【80】PS72パルサーに、目標を定めよ
[いせ]の艦長、スカヤ少将は誓った。
戦艦[ながと]以下、第6機動艦隊の仇を絶対に討つと。
「航海長、[やましろ]の行方を追うんだ」
スカヤ少将は、航海長のネラン中尉の肩に手を置いて言った。
「絶対、見つけます」
索敵装置を操作しながら、ネラン中尉が答えた。
スカヤ少将は、艦長席に座り、目を閉じた。
* * *
「あー!!距離100,000に第6機動艦隊が!!」
半径100,000のレーダーレンジには、距離95,000の位置に[やましろ]が。そしてそれに向かうミサイルの群れ。
あと10,000でミサイルは[やましろ]に命中する。
レーダーの中心には自艦[いせ]が表示され、これ自体も前進している。
「あ!目標転針!!面かじ30度!!」
[やましろ]が面かじを切った時、
「あー!!距離100,000に第6機動艦隊が!!」
レーダーの一番上の端っこに光点が映った。
ミサイルの群れは、[やましろ]がいたところを通過し、
レーダーの端っこに向かった。
ピ。ピッ。ピピ。ピッ。ピピ。
ミサイルが目標に命中する通知音がブリッジに響く。
右に曲がっていく[やましろ]以外の光点が、
レーダー上から消えた。
* * *
何年ぶりだろうか?
[いせ]の艦長スカヤ少将は、在りし日の[ながと]の勇姿に想いを馳せながら思った。
自分の緑色の目から涙が流れるなんて。
* * *
「ジャンプ・アップ・ポイントまで70,000」
[もがみ]のブリッジでノラン航海長が言った。
「出口は大丈夫なんだろうな?」
俺は、確認のため聞いた。
「あ、出口ですか」
ノラン航海長が何かを操作し始めた。
「おい!おい!」
俺は、思わず声を上げた。
「大丈夫です」
サクラが言った。
「PS72から見て、第20番惑星の裏側に出ます」
俺は、ホッとした。
で、航海長を睨んだ。
「あ、20番惑星から32億7250万キロの地点に出ます」
ノラン航海長が小さい声で言った。
大丈夫かいな
俺は、思った。
「くれぐれもパルサーには近付くなよ」
「アイアイサー」
俺は、航海長に念を押しておいた。
ぼんやりしていて電磁波で焼かれたらたまらない。
「ジャンプ・アップ・ポイントまで50,000」
「よろしい」
「こちら[さわかぜ]、[もがみ]どうぞ」
タグチ艦長からだ。
「こちら[もがみ]、[さわかぜ]どうぞ」
「[さわかぜ]のタグチです。本艦は5時間後にハンガー船とランデブー予定となりました。[ながら]を引き渡した後の行動についての指示を願う」
ほぉーー。司令部がハンガー船を送るという粋な計らいをしたのか。
「本艦隊は、10分後にワープに入る。無事にワープアウトしたら、また連絡する。以上」
俺は、通信を切った。忙しいから。
「ジャンプ・アップ・ポイントまで30,000」
「副長、他の艦に異常が無いか確認せよ」
俺は、ヒラセ副長に命じた。
「サクラ、どこかで何かが起きている情報は無いか?」
俺は、サクラに聞いた。
「そうですねー、
カストル星系、惑星カストル・ジータ付近で、民間旅客船の事故発生。
カノープス星系、惑星カノープス・ベータの14番衛星でパラジウム鉱山事故発生。
そのくらいがニュースですね」
「ありがとう、サクラ」
突発的な大きな出来事は無さそうだ。
「ジャンプ・アップ・ポイントまで10,000」
ノラン航海長が報告した。
「よし、全艦、ワープ準備」
「全艦、ワープ準備」
「ワープ準備、アイ」
「あと5,000」
「ブリッジより機関へ、出力100%へ」
「出力100%、アイ」
「突入します!衝撃防御!!」
「距離1,000」
「エンジン切り替え、10秒前!」
「5、4、3、2、1、
プラズマEMスタート!、イオンオフ!」
[もがみ]のエンジンノズルが眩い光を放ち、続く[しらかぜ]、ほか駆逐艦5艦全てが眩い光を放ち、暗黒の宇宙空間へ光跡を曳いて消えて行った。
* * *
「艦長、ワープ航路の計算結果が出ました。
方位033、距離211,000キロに、重力の歪み地点」
航海長HDが[ジョージア]のケサン艦長に言った。
「出口も、しっかり計算したか?」
「間違いなく結果が出ています」
航海長HDは答えた。
「敵の本拠地に着いたら、君たちは戦えるのか?」
「私たちは、人間のお役にたてます」
戦術長HDは答えた。
「そうか、じゃ、せいぜい役にたってくれ」
「かしこまりました」
「よし、では計算通り、PS72へ向かってくれ」
「了解しました」
* * *
「ここをだな、こう行くのだよ」
第15連合艦隊旗艦、戦艦[カリフォルニア]の艦長、カジン少将は、副長のサミデ大佐、測距長のジヤク大尉に説明していた。
カジン少将は紙に直角三角形を描いて、下の辺の一方の角を艦隊が今いるカシオペア座とし、もう一方の直角の角を太陽系とし、その太陽系から直角に上にいった角を敵がやってくる本拠地とした。
そして、「ここをだな、こう行くのだよ」と言って、
直角に対する長辺を指でなぞった。
「わざわざ太陽系まで戻って、上に行く必要は無い。
ここを斜めに突っ切った方が簡単だろう?」
少将は、そう主張したのだ。




