【78】第6機動艦隊 宇宙葬
「こ、こちら第9機動艦隊。第6機動艦隊、応答せよ」
「……………」
「第9機動艦隊より、第6機動艦隊、応答せよ」
「……………」
「第6機動艦隊、いずれの艦か、応答せよ」
「……シャー、………、…プッ…、ブツ……」
「第6機動艦隊、第6機動艦隊、第6機動艦隊!」
「こち……、たか………、………願う…」
「艦長!!反応ありました!!」
[いせ]の通信担当士官が、艦長を呼んだ。
「どの艦だ?!」
艦長のスカヤ少将は急いでブリッジに来て、士官に尋ねた。
「電波状態が悪く、艦の特定ができません」
「そうか、呼び出しを続けてくれ」
「分かりました。 こちら第9機動艦隊」
通信担当士官は、呼び出しを再開した。
[いせ]のブリッジの窓からは、大破した戦艦[ながと]が目の前に見えた。
そして、第9機動艦隊の各艦から舟艇が出て、第6機動艦隊の残骸の中、救命救助活動をおこなっていた。
艦隊15艦艇のうち、原型を留めたものは、戦艦[おおすみ]と重巡洋艦[あぶくま]と駆逐艦2艦、フリゲート艦2艦、潜宙艦1艦だった。
[いせ]をはじめとする第9機動艦隊が発射したミサイルの自爆は、ほとんど間に合わなかった。
十数発のミサイルは第6機動艦隊の真正面へ命中して行った。
[ながと]たちは、応援などに来なければよかったのだ。
[いせ]は、応援要請などしなければよかったのだ。
スカヤ少将は、心から悔やんで、祈っていた。
誰でもいい、できるだけ生き残っていてくれ。
「こちら[さつま]所属救助隊HS-4。重巡[たかせ]の艦内に生存者がいる模様。至急、応援願う」
救助隊HS-4の要請を受けて、戦艦[さつま]から新たに2隻の舟艇が[たかせ]へ応援に向かった。
重巡洋艦[たかせ]の舷側に舟艇を着けて艦をよく見ると、第1砲搭から前部が丸っきり無くなっていた。艦橋部分から後部は残っているものの、所々爆発穴もあり、外見的に判断して、艦内の残留酸素の気密の可能性はかなり低いことが分かる。
「連絡したのは誰だ?」
後から到着した舟艇の艇長が言った。
「はい、自分です。軍曹」
「どうして、生存者がいると思った?」
軍曹は聞いた。
「外からドアを開けようとした時、声が聞こえたんです」
救助隊の二等兵は言った。
「どのあたりから聞こえたんだ?」
軍曹が聞いた。
「ここのドアの開閉ボックスの所です」
軍曹がボックスを開け閉めしてみた。
「なんと言ってた?」
「助けてくれ、と」
二等兵は答えた。
「男か?女か?」
「女です」
二等兵は答えた。
「よし、プライベート、舟艇で休んでいいぞ」
軍曹は、二等兵を外した。
「この艦に、女は乗り組んでいないし、ドアの外は宇宙で、中の声が聞こえるわけがない」
軍曹は他の隊員と、破損した箇所から艦内に入った。
まだ電気の通っているケーブルがあるのか、時おり回路ショートの火花が散る。
隊員たちには、端末で艦内の平面図を表示させ、艦首から階ごとに捜索を開始させた。
軍曹はブリッジへ行き、非常電源を使った通信回路を確保し、ヘルメットをかぶって生きている者がいれば、場所と生命機能の情報が把握できるようにした。
これにより重巡[たかせ]では4名が機関室で生存していることが分かった。
このような捜索の結果、第6機動艦隊の生存者は、520
名中、47名だった。
全ての捜索が終了し、遺体は[いせ]に集約され、宇宙葬が執行された。
* * *
「あと10分で、トロッコ・フライを終了します」
俺は、ノラン航海長から報告を受けた。
「よろしい」
「司令、概要が集約できました」
サクラが端末を見せてくれた。
「同士討ちなのか?」
俺は、サクラに聞いた。
「いえ、第9機動艦隊に被害はありません」
「悲惨な結果だな」
俺は、言った。
「第9機動艦隊の司令も、いたたまれないだろうな」
「それもそうですが」
サクラが何か言い出した。
「どうも敵の意図が不可解です」
「何が不可解だよ」
俺は、聞いた。
「戦略的目標が不明で、個別の戦術が幼稚です」
「幼稚だと?」
俺は、サクラの言い方が気にくわなかった。
「2艦隊を接近させておき、目の前で急転針してミサイル進路を開け、自軍に命中させるなんて、戦闘の方法としては旧態で幼稚です」
まあ、言い方はともかく、言いたいことは分かる。
「間もなくトロッコ・フライを終了する。各員、衝撃防御姿勢をとること」
航海長が通達した。
ヒューーーーーン!ヒューーン、ヒュン、ヒュン…
前方にGがかかり、艦は停止した。
「ノラン航海長、直近のジャンプアップポイントを」
「了解しました」
俺は、ワープの出発地点となる重力の歪みを探すように、航海長に命じた。
「司令、直近のポイントは、方位275、距離122,600です」
「PS72までの距離は?」
「約248光年です」
航海長が答えた。
「よし。跳ぶぞ」




