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PS72パルサー星系防衛軍  作者: 星野 光一
72/132

【72】敵はいったいどこから来るのか

タグチ艦長は[さわかぜ]で[ながら]を牽いていた。


途中まででいいとか、[ながら]がスッポリ入る大型ハンガー船を送るとか、そういう粋な計らいは、まだ宇宙軍総司令部からは来ていない。


この間は不明艦隊を追って、太陽系の木星軌道からガニメデ軌道に移行して、忍者の手裏剣のような形の銀河系を直角に上がった。


今回はその逆で、太陽系の方へ降りて行く。


宇宙には上も下も無いのだが、宇宙空間を飛ぶことについて人に説明する時、一応、上と下を決めておいた方がお互いに同じ物を想像することができる。


一応、念のため、[ながら]の方にも簡易エンジンを取り付け、[さわかぜ]がやむを得ず減速しなければならない場合は、逆噴射することで追突を防ぐことはできるが、所詮、アンカーで繋がれているだけなので、一定速度で牽引し続けるのが最も安全なのである。


とは言え、こんな速力では、太陽系到着までどのくらいの時間が掛かるのだろうか。


* * *


戦艦[ジョージア]のケサン艦長は、今、目の前にある[あさひ]や[ルイテン]を含む第5防衛隊の艦艇に、全く興味が無かった。


もはや、これらは残骸である。


ケサン艦長は叩き上げの艦長だった。

元々[ジョージア]が旗艦を務めていた第38連合艦隊も、[ルイテン]が旗艦を務める第5防衛隊も、若かりし士官たちが自分たちの命の時間と引き替えに育ててきたものだ。


当然、ケサン艦長と[ルイテン]のエルテ艦長は戦友以上の付き合いだったと言ってよい。

[ルイテン]は、トラクター・ビームで牽引された。

艦内の人間がどうなったかは、推して知るべしである。


捜索に入ったHDの報告では、高周波電磁波の影響で生存者なし、となっていた。かつての戦友は、その一文に含まれるだけの存在だった。そもそもそれがエルテ艦長かどうかさえ分からない。


ケサン艦長には、復讐の目標しかなかった。

壊れようがどうなろうが構わないHDを使って、自分独りで自分の友を黒焦げにした奴に復讐を果たすのだ。


「航海士、微速後進」

ケサン艦長は、航行担当HDに命令した。


「微速後進、アイア………」

「復唱は、いらん!」

HDが復唱するのを遮って、ケサン艦長が言った。


「命令に黙って従えばよい」

[ジョージア]は、艦首スラスターを微噴射し、[あさひ]から離れつつあった。


「[ジョージア]より司令部へ。本艦はこれより単艦索敵航行を開始する。以上」

ケサン艦長のこの一報では、[ジョージア]の反乱と受け止められても仕方がない。


艦長には、そこまでの覚悟があった。


* * *


「司令、行く宛てはあるのですか?」

戦艦[カリフォルニア]のブリッジで、サミデ副長はカジン艦長に尋ねた。


「んー、あると言えばある。無いと言えば無い」

「そんな、適当な」

副長は腕組みして、艦長を見た。


「あると言えば敵のとこ、無いと言えばウチに帰る」

艦長はニヤリと笑って言った。


「どうする?副長」

「休暇も頂いたばかりですからねー。その分くらいは働かないと」

「じゃ、行くとするか」

艦長は、深々と艦長席に座った。


「何か、見当は付いているのですか?」

副長は聞いた。


「確証はまだ無いが、気になる所はある」

「そうなんですね。私も気になる所があります」

副長はボンヤリと窓の外を見た。


「今までの不明艦隊がやってくる方が、どうもな」

艦長がポツリと言った。


すると副長は艦長の方へ向き直って、

「じゃあ」

といって、上を指差した。


* * *


「今回の目標は、本拠地があると考えるのが自然でしょう」

サクラが言った。


「もう、『敵』と呼んでもいいんじゃないか?」

ヒラセ副司令が訂正を求めた。


「これまでの不明艦隊の最初の発見方角には、規則性が認められます」

サクラが説明する。


「行方不明になった艦艇を、そこで改造していると?」

副司令が聞いた。

「その可能性が高いと」

「それは、考えられる」

俺が言った。


「だから、そこへ人的資材を持って行こうとした」

「なーるほどね」

副司令が、やっと飲み込み始めた。


が、

「けど、場所の見当はつくのか?」

と聞いた。


「今まで知られていなかった所でしょうね」

サクラの説明は、小出しなのが特徴だ。


「銀河系にそんな所があるのか?」

副司令は、自分で言って、ハッとした。


「銀河系の外か」

「そうです」

サクラが答えた。


「とは言っても、銀河系の外だって、まだ実査していないだけで、大体の事は分かってるぞ?」

まだ副司令が食い下がる。


「銀河系から外れれば、極端に星の数は減りますからね」

「だろ?ただ、まだ行ってないだけだし、探査機が行って、どんな星かは、ほぼ分かってる」

「新しい星以外は、ですけどね」

サクラは、また含みを持たせる。


「あ!今年発見された星か!」

副司令の頭の中に、陽が差したようだ。


その様子を見て、サクラが立ち上がって言った。

「PS72パルサー星系です」

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