【54】第17連合艦隊の生存者、確認
「全艦、出力80%」
第1遊撃機動艦隊7艦は、出力を上げ続けた。
「艦長」
サクラが呼んだ。
「なんだい?」
「司令、とお呼びした方がよろしいでしょうか?」
「どうなんだろね?」
「お立場は司令官ですので、やはり司令でしょうね?」
「サクラの呼びやすい方でいいよ」
「分かりました。司令」
ゴーーーーーー
わずかな音と、微かな振動が、ブリッジに伝わる。
「司令、ここのところ、各地で色々な事が起きているようです」
「そうなの?」
「しかも、また民間旅客宇宙船が巻き込まれているようです」
「そうか。だが、まずは[SRL5150便]をなんとかしなきゃ」
「そうですね」
「頼むよ、サクラ」
「かしこまりました。司令」
* * *
「注目!」
火星基地の一角にある宇宙救難隊のハンガーに1,000名の隊員が整列し、その前にテルネ大佐が立っていた。
「久しぶりに、我々の出番がやってきた。
今回は228光年先のカシオペア座である。
そこで、民間船が遭難したため、我々が救助に向かう。
我々にできない救助作業は無い!
1人でも多く助けてこい!」
大佐の訓示が終わると、
「ゴー!レスキュー!」
隊員全員が声を合わせた。
ギューーン
ドァーーーン
ドーーッ
隣のハンガーで、救助艇50隻がエンジンを始動させはじめた。
「ゴー!レスキュー!」
隊員たちは、大声で言い合い、
肩を叩き合い、胸を叩き合い、
腕を組み合い、お互いに気合いを入れている。
「ゴー!レスキュー!」
隊員たちは、駐機ハンガーへなだれ込んだ。
「乗ったら!閉めて!座れ!」
キィーーーーーーン!
キュィーーーーーン!
ドァーーーーーーー!
エンジンの出力が上がる。
「乗ったら!閉めて!座れ!」
バン!ガシャッ!
バン!バン!ガシャッ!
救助艇のドアが閉まり始める。
ギィィィーーーーーーーーーン!
キュィィィーーーーーーーーン!
エンジン音以外は何も聞こえない。
全ての救助艇のドアが閉まった。
パイロットが指で合図する。
ハンガー内の空気が排出され減圧した。
激しい振動だけで、音は何もしなくなった。
半球状のハンガーの天井が割れ、満天の星空が見えた。
ドームが半分くらい開くと、
側面に[GR-01-001]と書かれた黄色い機体の救助艇が上昇し、それに続いて番号順にドームの上空へ飛び去った。
* * *
こいぬ座プロキオン星系での第17連合艦隊の捜索はまだ続いていたが、戦艦[カリフォルニア]を旗艦とする第15連合艦隊は、未だ生存者を発見できずにいた。
「あれは、[ニュージャージー]だな」
[カリフォルニア]の舟艇のパイロットが艦名を確認した。
「ナンバー17は、全滅か」
回収作業員が言った。
「おい、そんなふうに言うな」
「…………」
いくら生存者を探しても、遺体やHDばかりでは、
そんな言葉も吐きたくなる。
「右舷に回ってブリッジに着けてくれ」
調査官は指示した。
プシュ
プシュー
スラスターで微調整しながら、舟艇は[ニュージャージー]のブリッジに接近した。
「あの上の穴から入ろう」
調査官以下3名の作業員が舟艇から[ニュージャージー]に乗り移った。
「服を引っ掛けて破くなよ」
ヘルメットのライトで照らしながら、真っ暗な通路を進むと、隔壁ドアのところでHDが5、6体ウロウロしている。作業員がHDの1体からデータを吸い出し、もう一人の作業員がリモコンで他のHDの動きを止めてやった。
「HDのデータでは、ブリッジの気密は保たれているかもしれません」
「そうか。手動ハンドルはどこだ?」
調査官は手動で回すハンドルを探した。
「あ、いきなり開けない方がいいんじゃないですか?」
作業員の一人が言った。
「もし、生存者がいたら、一瞬で死にますよ?」
「そうだな、俺としたことが、申し訳ない」
調査官は謝って、ブリッジの窓の外から中を確認することにした。
「HDのデータによると、艦長、副長、航海長、他数名の人間が中にいることになっています」
作業員が言った。
「よし、外へ回って見てみよう」
3人は入った破損箇所からまた外に出て、ブリッジの正面に回った。
「中を照らしてくれ」
ヘルメットのライトだけでは照度が足りないので、強力なライトで中を照らさせた。
艦をコントロールするコンソールの間の床に人間の足が見える。グラビティ・コントロール・シューズのおかげで、浮遊している人間は無い。
「あ!」
作業員が声をあげた。
「どうした」
調査官が寄ってきた。
「いや、何か動いたようで」
「あの動き回ってるHDを止めろ」
調査官に指示されて、作業員はリモコンでHDを止めた。
「あ、やっぱり、あそこに腕が」
「通信繋げられるか?」
調査官は言った。
「救助隊だ。聞こえるか?」
「はい、通信担当のモラロ大尉です。スラト艦長も生きてます」
「生存者がいて、よかった」




