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PS72パルサー星系防衛軍  作者: 星野 光一
66/132

【66】向かうのは、解決か、破滅か

カシオペア座シェダル・アルファ星系、惑星シェダル・ベータが今回のスペース・ギャラクシー・エアの事故現場に最も近い惑星であった。


すでに6500年代に人類はここまで到達していて、様々な調査を行い、生命の痕跡は無かったものの、それほど大規模なテラフォーミングをおこなわなくとも、人類が利用できる惑星であることが分かった。


そしてその後もシェダル・アルファ星系の各惑星の調査が進められ、「カシオペア座の太陽系」として、恒星シェダルを中心としたハビタブルゾーン内に、人類にとって魅力的な惑星や衛星、または小惑星が多数存在することが分かり、鉱工業や経済、及び観光資源として莫大な利益を人類にもたらすことが期待されていた。


ちなみにシェダルは、地球から228光年の位置にある、橙色巨星で、中心部の水素核融合反応が終わりつつあり、収縮と膨張を繰り返しながら赤色巨星へとなってゆく運命の星である。


* * *


追加投入された救難救助隊は、目覚ましい活躍を見せた。

そもそも死傷した人間に対峙する仕事でもあり、当初の凄惨な状況を目の当たりにしたショックさえ乗り越えてしまえば、そもそもの仕事に戻ればいいだけのことであり、それほど時間を要すこともなく、隊員たちは淡々と自分の仕事をこなすようになった。


もちろん、軍やSGA社が必要な機材を大量投入したことも奏して、この事故は当初の予想よりはるかに早く収束することが期待されるようになった。


惑星シェダル・ベータには救助隊員用はもちろん、この作業に関わる民間業者のためにも、住居はもちろん、インフラ整備、医療や生活に必要な物資の提供、余暇や娯楽目的の施設、あるいは必要以上のサービスが提供される「都市」が建設された。


元来、カシオペア座方面は観光立地であったが、特にシェダル星系は人気があり、銀河系内でも指折りの観光地域であった。原因は不幸な事故ではあるが、今回のこの事故によって更に人的及び物的移動が多くなり、不謹慎な観光客も増え、カシオペア・バブルを迎えるであろう、というのが大半の投資家の見通しとなった。


また、この事故処理作業が再開された3日後、当初不明だった[SRL773便]に最初に衝突したワープ明けの文字通り「不明艦」について、残留物からこれも6970年に異次元空間内で行方不明となった、第241航路調査艦隊所属、護衛艦[ふそう]であることが判明した。


しかし、[ふそう]の艦長シジラ中佐以下、全乗組員の遺体は、一部さえも全く確認できなかった。


護衛艦といえば、戦艦よりは小さく、巡洋艦と同程度の大きさの艦だが、異次元空間から現実宇宙空間へ移行した直後は、光速から重力を感じずに急減速するようなもので、通常航行する船よりはるかに速い。それが10,000人も乗ることができる超大型旅客船が相手でも木っ端微塵にしてしうことは、想像に難くない。


* * *


「さて、サクラ、これをどうするか?」

俺は、重巡洋艦[ながら]を指差して言った。


「現在、これらを保管、調査しているのは、火星本部とトリトンですからね、どちらかへ搬送するのが、現時点では正しい選択かと」

サクラは答えた。


「搬送って、曳航していくのかい?」

「そうですね」

サクラは、簡単に答える。


「[もがみ]と合流後、駆逐艦1隻で曳航させるのがよろしいかと」

「そうか、分かった。では、それまでに、[ながら]が勝手に動き出さないよう、全て確認して、安全に曳航できるようにしてくれ」

俺は、サクラに命じた。


「了解しました」

「設備部、技術部、警備班は、舟艇発着所に集合せよ」

サクラは必要部署に集合をかけた。


「副長、各部、集合しました」

サクラに報告が入ったのは、集合をかけてから15分後だった。


「司令、では、もう一度[ながら]に行ってきます」

「お、頼んだよ」

俺は、サクラに任せた。


ブリッジの窓から、[ながら]に向かう舟艇が見えた。

他の駆逐艦の舟艇は、第1次臨検終了後、ほとんどが母艦へ帰っていた。


「各部、通信回路と、ビーコン受信回路、遠隔操作連携、自律航行回路、その他の他意による操艦が不能となるように対処せよ」

サクラが各部署へ指示するのが通信で聞こえる。


「警備班は、周囲の警備を厳とせよ」

「了解しました」

各部署の人間やHDが散らばり、作業を始めた。


「あと何人か、私と一緒にミサイル発射管の所へ来てくれ」

サクラと3人ほどの技術部員が、ブリッジ前の甲板に設置された、ミサイル発射管のところで作業を始めた。


「さて、これが問題のものです」

「ミサイル発射管ですよ」

「技術部員なら、もっとよく見てください」

「なるほど、改造してある」

「これじゃ、ミサイルは発射できないな」

「ほら、制御装置は、ミサイル発射とは全く関係ないものに変えてある」

「当然、ミサイルの装填なんかできない」

「トラクター・ビームの発射装置だ」

技術部員のトップが、サクラに言った。

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