【68】不明艦 vs 戦艦[ジョージア]
「クロダ司令、[もがみ]艦長代理、ヒラセ大尉です」
「はじめまして、ヒラセ大尉。[もがみ]の回送航行、まことにご苦労さま、かつ、ありがとうございます」
俺と、ヒラセ大尉は、敬礼を交換し、握手した。
「自分は今回、少佐となったわけだが、大尉には本艦隊の副司令官を任せたいのだが、いいだろうか?」
俺は、LEVEL-30になって、少佐に昇級した。
「はっ。自分でよろしければ、少佐のお手伝いをさせていただきたく思います」
ヒラセ大尉は制帽を小脇に挟んで、お辞儀で答えた。
「で、大尉にはこの[しらかぜ]を預けて艦長兼副司令官ということになるが、よろしいか?」
「はいっ。光栄です」
「よし。じゃ、舟艇で[もがみ]へ移るが、何かあったら連絡を」
「はっ。では、お見送りを」
俺とヒラセ大尉は服を整え、制帽をかぶった。
ピィーーー!フィッ!
ハロヤ航海長が号笛を吹いた。
「艦長は[もがみ]へ」
舟艇発着所へ降りて、俺は、宇宙服を着た。
発着所も舟艇の中も空気が満たされ気密が保たれるのだが、安全管理上、規定以下の船で宇宙空間へ出る場合は宇宙服を着ることが義務付けられている。
ヒラセ大尉と敬礼を交換し、俺は舟艇に乗り込んだ。
あ、忘れてはいけない。サクラも一緒だ。
舟艇は発着口から出て、[しらかぜ]を一周した。
外からまじまじと見るのは久しぶりだった。
アンテナが曲がっている。
艦首の一部の塗装が剥げている。
甲板の防護柵が折れている。
これらは、あの小惑星帯で高速航行訓練をした時、
ナジラ戦術長が小惑星をレーザー破壊した時に受けた損傷だろう。
あの時は損傷無しということで[しらかぜ]以外の艦隊全員に夕食を奢るというペナルティは免れたのだが、今では笑い話で許してもらえるだろう。
* * *
「艦長、目標まで70,000、船影は5です」
戦艦[ジョージア]のレーダー担当士官は、ケサン艦長に報告した。
「本艦の速力は?」
「現在300,000です」
「目標の速力は?」
「50,000です」
レーダー担当が答える。
「では、間もなく捕捉できるな」
艦長は、身を乗り出して前方を見ている。
「距離60,000」
「戦術長、戦闘準備!」
艦長は、戦闘準備を命令した。
「距離50,000」
「艦長よりCIC、準備はいいか」
「CICより、オッケーです!」
「CIC、識別できるか?」
艦長はCICに確認した。
「一番奥が不明船、手前5艦が友軍です」
「不明船だけ狙えるか?」
「もちろんですよ、艦長」
CICからは自信のある答えが返った。
「よし、ミサイル攻撃だ」
艦長が命じた。
* * *
「ミサイル巡洋艦ともなると、デカいなー!」
[もがみ]の周りを一周する舟艇の中で、俺はサクラに言った。
「全長200メートル、全幅25メートルです」
「あ、今さらだけど、[しらかぜ]はどのくらい?」
「全長125メートル、全幅20メートルです」
「そうだったのか。今さら、すまん」
俺は、自分の無知をサクラに謝った。
「ちなみに[しらかぜ]の乗員数は1,200名ですが、[もがみ]の乗員数は1,800名です」
「そっか、ありがとう」
火星上空には、第4機動艦隊が帰還していて、近頃珍しい大艦隊の凱旋ということで、基地も上空もお祭りムードだった。第4機動艦隊だけで戦艦5艦を擁し、ミサイル巡洋艦3、重巡3、軽巡3、護衛艦2、フリゲート母艦2、駆逐艦5、潜宙艦3、ほか特務艦5。
第4機動艦隊に無いのは、航空母艦だけと言ってもよい。
火星基地に作られたまさに第4機動艦隊専用のハンガーは半球状のドームを開け放ちAタイプの戦艦専用ハンガー5基に、No.1に[むつ]、No.2に[ひたち]、No.3に[のと]、No.4に[ひだ]、No.5に[みかわ]が下りた。
火星のほぼ半分は軍事基地として利用されているが、半分には一般人も居住しているし、その地下には、進化した地下都市が建設され、小さい惑星ながら色々な意味で銀河帝国の中心部を成しているのは間違いなかった。
* * *
「ミサイル発射!」
ケサン艦長は命じた。
バシューッ!
バシューーン!
バシュッ!
バシューーーッ
「ジョージア」の艦首ミサイル発射管から、4発のミサイルが発射された。
「距離30,000、巡航中」
「目標、速度変わらず」
「あっ!」
レーダー担当士官が声を上げた。
「どうした!」
艦長が立ち上がった。
「トラクター・ビーム、解除されました」
「見方艦を解放したか!」
艦長は手を叩いて喜んだ。
「距離20,000」
「艦長よりCIC、レーザー射撃準備!」
「CIC、アイ」
「ジョージア」は艦首の主砲を目標に向けた。
「距離10,000、ミサイル、見方艦を迂回します」
「距離5,000」
[ジョージア]のブリッジは総立ちになった。




