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PS72パルサー星系防衛軍  作者: 星野 光一
75/132

【75】新たな不明船の目的は?

「エンジン出力80%、速力30,000」

俺は、航海長のノラン中尉の報告を受けた。


[もがみ]ではブリッジの部署長の刷新がおこなわれたので、名前と階級を覚えるのが一苦労だ。


しかもみんな、人間でありながら、俺とは違う。

バージョンアップした未来人なのだ。

まあ、そういうことができてしまう未来なんだから、仕方ない。


現実として俺がその時まで生きていることはない。

俺は、虫歯になったら歯医者で治すが、俺の未来の子孫は虫歯にならない。


腕の骨を折ったら半年くらい石膏で固められてしまうが、未来の子孫の骨は3日でくっつくだろう。


あ、そう言えば、

「副長、君たちもバージョンアップするんだろ?」

「はい」

ヒラセ副長は答えた。


「その、スキルアップモニターで?」

「この腕のモニターはあまり意味はありません」

「と言うと?」

「情報は全て見えるからです」

「見える?」

「目の中に、必要な情報が写しだされます」

副長は説明した。


「じゃぁ、目の中でパソコンみたいに色々見えるのか」

「そうです。このへんにスキルレベルメーターがあります。そしてこのへんに、身体機能の状態が表示されています。どこかから着信があると、ここらに相手の顔が写ります」

副長は空中の一部を自分の視界として切り取って、色々な表示が出る場所を手で示した。


「痛い目に会うと、ヒットポイントが減るのかい?」

俺は、ふざけて聞いてみた。


「もちろんですよ。HPが0になったら生命機能が停止します。それを防ぐために、常時メーターが見えているのです」

えーー!!マジなのか!


「ヒットポイントを回復させるのはどうするの?」

やっぱり、宿屋に泊まるのか?


「食事をしたり、睡眠をとったり、または治療とか」

あーーー。なるほど。

まー、だいたい、思った通りだ。


「死んだら、教会で生き返るとか………」

俺は、思いきって聞いた。


「そんなのはありえないでしょー」

副長は笑って言った。


「ちゃんと、医療機関で生き返ります」

俺は、開いた目も口も、閉じられなかった。


「現在、方位000、速力100,000」

ノラン航海長が報告した。


「航海長、君の今のヒットポイントは?」

俺は、ノラン中尉に聞いた。


「司令、それは憲法で保障された個人情報です」

「あ、そうなのか」

「人の状態は、究極の個人情報です。それが分かってしまうと、どの程度で相手が死ぬか分かってしまいます」

うわっ、そう言われれば、そうだ。


「さて司令、トロッコで行きますか!」

副長が言った。


「あ、あ、そ、そーするか」

俺は、少し未来を理解して、慌ててしまった。


「航海長、機関長、トロッコ・フライ、準備」

副長が命じた。

「トロッコ・フライ、準備、アイ」


* * *


「現在速力50,000、目標まで450,000です」

戦艦[いせ]の状態だ。


「相手は1隻だな?」

「はい」

レーダー担当士官は答えた。


「目標の速力は?」

「30,000です」

「追い付くなー」

「はい」

「艦影をデータベースと照合せよ」

スカヤ艦長は、CICの戦術長に伝えた。


「CICより艦長へ。目標は、6978年に行方不明となった、戦艦[やましろ]です」

「分かったー」

スカヤ艦長は、答えた。


たしか、こいつもワープアウトの時に行方不明になった艦だ。この共通した事故原因が究明できれば、今後の事故防止に繋がるはずだ。

「目標まで、300,000。[ながと]まで550,000です」

「分かったー」


* * *


「航海長、電磁場変位を追いながら出せる最大速力を算出せよ」

[ジョージア]のケサン艦長は、航海長のHDに命じた。


「レーダーのミドルレンジ内なら探知できますので、最大500,000は出せます」

「よし、では航海長、500,000だ」

「速力500,000、アイ」


ドァーーーーーン!

[ジョージア]はエンジン出力を上げ、急加速を開始した。


「現在、速力350,000」

艦長の体が、椅子に押し付けられる。


「航海長、障害物には注意せよ」

「アイアイサー」

航海長HDは答える。


ドォーーーーー!

加速は続く。


「現在、速力400,000」

「測距長、電磁場はトレースしてるか?」

「はい。大丈夫です」

艦長の問いに、レーダー担当HDが答えた。


「よろしい」

「現在、速力450,000」

「機関、正常」

アルデバランまでもうすぐな気がする。


「速力500,000。加速中止」

ドォーーーッ……………シュィーーン、シュン、シュン

エンジン音が急激に小さくなる。


振動も収まり、

体が急に楽になった。


「航海長、アルデバランは近付いたか?」

「はい。気のせい程度ですが」

「お前は、冗談の言えるHDなんだな」

艦長は、寂しくない気がした。


「しかし艦長、電磁場ハイウェイが、少し直線ではなくなっています」

「どういうことだ?」

ケサン艦長には、すぐには分からなかった

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