【58】救難救助活動 一時中止
「どうだ?みんな少しは落ち着いたか?」
隊長機内で、テルネ大佐は、各連隊長に聞いた。
「いや、もう少し時間をおいた方がいいかもしれません。なにぶん、ショックがデカすぎて」
B連隊の隊長が答えた。
「事前調査のヒマが無くてな、隊員たちには申し訳なかった」
テルネ大佐は、とりあえず、連隊長たちに謝罪した。
「司令の責任じゃありませんよ」
「しかし、何故、あんな状態に?」
連隊長たちには、民間船が遭難したというだけで、それ以上の詳細は知らされていなかった。
「スペース・ギャラクシー・エアラインズのビッグ・ベア、知ってるだろ?
乗員、乗客合わせて10,000人乗りの旅客船だ」
大佐が言うと、
「あ、ウチの親、それでスバル観光に行きましたよ」
H連隊長が言った。
「そうか。今回のは、カシオペア座のシェダルだ。
あそこも人気の観光地らしい。
で、その[SGA773便]がまだワープ航行に入る前の通常航行中に、ここで、ワープ空間から出てきた直後の船と衝突したらしい。一方は時速50,000キロ、方やワープ直後、当然、粉々だろう」
「…………」
「…………」
大佐が説明しても、連隊長たちは何も言わなかった。
「しかし、悲劇はそれで終わらなかった。
衝突した2隻は文字通り粉々だったのか、レーダーに船として認識されなかった。ガスかチリの雲のように写ったらしい。
[773便]は臨時便で、その3時間後に本便の[303便]がシェダルを出発していた。
そして、2隻の残骸でいっぱいの雲を障害物と認識できなかった[303便]が、ここに突っ込んだ」
「…………」
「…………」
「最初にぶつかった[773便]の相手は?」
R連隊長が尋ねた。
「レーダーでは、種別表示されなかった。
なので、相手が何だったのか、現時点では不明だ。
いずれ回収調査部隊が来れば分かるだろう。だから、
不明船1隻と、ビッグ・ベア2隻が、ここにある」
大佐は答えた。
「では、少なくとも20,000人以上………」
K連隊長が途中まで言って絶句した。
「そういう計算になる」
大佐は苦しそうに言った。
「で、現状を見てしまった我々は、この現場をどう処理すべきか、諸君の意見を聞きたい」
* * *
「[はまかぜ]より[しらかぜ]へ」
「こちら[しらかぜ]、[はまかぜ]どうぞ」
俺は、アツシの呼び掛けに答えた。
「今晩は、ご馳走さまです」
アツシが笑いながら言った。
「ナジラ戦術長のおかげで、本艦は無傷だ」
俺は、言ってやった。
「ほぉーー。アンテナ1本でも折れていませんか?」
うるせー奴だ。
「こうやって喋ってるんだから、大丈夫だろ!」
アツシ、メシは諦めろ。
「そうですか、残念。
戦術長に、お見事とお伝えください。以上」
アツシは通信を切った。
「戦術長、[はまかぜ]から祝電だ」
俺は、ナジラ曹長に言った。
「航海長、取り舵0.4度、ダウントリム0.7度」
サクラがコールする。
「あ、左0.4、ダウン0.7、アイ」
パスッ
パシュッ
艦は進行方向を微調整した。
ビカッ!
右舷で破壊光が一閃した。
みんな、良い訓練となっているようだ。
* * *
戦艦[カリフォルニア]の艦長室で、艦長のカジン少将と回収調査官のタトル大尉が話し合っていた。
「大尉、えらい事になったぞ」
少将が制帽を脱いで、ソファーに座って言った。
「今回の調査は、だいぶ………」
大尉が話し始めるのを、少将は手で遮った。
「今回の事ではない」
「はい?」
大尉には、少将の意図が分からなかった。
「ここは、君の部下に任せて、別件に当たってもらいたい」
「別件?」
大尉は聞いた。
「前代未聞の、不可思議かつ最大の事故だ」
少将は、苦悶の表情になった。
「カシオペアの方で、
不明船1隻と民間船2隻の衝突事故が起きた」
「えぇっ?!」
民間船2隻がランデブー航行している所へ、不明船が悪さをしたのか?
「えー、今回事案はカシオペア座、シェダル星系、惑星シェダル・アルファ付近。
えー、ここから220光年弱ほどだろうか」
少将が分かっている範囲の詳細を語り始めた。
「えー、当事船は、種別不明船が1隻、スーパー・ギャラクシー・エアラインズの旅客船が2隻」
大尉は黙って記憶した。
「まず、[SGA773便]と不明船が衝突。その後、その現場で[SGA303便]が衝突。
衝突速度は、不明船がワープ空間から通常宇宙への移行直後、[SGA773便]が50,000、その後の[SGA303便]も50,000。
人的被害は、不明船が不明、[SGA]の2便とも、それぞれ10,000人。
まー、合わせて20,000人以上ということだ。
それから、と、火星の第1救難救助隊1個大隊が出動したが、手が付けられず、現在待機中。
で、事故の生存者は無いもよう。と。
あ、それと、救助隊員、174名死亡。と。
こんなところかな」
少将は、説明を締めた。




