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PS72パルサー星系防衛軍  作者: 星野 光一
64/132

【64】[ながら] 臨検

その6977年に行方不明となった、重巡洋艦[ながら]が、目の前にあった。


太陽系と銀河系の縁との中間地点あたりで、駆逐艦[しらかぜ]を代理旗艦とする第1遊撃機動艦隊6艦のアンカーが打ち込まれ、まさに張り付け状態で神妙にしていた。


そして[ながら]には各艦からの警備班が乗り込み、臨検を実施しようとしていた。


「こちら[はまかぜ]、[しらかぜ]どうぞ」

第1艦隊のうち[はまかぜ]は、[ながら]を捕獲する直前に解放された[SRL5150便]の保護に別動していた。


「こちら[はまかぜ]、[5150便]の乗員乗客は、ダメだ」

「いったい、どうしたんだ?」

俺は、、アツシに聞いた。


「俺は、まだ高校生だぜ?ほんとは」

「だから、なんなんだよ?」

「死人を見たのは、初めてなんだよ」

アツシは、マジ嫌そうに言った。


「そうなのか」

「それも、普通じゃないからな!悪いけど、吐かせてもらったよ!」

俺にそう言われても。


「どうなってたんだ?」

「思い出しただけでも、吐きそうなんだよ」

「じゃ、ウメは見てないのか?」

俺は、アツシはムリだと思って聞いた。


「あ、そうか、ウメに説明してもらうわ」

アツシは、ウメと交代した。


「こんにちは司令、ウメです」

「ウメ、久しぶり」

「早速ですが、乗員乗客2,580名、全員死亡です」

「そうなのか。原因は?」

「トラクター・ビームが原因かと思われます」

「トラクター・ビーム?」

俺は、ウメに聞いた。


「高周波電磁波に長時間曝されたようです」

「電子レンジ状態だったのか」

「はい」

「そうか、ご苦労だった。

ついでですまないが、詳細を火星の作戦司令部へ送っておいてくれないか」

「了解しました」


* * *


「艦尾右舷減圧室ドア、手動開扉します」

「よし、開けろ」

[ながら]に乗り込んだ警備班からだった。


警備班は、ドア横のボックスを開け、中の手動レバーを上下させて、減圧室へのドアを少しずつ開けた。


シューッと中の空気が艦外へ吐き出された。

警備班がレバーを動かし、さらにドアを開ける。


減圧室のドアは外と中で、一方が閉まっていないともう一方は開かないしくみになっている。外から手動で開くということは、中の隔壁は閉まっているということだ。


ドアが開くと、警備班が20名ほど中に入った。あとの10名は、甲板で警備に着いた。


「くそ、面倒くせー」

中に入った警備班がボヤいた。

電力が落ちているらしく、外のドアを手動で閉めないと、中の隔壁が手動でも開かない。


「[あきかぜ]班、[きぬかぜ]班、艦首左舷より入りました」

「警備班リーダー了解。気を抜くな」

ネルテ警備班長が答えた。


「こちら臨検リーダー、入りました」

臨検リーダーは、サクラだ。


「[しらかぜ]了解。気を付けろよ」

「了解」

今、[ながら]には150名くらい乗り込んでいる。


艦内は電力が落ちて、真っ暗である。

全員、ヘルメットと武器に付けられた照明を頼りに捜索している。


「[あきかぜ]班、艦首部分を艦底から上がってくれ」

「了解」


「[しらかぜ]班は、艦橋及びCICへ」

「了解」


「[いそかぜ][つきかぜ]班は、機関室へ」

「了解」


「[さわかぜ][きぬかぜ]班は、艦尾及び武器庫へ」

「了解」


「各班の艦外警備担当も頼む」

「了解」

全て、サクラと警備班長が指示をした。


「全ての電力が落ちてます」

隊員がそれぞれ独り言のように報告する。


「甲板は異常なし」

「この先が機関室だ」「行ってみよう」

「そこを上がるとブリッジだ」「オッケー」

「兵器保管庫に、ミサイル、魚雷は無し」

やはり、ミサイルや魚雷は無かったのか。


「ミサイル発射管が改造されています」

なんだって?


「今の報告を詳細にせよ」

サクラが問い掛けた。


「ミサイル発射管が……、一体、どうなっているのか、とりあえず、これでは発射できません」

「ミサイルは装填されていないのか?」

サクラが聞いた。


「はい。装置が詰まっています」

「これは、もしかすると……」

別の隊員の声が入った。


「詳細を報告せよ」

サクラが報告を促した。


「トラクター・ビームの発射装置かもしれません」

隊員が言った。


「………なるほど………」

サクラの納得したような声が聞こえた。


「ブリッジ、クリア。誰もいません」

「CIC、クリア」

隊員の捜索が行き渡り、艦内の様子が分かってきた。


「機関室、クリア。誰もいません」

「艦長室、クリア」

「艦首、ミサイル発射室、クリア」


「警備班長ネルテより、サクラ副長へ」

「警備班長どうぞ」

「艦内ほぼ捜索しましたが、無人のようです」

「了解。ご苦労さまでした」


「副長より「しらかぜ」へ」

「[しらかぜ]艦長だ」

「司令、お聞きの通りです。第1次捜索終了します」

「よろしい。ご苦労だった」

俺は、臨検を終了した。

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