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PS72パルサー星系防衛軍  作者: 星野 光一
88/132

【88】[ドク・ワン] パルサー星系に到着

「大体、どの方向へ行ったんだ?」

戦艦[いせ]の艦長、スカヤ少将はレーダー担当士官に聞いた。


「この電磁場の航跡は、アルデバランの方角です」

士官は答えた。


「[やましろ]は、アルデバランへ逃げたのか?!」

スカヤ艦長は、捕まえたとばかりに叫んだ。


「いえ、おおよその方向ですので」

「まあ、いい、絶対に見逃すな!」

スカヤ艦長は、[ながと]たちの仇を討つためなら、宇宙の果てでも地獄の果てでも追い続ける覚悟なのだろう。


「司令、航行記録を見ると、戦艦[ジョージア]が通った記録が残っています」

データ担当のHDが報告した。


「[ジョージア]が?たしか、第38連合艦隊だったな?」

艦長は思い出していた。


「はい。第38連合艦隊の旗艦ですが、記録によると航行したのは単艦です」

「ここを単艦航行したのか。何故だ?」

スカヤ艦長は考えた。


「[ジョージア]は、第5防衛隊を捜索していたのではなかったのか?」

「[ルイテン]を旗艦とする第5防衛隊は、くじら座ミラ星系の戦闘で、過去に行方不明となった戦艦[あさひ]に牽引されて行ったことになっています。[ジョージア]は、その[あさひ]の電磁場変位の痕跡を追って行ったことになっています」

HDが説明した。


「[ジョージア]は、まだ追っているのか?」

「いえ、ワープで飛びました」

「よく分からんな」

スカヤ艦長は言った。


「[ジョージア]は、[あさひ]に捕らわれた第5防衛隊に追い着き、臨検を実施しましたが成果が無く、[あさひ]も第5防衛隊も放棄しました。が、航跡はその先へまだ繋がっていたので追跡を続行しましたが、計算の結果、銀河系外が起点ということが判明し、そこへワープしました」

HDが説明した。


「銀河系外へ行ったというのか?」

「航行記録や通信記録からは、そう推測されます」

「司令部は把握しているのか?」

「恐らくは」

「我々も行くべきか?」

艦長はHDに尋ねた。


「申し訳ありません。私には判断できません」

「そうだよな。よし、この件をまとめて、司令部へ連絡してくれ」

「了解しました」


* * *


「方位019、距離715,200、重力の歪み地点」

[ドク・ワン]のパイロットHDが、船長に報告した。


「よろしい」

「静かに飛ばしてくれよ?船長さん」

操縦室の入口で、今回の先遣海兵隊長のマドル少佐が言った。


「私の操船なら、グラスのシャンパンもこぼれることはない」

「なら、いいが、海兵隊の船を壊されたら困る」

そう言って、少佐は出て行った。


「大尉、装備に異常は無いか?」

少佐は格納庫に降りると、整備担当のラグロ大尉に言った。


「バッチリですよ、少佐」

「武装の予備も全部積んであるか?」

「これだけあれば、衛星の1つくらい吹っ飛ばせますよ」

「そうか、よし。

もうじきワープするぞ。しっかり固定しておけ」

「アイアイサー」

大尉は、再び作業を始めた。


* * *


舟艇は[もがみ]の艦底の発着口から入り、減圧エリアでエンジンを停止した。酸素が注入され、気圧が安定すると、格納エリアへの隔壁が上がり、舟艇ごと格納庫へスライド移動した。


「降りていいかな?」

俺は、サクラに聞いた。


「あの隔壁が下りるまでお待ちください」

「あ、すいません」

隔壁が下がり、黄色い回転警告灯が消えた。


「どうぞ、お降りください」

サクラが言った。

小さな船で宇宙を飛ぶのも、楽しいもんだ。


「司令、お帰りになったばかりのところ申し訳ありませんが、至急ブリッジへお越しください」

ヒラセ副長のお呼びだ。


「あ、司令、お帰りなさい。[きぬかぜ]が帰って来ました」

俺とサクラがブリッジへ戻ると、副長が報告した。


「お!帰って来たか。[きぬかぜ]だけか?」

「ドック船が、後から来るそうです」

副長がシモダ艦長からの報告を伝えた。


「それと、お伝え忘れてましたが、[さわかぜ]も間もなくこちらへ到着します」

副長、忘れるなよ。


「お、[さわかぜ]もか。無事だったか」

「これで、全艦集合ですね」

サクラが言った。


「司令、[ドク・ワン]の到着です。ワープアウト地点は、3時の方向4億キロです。新しい重力の歪み地点ができたようです」

レーダー担当士官のナラル中尉が言った。


「近くなって良かったじゃないか」

俺は、言ってやった。


「[きぬかぜ]は?」

「[きぬかぜ]も同じ地点でワープアウトしました」

中尉は答えた。

同じ地点でよかった。


「ポイントは、不安定なんだろうか?」

俺は、サクラに聞いた。


「重力と電磁波が複雑な所ですからね、何とも言えませんね」

サクラは答えた。


「何か法則のようなものを見つけないと、扱いにくくていかんな」

俺は、暗黙のうちに、その法則を見つけろ、と言っていた。


「[ドク・ワン]、方位153、距離3億9,880万キロ、速力10,000で接近中」

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