【56】ちょうどいい所に、小惑星帯
「第38連合艦隊、旗艦[ジョージア]より司令部へ」
「こちら司令部、[ジョージア]どうぞ」
「本艦隊は現在、くじら座ミラ星系惑星ミラ・アルファ星圏にて、第5防衛隊を捜索中。しかしながら、残骸及び破片は浮遊しているものの、艦隊としての形態は認められず。また、痕跡として大量の電磁波の残留及び軌跡を検知。この結果から、艦隊は電磁波による牽引拉致事案と推測される。よって、本艦[ジョージア]のみ追跡行動を開始し、残存艦艇により現宙域の救助及び回収作業に当たることについて、許可願いたい。以上」
「司令部より[ジョージア]へ。申請について検討するので、しばし待たれよ」
[ジョージア]のケサン艦長は、通信を切った。
しかし、切ると同時に
「[ジョージア]艦長、ケサンより全艦に達する。
本艦はこれより残留電磁波の痕跡について、第5防衛隊の手掛かりと判断し、これを追跡し当該艦隊発見をなすこととする。ついては、本艦以外の[ワシントン][オクラホマ][アーカンソー]は現宙域に滞留し、救助及び残骸破片回収に尽力されたい。以上」
ケサン艦長は、司令部の許可を待たずに、戦艦[ルイテン]を旗艦とする、くじら座方面軍第5防衛隊5艦の捜索を[ジョージア]単艦で実施することを決定した。
「ブリッジより機関へ。エンジン始動、微速後進」
「エンジン始動、微速後進、アイアイサー」
[ジョージア]はエンジンをかけ、ゆっくり後退してその場を離れた。
* * *
「[しらかぜ]より全艦へ。異常はないか?」
「[はまかぜ]異状なし」
「[いそかぜ]大丈夫です」
「[さわかぜ]異状なし」
「[きぬかぜ]順調です」
「[あきかぜ]異状なし」
「[つきかぜ]オッケーです」
「ったく、カズは……」
新米艦長に示しがつかない。と、俺は思った。
「各艦、異常を認知したら速やかに報告するように」
はぁーーー
俺は、ため息をついた。
「現在、方位000、速力42,000、編隊間隔200,000」
「よろしい。50,000まで増速」
「こちら[きぬかぜ]、[しらかぜ]どうぞ」
ん?どうした?
「[きぬかぜ]どうぞ」
「申し訳ありません、右舷に小物体が接触しました」
[きぬかぜ]のシモダ艦長から連絡が入った。
「人的被害は無いか?」
「人的被害及び航行への影響は無いと思われます」
シモダ艦長は、報告した。
「艦体はどうだ?」
「気密に影響しない傷と、塗装はがれです」
まあ、いいか。
「じゃ、ウチ帰ったら、ペンキ塗りしてくだい」
「了解です。申し訳ありません」
俺は、通信を切った。
「司令、要注意です」
サクラが言った。
「[きぬかぜ]も無理ありません。浮遊物が増えそうです」
「ほんとに?」
「小規模な小惑星帯です」
「減速か?迂回か?」
サクラに聞いた。
「個別に避けられなくもないでしょう」
「速力50,000で?」
俺は、不安になって言った。
「いい訓練になると思いますがねー」
サクラ、いい度胸してんじゃん。
「速力50,000でいいか?って聞いてんだよ」
サクラは、こっちを見て言った。
「私なら、100,000で避けられます」
「あはははは」
俺は、思わず笑ってしまった。
「サクラ、号笛を」
ピィー!フィー!
サクラが全艦へ、号笛を鳴らした。
「[しらかぜ]より、全艦へ達する。
本艦隊は、これより小惑星帯に突入する可能性がある。これについて、以下の通り命令する。
航路前方に注意し、小惑星の回避及び破壊によって、
艦体を守ること。
また、これをよい機会とするため、
速力を100,000とし、艦を傷付けた艦長は、
自艦以外の全員に夕食を1回奢ること。以上」
俺は、返答を待たずに通信を切った。
「航海長、速力100,000。副長、測距長席へ」
俺は、指示した。
「そ、速力100,000、アイ」
ハロヤ航海長が復唱した。
「サクラ、測距担当します」
サクラが、レーダー席に着いた。
「ベリーウェル」
グォーーーグゥィーーーン!
ドォーーーーーーーーーン!
エンジンの音と振動が大きくなった。
「現在、速力60,000」
航海長が報告。
「航海長、おも舵2度、アップトリム0.3度」
サクラが航海長に指示した。
「右2.0、上0.3、アイ」
グィーーーーーーーーーン!
エンジンの高まりが続く。
パシュッ
パスッ
スラスターが噴射され、艦の進行方向が微調整される。
「現在速力70,000」
ピカッ
左舷で破壊光が光った。
「撃ったら減点の方がよかったかな?」
俺は、サクラに言った。
「どうですかね?ナジラ戦術長」
「え?」
戦術長のナジラ曹長は、突然振られてビビった。
「前に少し大きな小惑星が」
サクラが言った。
「あははは、戦術長、他人事かい?」
俺は、ナジラ戦術長をからかった。
戦術長は、必死で画面を見て何か操作している。
「う、撃っていいですか?」
「ははは、任せるよ」
俺は、答えた。




