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PS72パルサー星系防衛軍  作者: 星野 光一
70/132

【70】不明艦隊の目的は………

「艦隊全員に達する。本艦隊はこれより5時間後の2100時に現宙域から離脱する。それまでに艦隊へ戻らぬ者は、脱走者扱いとなるので、

十分に、注意するよぉーーーーーに!いじょぉーー!」

第15連合艦隊、旗艦[カリフォルニア]からの通達は、このようなものだった。


艦隊全員に、思い入れと名残りと未練があることが分かっている上での帰還命令であった。


「まさか、脱走者が出ますかねー?」

[カリフォルニア]の副長、サミデ大佐が言った。


「宇宙軍への忠誠心が勝つか、里ごころが勝つか……」

艦長のカジン少将も、多少の不安は持っていた。


「バージョン2.4以上であれば、確率は低いでしょうね」

副長は言った。


人間は、人類バージョン2.4.2になった時、軍への忠誠心を高める作用のある分泌物の放出と、軍を離れる際に嫌悪感を感じる作用のある分泌物を放出する器官が、体の中で進化操作されたのである。


よって、この時期から徴兵制を導入しなくても、宇宙軍への入隊希望者は、前年比258%に及んだ。

「私も、退役したらシェダルに住みたいものだ」

カジン少将は言った。


* * *


シュィーーーーーン!

シュィーーーーーン!

ビカッ!

ピカーッ!

[ジョージア]の砲搭から発射されたレーザーは、[あさひ]の左舷ミサイル発射管を破壊した。


「よし、警備部隊は、[あさひ]及び他の各艦へ臨検に入れ」

ケサン艦長の命令一下、HDたちが乗り込んだ舟艇が、まずは[あさひ]へ、次いで[ルイテン]はじめ第5防衛隊の各艦へ臨検に入った。


第5防衛隊は、旗艦を戦艦[ルイテン]とし、戦艦[メンカル]、[ディフダ]、[カファル]、[バデン]が牽引されてきていたが、[ルイテン]と[バデン]以外は、そもそもミラでの戦闘で、かなりの損傷を受けていた。


「先に受けていた報告と同様、この残骸から推察して、これはミサイル発射管として機能しないようです」

やはり、[あさひ]のミサイル発射管は、トラクター・ビーム発射装置だったようだ。


「こちら[カファル]班、損傷が激しく、完全に気密が保たれていませんので、生存者の可能性はありません」


「こちら[ルイテン]班、遺体は全て高周波電磁波の影響が原因と思われます」


「各班の調査情報を集約したところ、現在のところ生存者は確認できません」

ケサン艦長は、臨検が一段落したと思った。


* * *


「[もがみ]から全艦へ。[さわかぜ]が[ながら]を曳航するため、全艦、一旦アンカーを解除するように。

繰り返す。全艦、アンカー解除」


副司令官であるヒラセ大尉が全艦に達すると、各艦から再び技術班や工作班などの作業部隊を乗せた舟艇が[ながら]へ向かった。作業部隊が[ながら]の艦体に撃ち込まれ食い込んだアンカーの先端部を外してやらないと、自艦に巻き戻せないからだ。


「だいぶ時間が掛かりそうですね」

ヒラセ副司令が言った。


「1次臨検後に、すぐに着手しておけばよかったんだが、段取りミスだな」

俺は、副司令に言った。


「申し訳ありません」

と、ヒラセ副司令が言ったが、

「副司令の責任ではありません。私の責任です」

サクラが言った。


「まあ、まあ、サクラ、作業を急いでくれればいい」

俺は、サクラに言った。


「こちら[あきかぜ]、アンカー解除完了」

「[あきかぜ]了解」

俺が、答えた。


「で、サクラ、人事異動を調整してくれ。

この艦の要に優秀なチーフを配置してほしい」

「かしこまりました。HDを置いてもいいのですか?」

「サクラ以外は、なるべく人間がいいけど、サクラが認めたHDならいいかな」

俺は、サクラが気を悪くしないように気を付けた。


「[きぬかぜ]、アンカー解除完了」

「こちら[つきかぜ]、アンカー解除完了」

「サクラ、だいたい外れたかな?」

俺は、サクラに聞いた。


「ほぼ外れて、今[さわかぜ]が繋ぎ直しています」

「オッケー」

俺は、ブリッジの中をウロウロしてみた。

やっぱり、広いわ。


「しかし、何故、民間船を捕獲したんですかね?」

ヒラセ副司令が聞いた。


「そう言えば、そうだな?」

俺も、そう思った。


「人的資材が欲しかったのかもしれません」

サクラが言った。


「と言うと?」

「科学者や技術者や、何らかのエキスパートが」

「なーるほど」

俺は、サクラの推測に納得した。


「でも、トラクター・ビームで誘拐したら、パー」

ヒラセ副司令は、手のひらを上に向けて開いた。


「なーんか、引っ掛かるな」

俺は、腕を組んだ。


「どうしました?」

サクラが聞いた。


「ワープ航路開拓調査とか、トラクター・ビームとか、少し前の技術で、まだ完成されていない」

「はい、そうです」


「で、それに関わるかどうかは分からないが、とりあえず科学者とか技術者とかをかき集める」

「はい」


「なんか、未完成の技術を完成させようとする意図が感じられないか?」

俺は、副司令とサクラを交互に見ながら言った。


「たしかに」

2人は、声を揃えて答えた。

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