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PS72パルサー星系防衛軍  作者: 星野 光一
81/132

【81】郵便配達指定日は、728年後

「司令、この情報、ご存知ですか?」

第9機動艦隊[いせ]のブリッジで、通信士官のハトロ少尉が、艦長のスカヤ少将に通信端末を見せて言った。


「なんだ?」

艦長は端末を手に持ってよく見てみた。


「不明艦隊や敵とおぼしき船は、電磁場の痕跡を残していて、これをトレースすることで追跡が可能なようです」

「なんだと?」

スカヤ少将は、すぐには信じられないようだった。


「現実に、今まさに戦艦[ジョージア]が単艦でその痕跡をトレースして航行しています。また、これまでの[ながら]や[あさひ]などの発見された過去に行方不明となった艦についても、この電磁場変位の説が当てはまるようです」

このように、ハトロ少尉は説明した。


「では、[やましろ]も……」

少将は、じっと少尉を見つめた。


「そうおっしゃると思って、もう調べました。

[やましろ]の航跡を電磁場計測したところ、はっきりと痕跡を残しています。これを追えば、[やましろ]を発見できます」

「そうか!よくやった。早速、行動開始だ」

スカヤ少将は決断した。


* * *


シュバーーーンッ!

シュバッ!シュバーーン!

シュィーーン!

シュバッ!シュバッ!シュババッ!


例によって、

トンネルから飛び出たクルマが急ブレーキで止まる。

そんな表現がいちばんピッタリな光景だ。


ミサイル巡洋艦[もがみ]を旗艦とする第1遊撃機動艦隊がワープ空間から通常宇宙空間へ戻ってきたのだった。


ここは、太陽系から728光年離れた、PS72パルサー星系、第20番惑星から32億キロ離れた地点である。


「司令より全艦へ達する。異常の有無を報告せよ」

俺は、全艦に通達した。


しかし、異常が出るのはこれからかもしれない。

前人未到の銀河系外であるし、強力な電波源であるパルサーの近くでもあり、これまでに無い環境であるからだ。


「サクラ、君自身に異常は無いか?」

「今のところ、自覚症状はありません」

「そうか。何か異常を感じたら、すぐに教えてくれ」

俺は、サクラを実験台にしようとしてるのか?


「しかし、ここでの問題点は、通信に時間がかかるという点ですね」

通信士官のタレク少尉が言った。


「そうか、まずいな。

火星本部までの通信に光速と同じ728年かかるのかー」

ヒラセ副長が言った。


「直近の異次元通信中継機まででも約220光年離れているからな」

これは、俺が暗算して言った。


銀河系内であれば、ワープ航路用に調査済みの異次元空間に通信用中継機があるからだが、PS72星系から一番近い中継機まで220光年離れているということだ。


「単独でワープ航行できる最小艦艇はなんだ?」

俺はみんなに尋ねた。


ワープは光よりはるかに速く目的地に到達できるので、光と同じ速度の電波通信より、ワープで情報を運んでしまった方が速い。


「脱出ポッドじゃ無理ですしね」

と、航海長。


「舟艇でもダメですね」

と、戦術長。


「戦闘機とかの艦載機では?」

戦術長はやった!とばかりに言ったが、


「とにかく、プラズマEMドライブエンジンが無いと」

と、機関長。


「あ、そうなのか」

副長が、がっかりした。


「今の第1遊撃機動艦隊でのワープ可能な最小単位は駆逐艦ですが、他の艦隊にある魚雷艇や潜宙艦ならできますよ」

サクラが提案した。


「じゃー、ワープ可能な小さな艦艇を他の艦隊から借り受けて、通信用に使うか」

俺は言った。


「それが一番、現実的ですね」

サクラが同意した。


「それとサクラ、HDでその通信部隊を編成してくれ」

「かしこまりました」

「じゃー、まずは駆逐艦でこの第1報を届けるか」

「わかりました。通信部隊を編成します」

サクラは、仕事にとりかかった。


一時間後、

「通信用HDを30体選抜し、用意しました」

サクラは、言った。


「ご苦労。では、[きぬかぜ]のシモダ艦長に、第1回目の駆逐艦による連絡についての計画を伝えてくれ」

「かしこまりました」

サクラは、答えた。


* * *


「方位000、距離5,000、重力の歪み地点です」

航海長HDが、戦艦[ジョージア]のケサン艦長に報告した。


「よし。そこからワープだ」

「ワープ、了解。」

艦長の命令に、HDが答えた。


「イオンエンジン出力100%」

「出力100%、アイ」

艦長が命令し、HDだけが復唱する。


こういう時は人間の士官に復唱してほしい。

ケサン艦長は、思った。


「距離、2,000です」

報告は、HDの方が正確だろうが。


「よし、エンジン切り替え準備」

「エンジン切り替え準備、アイ」


「距離1,000です」

「プラズマEMスタート、イオンエンジン、オフ!」

「プラズマスタート、イオンオフ、アイ」


[ジョージア]のエンジンノズルから眩い光が放出され、光跡を曳いて[ジョージア]は消えた。


約1分後、

[ジョージア]はPS72パルサー星系に現れた。


第20番惑星から約32億キロ離れた地点に。

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