【85】第1撃は、海兵隊に任せよ
「しかし、まずは第20番惑星から調べましょう。第19番惑星第3衛星より、こちらの方が環境としては過酷でしょう。ですので、この環境に対応するためには相当の技術が必要でしょう。当該文明の概要を把握するには、20番惑星を調査することで、おおよその見当は付くでしょう」
サクラが提案した。
「よし、分かった。
で、もし仮に、相手がレーダーとかを持ってるとしたら、我々はすでに探知されているのか?」
俺は、素朴な疑問をぶつけてみた。
「我々と同じ技術レベルを持っていると仮定した場合、探知されているでしょうね」
そうだよなー。
「シモダ艦長は、司令部にうまいこと説明できてるかなー?」
俺は、心配になってきた。
「司令が指名したのですから」
「そんなの、分かってるよ」
俺は、おもむろにムッとした。
「どうしますか?
危険を覚悟で、舟艇で接近しますか?」
サクラが聞いてきた。
「こっそり、行ってみるか」
俺も行ってみたい。
「では、警備班と科学班、工務班を召集します」
「オッケー、そうしてくれ」
ということで、
総勢20名の「敵地捜索隊」が急遽編成され、舟艇発着所に集まった。もちろん、俺とサクラも行く。
「副長、後は頼む」
「お気をつけて」
俺は、副長に敬礼を返し、舟艇に乗り込んだ。
舟艇は、格納エリアで人員を乗せた後、スライドキャリアで減圧エリアに移動しここだけ密閉隔離される。空気が抜かれ、艦外と同等の環境に調整された後、発着口のドアが開き、舟艇はエンジンに点火する。
ガコン
シューッ
ガチャッ
色々な音が聞こえ、発着口のドアが開いた。
「行こうか」
俺は、パイロットのHDに言った。
キュィーーーン!
舟艇のエンジンが起動した。
「こちら、アルファ・ワン、発艦します」
HDが[もがみ]に連絡した。
ゴゴーーーッ!
舟艇は、[もがみ]の艦底の発着口から発進した。
言うまでもないが、乗っている人間は俺だけ。他の19名はHDだ。
「距離はどのくらいだ?」
「8,000万キロです」
「おいー、遠いな」
「そんなでもないですよ」
そぉーかぁー?と俺は、思った。
「イオン・ブースター、点火」
と、HDが言うと、
ドォーーーーン!
と体がシートに押し付けられ、凄まじいGが掛かった。
第20番惑星が大きくなってくる様子が早くなった。
こちら側の夜の部分に、点々と光が見えるようになってきた。惑星は、俺が地球から見たことのある月くらいの大きさになってきた。要するに新月ってやつだ。
ドォーーッ…………
噴射が止まった。しかし、惰性でもかなりの速度だ。
惑星は徐々に大きくなってくる。光の点々も多くなってきた。よく見ると、場所によって光の大きさや明るさや色が違う。さらに大きくなってくると、見たことのある情景のように思えてきた。
あー、思い出した。
舟艇が第20番惑星にさらに近付くと、
宇宙から見た地球の夜側で、大陸の都市の明かりがハッキリと見える映像を、テレビで観たことがある。
あの映像と同じだ。
「距離は?」
「2,000万キロです」
「よし、このまま、もう少し」
「了解」
俺は、パイロットとやり取りを続けた。
「様々な種類の電波が傍受できます」
サクラが言った。
「通信か?」
「はい。通信です。あとは、放送とか」
「知的生命体の文明に間違いないな」
「間違いないですね」
サクラが言った。
* * *
「第1遊撃機動艦隊[きぬかぜ]艦長、シモダ大尉、宇宙軍総司令官室までお越しください」
火星基地の食堂で食事していたシモダ艦長は、途中で食事を切り上げて、モモと一緒に総司令官室へ向かった。
「[きぬかぜ]艦長、シモダ大尉、入ります」
「入れ」
シモダ大尉とモモが入ると、総司令官室には、宇宙軍総司令官イアナ提督、副司令官イオニ中将、太陽系方面軍総司令官エスナ中将、火星基地司令官イタフ提督、そして海兵隊総司令官エンデ提督がいた。
こんなお偉い人たちを見るのは初めてで、シモダ艦長はビビりまくっていた。
「まあ、掛けたまえ」
イアナ提督が、シモダ艦長にソファーを勧めた。
「方針概要が固まった」
イオニ中将が言った。
「異次元中継ネットワークの敷設工務は、即時開始とする」
「ありがとうございます」
中将の説明に、艦長は感謝した。
「ハンガー船を用意し、通信用潜宙艦5艦を積載し、PS72星系へ送る」
「あ、ありがとうございます!」
「それと、今後のために、海兵隊1個師団を送る準備を開始する。それに先立って、1個中隊200名と海兵隊所属魚雷艇4艦をハンガー船に積載する」
「か、海兵隊ですか………」
シモダ艦長は、少しうろたえた。
「艦隊の乗組員が敵の本拠地に乗り込むより、専門部隊の海兵隊に任せたほうがよかろう」
海兵隊総司令官エンデ提督が言った。
「何者か知らんが、我が銀河帝国に敵対することは許せん」
イアナ提督が立ち上がって言った。




