが報告した。
「海岸の砂浜に降下!森へ散開して、状況確認!」
「アイ!アイ!サー!」
「高度100、降下します」
魚雷艇は、垂直降下を始めた。
「後部搬入口、開口」
機体後部の車両などの搬入口が開いた。
ヒュィーーーーーーーーン
バラバラバラバラバラバラ
エンジン音とローター音が重なる。
「高度3メートル!降下、グリーン!」
パイロットが叫んだ。
「降下!降下!ゴー!ゴー!ゴー!」
マドル少佐が指揮した。
4機の魚雷艇の後部搬入口から、隊員が飛び降りて走り出して行く。飛び降りてから足を伸ばすのが大変そうである。武器や装備も重そうだ。
魚雷艇は、着地はしていない。3メートルほど浮いたままホバリングして海岸の砂を巻き上げている。
「森へ入って、待機! 森で待機!」
「艇は上空待機!艇は上空待機!」
少佐は、隊員は森で、魚雷艇は上空で待機を命じた。
キィィィーーーーン!!
魚雷艇は上昇し、150人ほどの隊員は、森へ飛び込んだ。
キィーーン、ィーーーン、ィー、…………。
魚雷艇の音が聞こえなくなると、辺りは波の音だけになった。
クー、クー
ピロロロ
たまに虫なのか分からないが、小さな鳴き声がする。
「こちら、レッド・リーダー、各自、無事か?
周囲にケガをした者があれば報告せよ」
レッド・リーダーはマドル少佐である。
「アルファ、クリア」
「ブラボー、クリア」
「チャーリー、クリア」
「デルタ、クリア」
4小隊とも無事なようである。
「こちらブラボー、2時の方向から何か来ます」
B小隊が連絡を入れてきた。
全小隊が地面に体を伏せ、耳を澄ました。
地面に這いつくばっていると、背中の装備とヘルメットの重さで、体が潰されそうだ。
カサカサ、ガサガサ
B小隊の前方で物音がした。
シュイーーン!
プシュイーーン!
シュイーーン!
シュイーン!
前方の何者かがレーザー銃を撃ってきた。
「撃て!!」
少佐が命令した。
シュイーーン!
バシュッ!バシュッ!
シュイーン!!
バシュッ!
辺りは眩い光と音に包まれた。
シュイーーン!
「うわっ!」
バシュッ!
バァーーーーン!!
ドドッ
「くそっ!」
シュイーーン!
バキバキバキッ!
ドドドーン
レーザーが当たり、
銃弾が当たり、
敵が倒れ、
見方が倒れ、
木に当たり、
誰かの叫びが聞こえ、
森は戦場になった。
バシュッ!
バシュッ!
……………
シューッ
プスプスッ
………
「撃ち方やめっ」
大佐は、小声で伝えた。
「うううっ」
「くっそ、痛てぇー」
「ケガ人を見てやれ」
小隊長が小声で指示している。
バシュッ!バシュッ!バシュッ!
ズバーーーーーン!!
突然、銃声と爆発音がした。
「どうした!!」
少佐が叫んだ。
「こいつです!」
駆けつけると、1人の隊員が地面に銃を向けていた。
そこには、破壊されたHDが転がっていた。
「こいつが撃ってきたのか?」
少佐は隊員に確認した。
「これを見てください」
隊員はもげ取れたHDの片腕を見せた。
手の甲にレーザー発射装置が付いている。
5本の指+レーザー銃、という『手』である。
ガサガサ
隊員が音の方に銃を向けると、
「おい、おい、おい」
他の隊員や、小隊長だった。
「こいつか」
「しかも、なんだこりゃ?」
1人の隊員がHDの頭を蹴飛ばした。
頭の先は尖り、金属の針金でできた円盤状のアンテナのようなものが付いていた。
「ケガ人の手当ては終わったか?」
少佐が確認した。
「死んだ奴は、返事をしろ」
ブラボー・リーダー、つまりB小隊長が言った。
「はーい」
「俺もっすー」
何人かの死人が返事をした。
「お望みなら、殺したるぞ」
小隊長が言った。
「11時の方向に建物があります」
レーダーを持った隊員が言った。
「他の隊は、どのあたりにいる?」
「アルファもチャーリーも、1キロ以上離れています」
「よし、ではその建物に行ってみよう」
ブラボー小隊は移動を始めた。
「全員、目の感度を上げておけ」
「オレ、バージョン2.2.4なんで、眼球調整できないんすよ」
「じゃ、暗視スコープ付けとけ。文句があるなら、ウチに帰ってからおふくろさんに言え」
B小隊長が言った。
「あれですね」
隊員が建物を指差して言った。
「なんだ?ありゃ」
「監視所ですね。上の部分のスリットには、レーザー砲が収まってると思います」
「ノルマンディーかよ」
「なんですか?それ」
「20世紀の地球での戦争の話しだ」
「へえぇー」
「よし、行くぞ」
小隊長が手で前進の合図をすると、木の陰に隠れたり地面に伏せたりしながら、B小隊はじわじわと建物に近付いて行った。




