【71】仮想敵についての検証
20:45
「艦隊司令より、全艦へ。各部署、点呼完了報告せよ。点呼時不在者は、所定の手続きに則し処分対象とすること。以上」
第15連合艦隊のカジン少将は、厳しく!通達した。
「さて、さて、みんな帰って来ましたかね?」
副司令官のサミデ大佐が笑って言った。
「私だったら………。まあ、いいか」
カジン少将は、笑いながら艦長席を立った。
「現在、全艦からの点呼報告、集計中です」
ブリッジの通信コンソールに人差し指を繋いだHDが言った。
「大尉、何人脱走するか、賭けるか?」
サミデ大佐は、レーダー担当のジヤク大尉に言った。
20:55
「点呼終了、集計完了。不在者0です」
HDは報告した。
ヒュー~
大佐は口笛を吹いた。
「信頼に足る隊員たちだな」
カジン少将は、軍服の襟を正し、制帽をかぶった。
「全艦、出航準備!」
「出航準備、アイアイサー」
少将の命令に、大佐が復唱した。
「各員、出航準備!」
「出航準備!」
「出航準備、アイ」
ブリッジ各部署が、がぜん騒がしくなった。
「ブリッジより機関へ、エンジン、アイドルスタート」
「エンジン、アイドルスタート、アイ」
ウィーン、ウィーーーン、ウィーーーーーー
かすかな音と、微かな振動が、ブリッジに伝わる。
「イオンエンジン、異常なし。原子炉、異常なし」
「艦長、機関、異常ありません」
大佐が報告した。
21:00
「よろしい。全艦出航、微速前進」
カジン少将が出航を命じた。
「出航!微速前進!アイアイサー!」
* * *
「[さわかぜ]以外の艦は、退避せよ」
俺は、[さわかぜ]以外の6艦へ命じた。
「こちら[さわかぜ]、[ながら]との連結、完了」
「こちら[もがみ]、了解」
自力航行不能の艦を牽引して航行するのは、当然ワープ航法では無理なので、通常宇宙空間を航行するしかない。
できれば火星かトリトンまで運びたいところだが、通常航行ではあまりにも遠すぎる。
なので、途中まででいいとか、船がスッポリ入る大型ハンガー船を送るとか、宇宙軍司令部が粋な計らいをしてくれることを望むしかない。
「タグチ艦長、今回は通常宇宙空間を、可能な限り速く、安全に、火星またはトリトンまで曳航してもらいたい」
俺は、タグチ艦長に命じた。
「はい………。分かりました………」
タグチ艦長の気は重そうだ。
「うまくいけば、かなりレベルアップすると思うよ」
「はい。了解しました」
タグチ艦長の機嫌が治ったようだ。
旗艦[もがみ]はじめ、第1遊撃機動艦隊の7艦が見守る中、[ながら]を牽引して[さわかぜ]が航行を開始した。
「さて、これからの我々の行動なんだが」
[さわかぜ]を見送ってから、俺は全艦長を[もがみ]のブリーフィングルームに集めて、今後、司令部からどのような命令が下されるかという推測と、命令が下されなかった場合の自主的な行動について、全艦長の意見が聞きたかった。
「まずベースとなるのは、現在、どこが戦闘地域となっているかということで、次に、そこでの相手が何者かによってシナリオが変わってくると考えられます」
ヒラセ副司令が、まず発言した。
「現在のところ交戦している場所は無く、以前報告が相次いだ不明艦隊探知の情報もありません」
ハロヤ航海長が言った。
「では、こちらから動くべきかと」
サクラが言った。
「こちらから?何か宛てがあるのか?」
ヒラセ副司令が尋ねた。
「不明艦隊の航跡をたどったり、捕獲船を牽引して行く方向を推測すれば、位置的には何か手掛かりが掴めるかもしれません」
「なるほどー」
サクラの説明に、航海長が大きく頷いた。
「あとは、過去に行方不明になった艦の調査です。いつどこで、どのように行方不明になったか、何か共通点があるはずです」
「それを調べるのは、君の方が得意じゃないのか?」
「はい。大丈夫です」
サクラの提案に、副司令がサクラに命じた。
「よし、じゃあ、これまでの出来事を繋ぎ合わせて、何らかの手掛かりを探してみよう」
俺は、相手が何者なのか、こちらから調べることにした。
「これまで現れた不明船や不明艦隊は、過去には宇宙軍籍にあった艦です。そして、行方不明となった時期については6960年代以降となっています。また、行方不明となった場所については、全てワープ航行用の異次元空間であるという共通性があります」
サクラが報告した。
「では、行方不明となる現象については、多少なりとも共通性があるということだな」
副司令が言った。
「はい。それと、行方不明となった艦に対して、発見された艦の数ははるかに少ないですが、全てが何者かによる改造が施されており、発見時は無人の遠隔操作航行をおこなっておりました。そして、トラクター・ビームで目標を捕獲する際も、遠隔操作で行われた可能性が高いと考えられます」
サクラが続けて推論を述べた。




