【77】ペルセウス座での悲劇
「なるほど、宇宙というのは面白いものだな。知れば知るほど面白い。まだまだ知らない事が多いから、なお面白い」
戦艦[ジョージア]のケサン少将は、ロックのスコッチを飲みながら、宇宙空間を見つめていた。
「艦は宇宙を飛んでいるのに、それは全く感じない。
この艦が飛んでいる太陽系は回っている。
この太陽系が回っている銀河系も動いている。
一体、どんな力が働いたら、そんなふうになるんだ」
ケサン艦長は艦長席に座って、電磁場ハイウェイをトレースしていく艦の前方を見つめ、この道が行き着く所の光景を思い浮かべていた。
PS72パルサー。
今年、つまり7258年に発見された。
太陽系から748光年先にある。
おそらく銀河系の上側の外にある。
超新星爆発の後の中性子星であろう。
超高速で回転し、規則的に電波を発するパルサーだ。
他の恒星の陰にあって、今年まで見つからなかった。
数個の惑星と、その衛星から成る星系であろう。
ケサン艦長の知識としては、このくらいだった。
* * *
「目標、距離100,000、速力40,000。
ミサイル巡航中、目標まで50,000」
戦艦[いせ]のブリッジで、スカヤ少将はCICからの報告を聞いていた。
「目標、減速!速力30,000、距離95,000」
「なに?減速だと?」
「[やましろ]、距離30,000、減速しています」
戦艦[ながと]では、ウスダ少将が報告を受けていた。
「[いせ]は、どうした?!」
「[やましろ]が電磁波を発していて、距離30,000以上が探知できません!」
ハタリ航海長が答えた。
「目標、距離90,000、速力20,000。
ミサイル巡航中、目標まで20,000」
何故、減速したんだ?
[いせ]のスカヤ少将は考えていた。
「[やましろ]、距離15,000、減速中!」
おかしいぞ?何か変だ。
[ながと]のウスダ艦長は思った。
「[やましろ]転針!面かじ30度!電磁場消失!」
航海長が報告した。
「転針だと?!」
ウスダ艦長は立ち上がった。
「我が艦のミサイルは、ホーミングか?!!」
[いせ]のスカヤ少将は叫んだ。
「いえ、無誘導ミサイルです」
CICが返答した。
「まずい!!」
スカヤ少将は立ち上がって叫んだ。
「目標、転針!面かじ30度!
あー!!距離100,000に第6機動艦隊!!」
CICが大声で報告した。
「あー!!ミサイル接近!!距離10,000!!」
[ながと]のハタリ航海長が叫んだ。
ウィーーーーーーーン!!
ウィーーーーーーーン!!
ウスダ艦長が警報ボタンを押して、叫んだ。
「回避!!回避!!衝撃防御!!、回避しろー!!」
ウィーーーーーーーン!!
[ながと]の艦内に衝突警報が鳴り響いた。
「自爆させろ!!自爆だー!!」
[いせ]のスカヤ少将は叫んだ。
* * *
「司令より全艦へ達する。今後、銀河系外縁に達した地点でトロッコ・フライを終了し、通常ワープ航法に移行する。その間、各自所属長の指示のもと、最適な行動とするように。以上」
俺は、全艦に通達した。
基本的に、トロッコ・フライの間や、ワープ中は、航路の障害物などに注意すれば、ほとんどの乗組員はやることが無い。まー、乗組員のほとんどはHDだが。
「で、パルサーってのは、カッコいい名前だけど、どんな星なんだい?」
俺は、サクラに尋ねた。
「パルサーは、恒星が一生を終え、超新星爆発の後にできる天体です。恒星は水素から始まり鉄までの元素を核融合によって内部で作り出すのですが、全ての核融合が終わると、重力でギューッと収縮します。そして超新星爆発で大体は吹っ飛ぶのですが、中心の重力の核みたいなものが残って、中性子星かブラックホールになります。中性子星になったものは超高速で回転し、ガンマ線や電波などを規則的に発するので、パルサーと呼ばれ、『宇宙の灯台』などと言われます」
サクラが詳しく説明してくれた。
「で、なんで、このPS72が怪しいと思ったわけ?」
俺は、追加質問した。
「手前にペテルギウスがあって、その陰に隠れていて観測できなかったのでしょう。実際にその付近に行って初めて分かったのです。今まで見つからなかった銀河系に近い星系で、生命に適した惑星か衛星があったとしたら?怪しくないですか?」
サクラは、締めくくった。
「それは、一見の価値ありですね」
ヒラセ副長が言った。
「私も、敵の本拠地がどんなものか、見てみたいです」
サクラが珍しいことを言った。
「では、それを楽しみに、少し休んでおくとするか」
俺は、皆を解散させた。
「司令、ちょっと」
解散させたのに、サクラが呼んだ。
「トロッコ中なので受信しにくいのですが、私のHD通信網によると、どこかで大きな事件があったようです」
何があったのかは、
サクラの表情からは、当然、伺い知れない。




