【89】先遣海兵隊 到着
「司令、[ドク・ワン]から入電です」
[もがみ]の通信担当士官のタレク少尉が言った。
「繋いでくれ」
「こちら宇宙軍火星基地所属ドック船[ドク・ワン]。
貴艦隊宙域に到着した。司令部との直接連絡手段が確立されるまで、決定済みの計画に基づいた作戦行動を実施する。ついては先遣海兵隊のみ独自の作戦に沿って行動するので協力するように」
なんだかやりにくくなりそうな予感がする。
「こちら[もがみ]、了解」
「これから海兵隊所属艦艇が発進するので、誤認することのないように」
「[もがみ]了解」
レーダーに映る[ドク・ワン]は馬鹿デカい。
申し合わせ通り、第20番惑星の陰にいてくれてるので、PS72パルサーの電磁波の直撃は避けているようだ。
* * *
「準備はいいか!海兵隊の根性を見せてやれ!」
[ドク・ワン]の格納庫の一部が海兵隊用に区切られ、特務護衛艦と高速魚雷艇が収まっていた。
そこでは、いつかの救助隊のように、海兵隊も上官のゲキを受け、嫌でもテンションを上げさせられ、戦地に赴くというわけだ。
「オレたちは先遣隊だ!オレたちの調査次第で、後から来る本隊の生死が決まると言っても過言ではない!!
だから、まずはキサマらが死ぬ気で調査するのだ!!
分かったか!!」
「アイ!アイ!サー!!」
キュィーーーーーン
キュィィーーーーーン!
キュィーーーーーーーン!!
高速魚雷艇のエンジンが始動した。
「全員!!乗艦!!」
先遣隊長のマドル少佐の一声で、全員乗艦した。
高速魚雷艇のドアが閉まる。
キィーーーーーーーーーーンン!!
ドック船内にエンジンの猛烈な音が響く。
この一区画全体の空気が抜かれ、減圧される。
空気が抜かれると、ドック内の音は無くなる。
しかし、魚雷艇の中は空気で満たされているので、エンジン音が超うるさい。
ドックの壁面がスライドして大きく開いた。
格納庫が分割され、この広いエリア自体が減圧室を兼ねているので、空気と気圧の調整をしてしまえば、ここから直接宇宙と繋がることができる。
外から見ると、[ドク・ワン]の右舷最後方9番ドックの外壁が開かれ、特務護衛艦[たちばな]と、高速魚雷艇4隻が発進した。
「[たちばな]より[ドク・ワン]内、海兵隊現地司令部。これより、第20番惑星へ第1回調査に向かう」
「現地司令部、了解。グッドラック」
特務護衛艦と、高速魚雷艇は、俺らの方へ向かって来るわけだ。
「第1遊撃機動艦隊、旗艦[もがみ]艦長、クロダ少佐へ。こちら宇宙軍海兵局海兵隊特別師団第1連隊中隊長マドル少佐である。
本来であれば貴艦へお伺いしご挨拶申し上げなければならないところ、すでに作戦実行中につき、貴艦舷側を素通りするご無礼、平にご容赦いただきたい。ついては今後お目にかかる機会もあろうかと思われるが、それまでお互いに軍務を全うし、闘いに及んでは全勝を得ることを誓いましょう」
「こちら第1遊撃機動艦隊、旗艦[もがみ]艦長、クロダ少佐です。ご丁寧なご挨拶、誠にありがとうございます。司令部から作戦開始の旨、連絡を受けておりますので、まずは貴隊のご健闘をお祈りし、無事ご帰還の折りには本艦へお立ち寄り頂きたくお待ち申し上げます」
「クロダ艦長、ありがとうございます。良い結果をお持ちいたします。それでは、また。以上」
「グッドラック、マドル少佐。以上」
[もがみ]の右舷100メートルほどの所を、特務護衛艦[たちばな]と海兵隊用重装備の高速魚雷艇4隻が第20番惑星へ向けて飛んで行った。
現在、第1遊撃機動艦隊は20番惑星から15万キロの地点にいる。我々の兵器で考えた場合のギリ射程外である。
なので、海兵隊はそろそろミサイルの射程距離に入って行くことになる。
「距離105,000。護衛艦は待機せよ」
マドル少佐は特務護衛艦[たちばな]に命じた。
「これより先は魚雷艇01から04で降下する。遅れをとるな!」
「アイ!アイ!サー!」
「高度9,000。全員、装備点検!」
隊員たちは、武器と装備の点検を始めた。
「大気に問題は無い!うまい空気をたくさん吸え!
大変なのは体重が2倍に増えることだ。武器も装備も2倍の重さになる。よって体力の消耗も激しくなる。通常行動では無理をせず、戦闘時のために、体力は温存しておけ!」
「アイ!アイ!サー!」
「高度3,000、現在、海上を飛行中」
「陸は分かるか?」
「はい。20キロ先です」
「よし、海岸線でいい所を見つけろ」
「了解!」
高速魚雷艇と言っても、船のような形はしていない。
どちらかと言えば、飛行機である。
細長めの機体に、前部に2枚後部に2枚の短めの翼があり4枚の翼の先端には小型の回転翼、つまりローターが着いている。後部に垂直と水平の安定翼があり、その前に高速飛行用の可変エンジンがある。
エンジンで高速飛行し、ローターで垂直離着陸もできる機体である。




