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PS72パルサー星系防衛軍  作者: 星野 光一
62/132

【62】重巡[ながら] 捕獲

宇宙軍太陽系方面軍第355航路調査艦隊、旗艦、重巡洋艦[いしかり]、同[ながら]、同[きたかみ]他、駆逐艦5艦は、ミニ・ワープ航路開拓のため、新しい小規模異次元空間の調査航行をおこなっていた。


第355艦隊は、この頃つとに需要が高まってきた軍事及び民間航路拡大のため、非常に過密なスケジュールでこの任務を遂行していた。


異次元航路調査では、やはり異次元空間ならではの人智の及ばない特殊な環境であるため、艦体はもとより、機関、設備、兵器、通信機器、その他に、想定外の負荷を掛けるものであった。そのため軍は、航路調査艦隊増強計画を立てたが、実現するまでにはいくらかの時間的ブランクが必要だった。


そして、このブランクのために事故が発生し、6977年に異次元空間で行方不明となったのが、重巡[ながら]であった。


「方位167、上下プラス3、距離75,600に、ミドルクラスの重力の歪み地点」

第355航路調査艦隊、旗艦[いしかり]の航海長が報告した。艦長はスラン中佐で、調査航行のベテランだった。


「よし、スタートはそこからで、30光年程度の出口地点を検測せよ」

「出口検測、了解」

艦長と、航海長がやりとりした。


「艦長、ありました。30光年前後ですと、3箇所あります」

「そうか。では、出口3箇所をA、B、Cとし、直近の入口からA、Bと回ってみよう」

「了解しました。プログラムセットし、各艦へ連絡します」

艦長の命令を受け、航海長はワープ航路をセットし、第355艦隊各艦と情報共有した。


「方位172、上下0、距離50,000、イオンエンジン出力80%」

「よろしい」

重巡[いしかり]を先頭に第355艦隊全8艦は、ミドルクラス・ジャンプ・アップ・ポイントに向かった。


「方位000、上下0、距離10,000、速力50,000」

「よし、プラズマEMドライブエンジン始動」

艦長が命令する。


「プラズマドライブ、オン」

「速力変わらず、距離5,000」

目には見えないが、前方5,000に重力の歪みがある。


「距離1,000」

「耐衝撃姿勢をとれ」

「距離200」

「ドライブ切り替え、5、4、3、2、1、

プラズマEMスタート、イオンエンジンオフ」

航海長が報告し、艦長が命じる。


[いしかり]のエンジンノズルから眩い光が発し、

光跡を曳いて[いしかり]は姿を消し、他の巡洋艦、駆逐艦も、それに続いた。


* * *


「サクラ、[ながら]に問い掛けろ」

「こちら銀河帝国宇宙軍、第1遊撃機動艦隊、旗艦[しらかぜ]。

重巡洋艦[ながら]応答せよ」

「…………」

「繰り返す。

こちら[しらかぜ]、重巡[ながら]応答せよ」

「…………」

「司令、応答ありません」

「距離は?」

「800メートルです」

さて、どうするかな。俺は、考えた。


「サクラ、全艦で包囲するよう連絡しろ」

「了解」

サクラが艦隊の他の艦に連絡すると、

[いそかぜ]、[あきかぜ]などが遠巻きに[ながら]へ接近して行くのが見えた。


「戦術長、下手な動きがあったら、ぶっ放せ」

「了解です」

戦術長が、ターゲット・スコープを作動させた。


「[ながら]完全停止しました。距離700」

サクラが報告する。


他の艦が[ながら]を遠巻きに包囲していく。


「サクラ、アンカーの長さは?」

「200メートルです」

「よし、200まで接近せよ」

「アイアイサー」

[しらかぜ]は微速前進で[ながら]との距離を詰めた。


ピカッ

[ながら]の艦内では、まだ誘爆が起きている。


「距離200です」

[ながら]は、目の前だ。


「アンカーを打ち込め」

「アンカー射出、アイ」


バズッーーーン!

バズッーーーン!

[しらかぜ]の艦首から、アンカー、つまり錨が発射され、[ながら]の舷側に突き刺さった。


「サクラ、再度、呼び掛けろ」

「こちら銀河帝国宇宙軍、第1遊撃機動艦隊、旗艦[しらかぜ]。

重巡洋艦[ながら]応答せよ」

「…………」

「応答ありません」


「よし、臨検だ。警備を召集しろ」

俺は、[ながら]の臨時検査をすることにした。


俺らの時代でも、海上保安庁とかが、外国の不審船に対して、密輸品や密航者とかがないか、乗り込んで調べるやつだ。


「各艦から、30名ずつHDを入れてもいいから」

サクラに、各艦に通達するよう命じた。


しかし、静かすぎる。[ながら]は何も反応しない。

各艦からアンカーが打ち込まれ、張り付け状態だ。


「副長の私が行くべきかと」

サクラが臨検に行くことを希望した。


「じゃあ、よく調べてきてくれ」

俺は、サクラとネルテ警備班長に臨検を任せた。


各艦から警備班を乗せた舟艇が出され、[ながら]の舷側に接舷し、武器を構えた警備班が乗り込んで行くのが見える。


「異常はないか、随時報告せよ」

ネルテ警備班長が、全員に命じた。


「[いそかぜ]班、[つきかぜ]班、艦尾右舷から入ります」

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