【82】クロダ少佐とケサン少将、初顔合わせ
「司令!方位165、上下プラス2.4、距離23,500に感あり!」
[もがみ]のブリッジで、レーダー担当のナラル中尉が報告した。
「相手はなんだ?」
ヒラセ副長が聞いた。
「あーっと、戦艦です!
えーっと、第38連合艦隊の戦艦[ジョージア]です!」
中尉は言った。
「なに?!艦隊が来たのか?!」
副長は驚いて、中尉に確認した。
「いえ、艦隊ではありません。単艦です」
中尉は、光点は1個で間違いが無いと言えるように、
レーダー画面を凝視して言った。
「単艦で間違いないでしょう。
以前、くじら座ミラ星系で、戦艦[ルイテン]を旗艦とする第5防衛隊を捜索に出る際、単艦で追跡する許可を司令部に求めています」
サクラが、通信記録をサーチして言った。
「まあ、いい。
少尉、[ジョージア]と連絡をとってくれ」
俺は、通信士官のタレク少尉に命じた。
「こちら第1遊撃機動艦隊、旗艦[もがみ]。
第38連合艦隊[ジョージア]応答せよ」
「こちら[ジョージア]、[もがみ]どうぞ」
呼び掛けに、[ジョージア]が応答した。
「司令、[ジョージア]が応答しました。お話しください」
タレク少尉が、俺に振った。
「こちら第1遊撃機動艦隊、旗艦[もがみ]艦長、クロダ少佐です」
「こちら[ジョージア]艦長、ケサン少将だ。こんな所でお会いするとは奇遇だ、クロダ少佐」
ケサン少将が応答した。
「ここは危険な星系ですが、貴艦に異常はありませんか?」
「危険なことは、到着後に分かった。艦内の電気系統の調子が良くない。今は、こうして通信できるが、今後は保障できない」
「そこは危険です。我々はパルサーの電磁波の直撃を避けるため、常に20番惑星の陰になるよう微速航行しています。貴艦は可動状態ですか?」
もしも[ジョージア]が危険な状態なら、救助に向かわなければならない。
「まだパルサーの影響は短時間なので、今のうちに惑星の陰に移動する」
「お気を付けて。何かあれば連絡を」
「お心遣いに感謝する。以上」
[ジョージア]は通信を切った。
「司令、我々も通信手段の確保を急ぎましょう。この星系では、電磁波と重力の影響で、ジャンプ・アップポイントが少しずつ移動しています。あまり惑星の陰から離れると、パルサーに曝される時間が長くなり危険です」
サクラは、警告した。
「そうだな。では、急いで選抜したHDを乗せて、出発するよう[きぬかぜ]に連絡してくれ」
俺は、サクラに命じた。
「こちら[きぬかぜ]、[もがみ]どうぞ」
「こちら[もがみ]、どうぞ」
[きぬかぜ]から連絡が入った。
「これより、ジャンプ・アップ・ポイントに向かいます」
「了解。気を付けて。
トロッコ・フライでも、3時間以上曝されることになる。可能な限り、急いで飛び込め」
俺は、シモダ艦長に言った。
「[きぬかぜ]、了解」
[きぬかぜ]は、艦隊の中から、トロッコ・フライで、重力の歪みへ向かった。時速約10億キロ。亜光速航行だ。
約3時間後。
「[きぬかぜ]より[もがみ]、取れますか?」
少し雑音が混じるが[きぬかぜ]からの連絡だ。
「こちら[もがみ]、[きぬかぜ]どうぞ」
「現在、ポイントまで10,000に到達。引き続き、ワープ航法へ移行します」
「[もがみ]了解。グッドラック!」
通信士官のタレク少尉が幸運を祈った。
そして、その直後、
「こちら[ジョージア]、現在、貴艦隊の5時の方向、距離10,000に到着。この後、舟艇にて貴艦隊旗艦にお伺いしたい」
と、[ジョージア]のケサン少将から連絡が入った。
きっと、[きぬかぜ]と[ジョージア]は中間地点で、お互いに亜光速ですれ違ったのだろう。
[もがみ]の至近レーダーで1,000メートルまで接近して停止した[ジョージア]から舟艇が出て、ケサン少将が[もがみ]に乗艦した。
俺は、舟艇発着所に少将を出迎え、敬礼を交換して握手した。
「ようこそ[もがみ]へ、ケサン少将」
「はじめまして、クロダ少佐」
平時の観艦儀礼であれば、ブリッジへ案内し、色々と説明をするのだが、今はそんな場合ではない。
俺は、少将を司令官室へ招き、これまでの戦況と今後の対策を協議することにした。
俺は、宇宙軍総司令部との通信手段を確保することを優先に解決し、その後総司令部と協議し、PS72星系第20番惑星とその衛星を調査し、敵の本拠地という仮説の真偽を確認する。
まずは、ここまで。
その後は、敵の本拠地の有無によって、我が軍の行動は選択を迫られる。
いや、行動しなければならない場合は、我が軍ではなく、我が銀河帝国の政治的判断が必要になる。
ケサン少将も、俺の案には賛成で、今後の対策についてもほぼ同意見であることを確認した。
ただ心配なのは、[ジョージア]のイオンエンジンが不調をきたしていることである。




