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PS72パルサー星系防衛軍  作者: 星野 光一
73/132

【73】敵は外にあり。 たぶん。

戦艦[ジョージア]のブリッジは静かだった。


エンジンのわずかな音と、微かな振動が分かる程度だ。


報告しなければならない事と、艦長の質問に答える以外に、HDから話しかけてくることは、まず無いからだ。


「司令、目的地はどこですか?」

航海長の席にいるHDが、珍しく話し掛けてきた。


「ん、んー?」

艦長のケサン少将は、少し驚いた。


「分からん。この電磁場のハイウェイが行き着く所だ」

正直、少将にも理解できなかった。


第5防衛隊を追っている時は、[あさひ]のトラクター・ビームが電磁場変位を起こして、それが痕跡となっていると考え、それを追っていた。

そして、その道はアルデバランへ一直線という計算結果が出ていた。


しかし[ジョージア]は、その途中で第5防衛隊に追い付いてしまい、[あさひ]も確保し、航行は止まった。


ところがこの先へ、まだ電磁場のハイウェイが続いているのだ。

そして、少将は気付いた。


そもそも[あさひ]は、この電磁場に乗ってアルデバランからこちらへ来たのではないか、と。


だから、この両方向ハイウェイでアルデバランへ行けば、秘密が解き明かされるだろうと。


* * *


「では、具体的には、どこへ?」

副長のサミデ大佐が、また質問した。

戦艦[カリフォルニア]のブリッジでは、まだ議論が続いていた。


「銀河系をこう見ると………」

艦長のカジン少将が手のひらを上にして大佐に見せる。


「くじら座のミラへ。

オリオン座のリゲルへ。

こいぬ座のプロキオンへ。

ふたご座のポルックスへ。

おとめ座のスピカへ。

各方面にいた我が軍の艦隊が、不明艦隊がこの星ぼしへ向かってくるのをスーパーワイドレンジレーダーで捉えた時、奴らはみな、このように上の方から来た」

少将は、手のひらに上から何かが降りて来るように示した。


「だから私は、奴らの巣は、このへんにあると思う」

少将は手のひらの上の方に、もう一方の手を拳にして浮かせて見せた。


「では、まずはこのカシオペア座の真上へ?」

大佐が聞いた。


「まー、銀河系の上の方へと言っても、広いからなー。降りて来た奴の逆を行くのが正解だろうな」

少将は、手のひらの何ヵ所かをつっ突きながら言った。


* * *


「じゃ、[もがみ]の処女航海ってことで」

ヒラセ副司令が言った。


「名案だと思います」

サクラが同調した。


「作戦司令部が判断するんじゃないのか?」

俺が一番弱気なのか?


「戦功は早く取ったもん勝ちですよ」

サクラが言ったので、みんな注目した。


「よし、サクラ、この件を各艦長に連絡してくれ」

「はい。まずは同意を取り付けます」

「オッケー」


「作戦司令部へは、どうしますか?」

「んーーー。忙しいから、いいや」

俺は、司令部に無断で行くことにした。


「あー、あと、サクラ。[もがみ]の人事はできた?」

「はい。申し上げます。

艦長にクロダ少佐。少佐は本艦隊の司令官です。

副長にヒラセ大尉、大尉は本艦隊の副司令官です。

航海長にノラン中尉、

測距長にナラル中尉、

戦術長にサバラ中尉、

機関長にマテラ少尉、

艦務長にコセラ曹長。以上です」


「サクラは?」

「私は再度、専任曹長を務めさせていただきます」

「各部署、欠員は無いか?」

俺は、最終確認した。


「はい。総員準備完了です」

サクラは答えた。


「よし!役者は揃った!出航は3時間後の0900時!」

「アイアイサー!」


* * *


「こちらペルセウス座方面軍第9機動艦隊、旗艦[いせ]、火星本部作戦司令部どうぞ」

「こちら司令部、[いせ]どうぞ」


「本艦隊は現在、ペルセウス座ミルファク星系で不明艦隊を追跡中。付近艦隊の応援願う」


戦艦[いせ]を旗艦とする第9機動艦隊は、1週間ほど前にワイドレンジレーダーに現れた不明艦隊に注目していた。


この頃、第9機動艦隊は忙しかった。太陽系から上方向に上がる不明船もキャッチしていたからだ。


しかしこれは、司令部に要請したところ、第1遊撃機動艦隊に引き継がれ、[SRL5150便]と重巡[ながら]の発見に繋がった。


今、[いせ]が追っているのは、銀河系の外からやって来た。

レーダーレンジはまだワイドモードのままなので距離は800,000ほど。


詳細は不明だが、他の不明艦隊と目的は同じなのだろう。

軍の艦艇か、民間船の捕獲か。いずれにしても不明艦隊が目的を果たす前に対処しなければならない。


第9機動艦隊は、戦艦[いせ]、[さつま]、[たじま]、重巡[てしお]、[あぶくま]、[ちくご]を主力に合計15艦編成の中堅艦隊だった。


「艦隊司令から全艦に達する。本艦隊は現在、800,000前方の銀河系外から飛来した不明艦隊を追跡中である。現在のところ当該艦隊の目的は不明であるが、戦闘となることもあり得る。ついては全員、軍務を全うし我が軍の誇りを堅持することを希望する。以上」

司令官のスカヤ少将は、こう訓示した。

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