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PS72パルサー星系防衛軍  作者: 星野 光一
79/132

【79】ぼんやり見えてきたパルサー

「司令より全艦へ達する。本艦隊はこれより方位275、122,000キロ先の重力の歪みから、ワープ航法で約248光年先のPS72パルサー星系へ向かう。

我々は今、銀河系の縁にいる。ここから先は未開の地である。全員、気を引き締め軍務に当たるように。以上」

俺は、[もがみ]のブリッジで、全艦に通達した。


今はこの窓の外に多くの星が見える。

多くの星の集まりの中にいるからだ。


銀河系の中心の方を見ると、さらに多くの星がひと筋の白い川のように見える。

天の川だ。


これが『天の川銀河』と呼ばれる由来だが、この光景はウチらの住むこの『天の川銀河』に限ったものではない。

他のどこの銀河系でも見られる光景だ。


「現在、方位275へ、速力50,000で航行中」

航海長のノラン中尉が報告。


「ベリーウェル」

俺も、たまにはカッコつけて返答する。


「司令、艦の電波望遠鏡でPS72星系の詳細が見えてきました」

サクラが報告する。


「サクラは、専任曹長というより科学士官だよね」

俺は言った。


「私も、その方がシックリきます」

サクラも、まんざらではなさそうだ。

なにせ科学的データの蓄積やそれへのアクセスは、サクラなしではスムーズにいかないだろう。


「PS72は、『マグネター』というカテゴリーに分類される、電波を規則的に射出するパルサーです」

サクラは、[もがみ]の艦橋にレーダーやアンテナなどと一緒に設置されている、小型高性能電波望遠鏡で捉えた画像を見せた。


「串だんごみたいだな」

黒灰色の球体の真ん中に、青白い串が1本突き刺さっている画像を見て、俺は思わず言ってしまった。


「その球体が中性子星の本体で、超高速で回転していて、ものすごい重力を持っています。もし、それよりも収縮してさらなる重力を持ったら、ブラックホールになったでしょう。恒星が一生を終えて超新星爆発を起こした後、中性子星になるかブラックホールになるか、その選択の過程は、非常に興味深いものがあります」

サクラは、興奮気味に説明する。


「へーーー」

俺は、それしか言えなかった。


「中性子星は、ブラックホールになれなかった天体で、非常に強力な重力で周りのガスやチリを巻き込んでいます。それが回転軸のように上下へジェットのように吹き出して、串だんごのように見えるのです」

「へぇーーーーー」


「パルサーには何種類かあって、PS72は電波を規則的に発する強力な電磁場を形成する『マグネター』タイプのパルサーです。まー、宇宙の発電機みたいなもんです」

「ほぉーーーーー」


「で、このPS72星系には27個の惑星があることが分かりました。またそれらの惑星にはそれぞれ衛星があり、その合計は500個以上になります。

そして、この星系での生命の可能性ですが、パルサーの電磁場の影響は生命にとって極めて脅威であるため、この電磁場の影響が少なく、かつ、水が液体でいられるハビタブルゾーン内に位置する惑星または衛星が候補となります。

それを考慮して計算した結果、最も有力なのが、第20番惑星とその衛星3個となります」

サクラの説明が終わった。


「PS72第20番惑星か」

俺は言った。


「はい。

ただし、この惑星に接近する場合は、必ずPS72を迂回する航路でなければなりません。

PS72に近付くと、艦は破壊されます。

また、PS72からの宇宙ジェットの放出方向も避けてください。これまでの宇宙での生命の絶滅は、遠方のパルサーの宇宙ジェットの影響である証拠が示されているくらいですから」


「この串だんごの串の先にある星の生き物は、全滅してしまうってことか?」

「そういうことです」


「その星で生きてたら、避けられないじゃないか」

俺は、大声で言った。


「それが物理の、宇宙の、法則です。

偶然でもなければ、たまたまでもない。

何らかの原因があって、その結果となるだけです」

「それじゃー、その生き物が可哀想じゃないか」

俺は、なんだか悲しくなってきた。


「生物は、宇宙のために存在していません。宇宙や物理の法則を満足させるのに、生命は特に必要ないのです」

「じゃー!サクラは、なんのためにいるんだ?!」

「私は、人間が自分たちのために必要な物として作られた物です」


俺は、俺は何のためにいるのか?サクラに聞こうと思ったが、やめた。

それは、自分で考えるべきだろう。


* * *


戦艦[ジョージア]はただただ静かに、電磁場ハイウェイをトレースして航行するだけだった。


艦長のケサン少将は、無重力用容器に注いだスコッチを片手に、いつも窓の外を眺め、たまにHD相手に昔の思い出を語ったりしていた。


「さて、目的地もハッキリしたことだ。

直近のジャンプ・アップ・ポイントを計算してくれ」

ケサン少将は近くにいたHDに指示した。


想い出に浸っていても仕方がない。

私の仕事は、戦うことだ。


ケサン少将は艦長室を出て、

ブリッジへ向かった。

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