【57】第1救難救助隊 現着
戦艦[カリフォルニア]の艦底にある発着口の中へ舟艇は帰還した。
シューーゥゥン
舟艇のエンジンが止まり、5人の人間が降りてきた。
回収調査官と回収作業員の2人で通信士官のモラロ大尉の体を支え、スラト艦長はストレッチャーに乗せられ降り、[カリフォルニア]の艦長、カジン少将が2人を出迎えた。
「ご苦労さまでした」
カジン少将は2人に声を掛け、挙手敬礼で敬意を表した。
モラロ大尉は軽くお辞儀をする程度しかできなく、スラト艦長はうなずいたように見えただけだった。
ちなみに、スラト艦長は、カジン艦長より上の、中将である。
「さて大尉、これからが大変だな」
カジン艦長が声を掛けたのが、回収調査官のタトル大尉である。彼は、膨大な回収された残骸や破片から、今回の出来事についての答えを導き出さなければならない。
「概ねは分かりましたよ」
「ほう、さすが専門家だな」
「すべて直角上方向からのレーザー攻撃のみです」
タトル大尉は答えた。
* * *
シュバッ!
シュバッ!
シュバッ!シュバッ!
シュー、シュバッ!
黄色い機体の救助艇が、トンネルから出た直後に急ブレーキで止まるクルマのように、真っ暗な宇宙空間に、次から次へと現れた。
「イーーーーヤッホー!」
「なんだ?もう着いたのか?」
「228光年なんて、チョロいな」
救助隊員たちは、久々の任務で、はしゃいでいた。
「てめーら、外は空気が無いんだぞ!
しっかり装備を着けろ!」
小隊長がカツを入れる。
「りょうかーい、軍曹どのー」
「せんせーい、オシッコ行っていいですかー?」
「あははははは!」
「てめーら、海兵隊へ行けよ!」
艇内は爆笑に包まれている。
「さーて、1人でも多く救助するんだぞ!」
「アイアイサー!」
「ドアを開けるぞ!」
「アイアイサー!」
救助艇のドアが開き、隊員たちが外へ飛び出した。
宇宙空間は薄い霧に包まれた、ゴミだらけの森のようだった。
「どうなってんだ?」
「全然、見えねーぞ」
隊員たちの回りに霧がまとわりつき、何かがバサバサとぶつかってくる。
パッ
パパッ
パッ、パパッ
救助艇が探照灯を全点灯させた。
50隻の救助艇の前後左右が昼のように明るくなった。
しかし、その色は、朝焼けか夕焼けのようだった。
漂う霧は赤く、
そこらじゅうにあるのはゴミではなかった。
「ウワァーー!!」
「オェーー」
「ギャーーーーッ」
「ウグッッッ」
「吐くなー!!!」
「ヘルメットの中で吐くなー!」
隊員たちにまとわりつくのは、人間の体の一部だった。
「ウッ……」
「オェッ……」
「全員!船に戻れ!!」
「全員、退避!!」
ヘルメットの中で嘔吐し、窒息した隊員たちが宇宙空間に浮遊し始めた。
「浮いてる奴を回収して、船で蘇生させろ!」
小隊長や大隊長が、叫びながら隊員たちを引っ張って
救助艇に押し込んでいる。
赤い霧は、小さな玉となった人間の血だった。
しかし、隊員や救助艇が真っ赤に染まるわけではない。
小さな赤い玉は付着せず、形を変えながら無重力空間を飛んで跳ねまわるだけだった。
「何もかもがメチャクチャだ!」
「オェーー」
「全滅だ!跡形もねぇー」
「こんなの、やってらんねーぞ!」
救助艇の減圧・酸素調整室まで吐くのを我慢して、空気が満たされた部屋でやっとヘルメットを外せた隊員たちは、ここでようやく救助隊員になったことを後悔した。
窓の外に見えるのは、人間の体の一部ばかりだった。
全てが一部で、人間の形をして浮いてくるのは、窒息死した救助隊員だけだった。
* * *
「現在、速力80,000」
ハロヤ航海長がコールする。
「戦術長~」
ハロヤ航海長が、ナジラ戦術長に促す。
「戦術長~」
俺も、促した。
「目標、距離12,000、さらに接近」
サクラが、コールする。
「1番砲搭、しゅ、しゅ、手動射撃!」
ナジラ戦術長が、言った。
「え?」
「あー?!」
「なに?」
俺をはじめ、みんな驚いた。
「現在、速力90,000!」
航海長が言った。
「距離、10,000」
サクラが言う。
「ターゲット・スコープ、オープン!」
兵装コンソールの照準器が作動した。
「曹長、射程内ですよ?」
サクラが促した。
「1番、てーっ!」
ナジラ戦術長はコールして、射撃ボタンを押した。
シュイーーーーーン!
艦首1番砲搭の右の1番砲身からレーザー砲が発射された。
「2番、てーっ!」
シュィーーーーーン!
真ん中の2番砲身から発射。
「3番、てーっ!」
シュィーーーーーン!
一番左の3番砲身からも。
レーザー砲は、
1発目は小惑星の右端に命中し、一部が吹き飛んだ。
2発目ははずし、
3発目がど真ん中に命中し、
小惑星は、粉々になった。
[しらかぜ]は、大量の砂つぶの中を速力100,000で突切った。
「どこも壊れてなきゃいいけど」
俺は、ぼやいた。




