【67】第15連合艦隊 観光地にて休暇とする
「[もがみ]から[しらかぜ]へ」
「[もがみ]どうぞ」
「本艦は現在、貴艦から35,000の距離、確認できますか?」
サクラが[ながら]へ出向いているので、[しらかぜ]の測距長席は空席だった。
隣の航海長席のハロヤ軍曹が「あっ」と言った。さっきまでレーダーを気にしていた時は何も映らなかったが、今は5時の方向、距離35,000に光点が表示され、[GMC-297-MOGAMI]と表示されていた。
「あっ」はマズいんじゃないかい?
俺は、ハロヤ航海長に言った。
「代替HDを着かせます」
「そうしてくれ」俺は、航海長に言ってから、
「こちら[しらかぜ]、[もがみ]確認しました」
と、応えた。
「こちら[もがみ]、これより接近します」
「[しらかぜ]了解」
[もがみ]とやりとりを終えると、左腕に刺激を感じてスキルアップモニターをタッチすると、「LEVEL-30」と表示されていた。
俺は、ヘッドセットを着けて、[さわかぜ]のタグチ艦長を呼び出した。
「はい、タグチです」
「艦長、申し訳ないが、[ながら]を火星まで単艦曳航してほしい」
「えー、単艦でですかー?大丈夫ですかねー?」
タグチ艦長は、不安そうだ。
「太陽系に近いし、このあたりでは戦闘は無いだろう」
「まあ、そうですけど」
「頼むよ。大幅にスキルアップするぞ」
「あー、…………分かりました」
タグチ艦長は、了承した。
「司令、[もがみ]の距離10,000です」
いつの間にかレーダー担当士官の席に着いていたHDが報告した。
「よし、分かった」
* * *
「艦長!ミドルレンジレーダーに感あり!
方位022、距離500,000、数隻の船のようです」
戦艦[ジョージア]のブリッジで、艦長のケサン少将は、レーダー担当士官から報告を受けた。
「見つけたか!」
艦長は思わず立ち上がった。
「航海長!加速せよ!」
「アイアイサー」
ウィ、ウィー、ウィーーーーーン
エンジン音がブリッジに響く。
振動も大きくなっていく。
「速力200,000、さらに加速中」
「目標、距離450,000」
「今度は逃がすな!絶対に逃がすなよ!」
艦長は、真っ赤になって怒鳴った。
* * *
シュバーーーーーンッ!
シュバーーーーッ!
シュバーーーーーンッ!
シュバーーーッ
シュバンッ!
シュバッ!
もし、見慣れた人がいたとしたら、
いつでも大迫力で、壮快な光景だ。
トンネルから高速で飛び出した車が急ブレーキで止まるような感じ。ワープ空間から通常宇宙空間に艦艇が現れる瞬間の表現は、これが一番適しているだろう。
今、ワープ空間から通常宇宙空間に現れたのは、戦艦[カリフォルニア]を旗艦とする第15連合艦隊だった。
「こちら第15連合艦隊司令カジン少将だ。カシオペア・シェダル方面、救難救助隊テルネ大佐を頼む」
第15連合艦隊は、カシオペア座シェダルの事故処理現場にやってきたのである。
「こちらテルネ大佐です。カジン少将どうぞ」
「やあ、大佐。今回の計画の立案者を連れてきたので、上手にコキ使ってやってくれ」
「はい。かしこまりました」
[カリフォルニア]の舟艇発着所でカジン少将は、回収調査官のタトル大尉と握手し、
「現場では、君の力が必要になるだろう」
と言って、大尉を送り出した。
少将はブリッジに戻ると舟艇が遠ざかって行くのを確認し、全艦に通達した。
「艦隊司令より全艦全員に達する。
本艦隊は、これより2日間現宙域に留まり、休暇休養期間とする。また、やむを得ない場合のみ、現場司令部となっているビッグ・ベア、または惑星シェダル・ベータとの往来を認める。なお、その際は必ず上官の承認を得ること。諸君らの節度ある行動を希望する。以上」
「イーーーーーーーーーヤッホーーー!」
カジン少将の全艦通達が終わると同時に、
全艦で歓声が上がった。
* * *
「この装置で目標のデータを入力し、自動固定できるようにして、あのミサイル発射管からトラクター・ビームを発射して捕獲する。ビームを受けた目標の電子機器類は破壊され、内部の生物も生命を維持するのは困難な状態となるでしょう」
重巡洋艦[ながら]のブリッジで、技術班長がサクラに説明した。
「今あっちで、予め設定した周波数以外との通信ができないようにすることと、外部からの誘導操艦ができないようにしていますので、我が艦隊の駆逐艦に曳航されている途中で何者かに乗っ取られることもないでしょう」
「よろしい。ご苦労さまでした」
班長の説明に、サクラは礼を言った。
「我が軍でも、以前はトラクター・ビームの研究をしていたんですがね、機器や人体に影響を及ぼさずに目標を捕獲する技術が成功せず、現在では研究は中止になっています」
班長は言った。
「知っています。あなたは『わが軍』と言いましたが、この[ながら]は、我が軍の巡洋艦ですよ。だから、なおさら、謎なのです」
サクラは、技術班長に言った。




